●世界を創った男チンギス・ハン (上・中・下) @堺屋太一 | ★50歳からの勉強道~読書録★

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本は友達。一冊一冊を大切に記憶に留めておきたい。

モンゴル帝国の初代皇帝チンギス・ハン。


凶悪で残虐で、極悪非道な侵略者・・と
思っていたけど、そうでもないらしい。


彼が目指したのは
「人間(じんかん)に差別なし・地上に境界なし」


天尽き地果てるまで、グローバルな社会を
実現しようという、確固たる理念があったんだ! なんだかとっても素敵じゃないの。







幼名テムジン。生まれたのは1162年だから
源頼朝と同じ時期。義経の3才下になる。


当時は世界的に、高貴な人が信仰と耽美に
生きた社会。日本も平安時代だった。


遊牧民の一氏族長の家庭に生まれたテムジンは、少年時代、政敵に父を殺され、
一家路頭に迷う。しかし時間をかけて有能な
仲間を集め、モンゴルに初の武力政権を
樹立する、、アレ、頼朝と一緒じゃん。

目上の族長に信義篤いテムジン(中央右)





と、思ったら、そのまま信長、秀吉、家康を
一人でやって、他国の異文化を吸収して
近代化した維新政府まで創っちゃった!


堺屋さんは、各氏族から集まってきた
テムジンの賢臣たちを、スポダイは山県有朋
シギ・クトクは伊藤博文、ヤラワチは
大久保利通と渋沢栄一を兼ねた感じ、
チンカイは前島密だろう、と評している。


1206年、初代皇帝に就任。
ハーン(カン)は君主。




ところがまだまだ、近代化は止まらない。


「人類史上初の不換紙幣を基準通貨として
採用した金融先行国」

「思想と信仰の自由を全面的に認めた
史上初の絶対王政独裁者」

「人種の平等と、広範な自治、世襲でなく
選挙で首長を選任する民主的国家」


13世紀の大モンゴル帝国は、20世紀の
アメリカと、とてもよく似てるんだって。


ユーラシアの八割を支配。




極めつけは「安価で確実な軍事政策」


征服した諸国に軍隊を置かない代わりに、
謀叛を起こすと、徹底的大量報復政策を
とった。善悪関係なし、女子供犬猫まで殺!


「叛乱を起こした都市は皆殺し」
残虐だけど、これがユーラシアに長く平和を
もたらした・・・これって、現代の核抑止力と
全く同じだよね。。。


モンゴルのオルドの移動





チンギス以前の遊牧民モンゴルには、
農耕はもちろん、文字も通貨も暦もない。


高度な中国文明に接しながら、
何も吸収しなかったのは、農耕を
「手と膝で地表を傷つける卑しい所業」と
軽蔑していたから。


狩猟遊牧民は未発達なのではなく、
農耕を知っていながら拒否し、
文字も通貨も社会のシステムも、高度な
情報収集力で、独創。新しく創り上げたのだ。



高麗から紙と印璽を学び、モンゴルは
ハンコ社会となった。





版図の大半は、70年間社会主義政権に支配
されたせいで、論理に合わないチンギスの
歴史的価値は矮小化された。1990年代に
ようやく正しい研究が始まったばかりだ。


堺屋さんは高校生の時からチンギス・ハンの
大ファンで、経済企画庁長官を退官した
65才、いよいよチンギス・ハンを書こう!
と始動。現地モンゴルに通う。


2006年のハン就位800周年に向け、
モンゴル陸軍の協力で、当時の騎馬軍団を
再現するイベントを百回も行ったそうだ。

モンゴル独特の掛声「フレー」は世界語に。





文中には  “そもそも遊牧民とは”  の解説が
盛り沢山で、愛情たっぷり、懇切丁寧な
「そうだったのか、チンギス・ハン」


他国を征服しようとする動機が、
土地でも宗教でも、経済活動でもなかった
なんて独裁者、他にはいない。


ただひたすら理念あるのみ。
人間に差別なし。。すごいなチンギス。


でも孫のフビライが日本だけ失敗してくれて、、やっぱり・・あ~ヨカッタ。 ε=( ̄。 ̄  )


チンギス・ハン
モンゴル人離れした思考回路は、義経説も
頷けるほど。てゆうか、とても信長チック