[yume]ページ2
舞台とターミナルの中間にある廊下を進むことにした。
ここはいかにも学校の廊下っぽい。サラリーマン風の男性が通りすがりのドアから出てきた。
そいつを無視して追い越すとあることが思い浮かんだ。
そうだ、壁抜けをやろう!
思い立ったらすぐ行動。私は近くの壁を探した。なぜなら歩いているうちに壁がなくなってしまったから。
そこにあるのはベンチや自販機が設置された簡易休憩所。
とにかく壁抜けには壁が必要。
キョロキョロして探していると壁沿いのドアが目に入った。
おっしゃあ!と喜んでドアに手を突こうとすると、
「あ、そこどいて。」
とさっきのサラリーマンに軽く追い払われた。
ちぇっ…と目をそらすと、となりに幾つものロッカーが並んでいるのに気が付いた。
高さは私の身長くらい。色はベージュ。手を突くとロッカー特有のカンッという音がした。
これは無理かも、と思ったけど…まあ挑戦挑戦。
頭ん中で通り抜け通り抜けとつぶやきながら、そのまま手を押し込んだ。手首まで通り抜けた。
「痛ったあ!!」
私はすぐに手を引き抜いた。左手がズキズキする。ひどくすりむいたみたいだ。
私は左手をさすりながら「大丈夫かなあ」とつぶやいた。
これ(壁抜け)やっぱダメかも…と思いながら離れていく。
(練習すればすんなり通り抜けられます)
目の前に4、5段の短い階段があった。その先にはベージュ色の両扉がある。
その階段をのぼると作業着の女性がモップをかけていた。顔は見てないし、うつむいているので見えない。たぶん清掃員。
その人を通り過ぎて大きな両扉を開いた。
まるで体育館の扉みたいだと考えているとそこは紛れもなく体育館だった。
広い館内を横断する白いネット。白い体操着の小学生たちがバレーをしていた。
あははっと笑いたくなった。私はすぐに扉を閉め、引き返すことにした。
先程の女性がまだ廊下にモップを掛けている。ふと左手を見ると別の階段があった。今度は長い階段。弧を描いて上の階に続いているらしい。
私はそちらに歩き出した。
すると、両扉を開けて中から体操着の男の子が飛び出してくる。私は気にせず、階段を何段か上ったが、
あれ、そうだ喋りかけられるんだ!
ただちに階段の手すりに身を乗り出して言った。
「どうしたの?」
男の子が短い階段を下りたところで足を止め、私のいる階段を見上げる。
「いじめられるんだ。」
つぶやいて先の廊下を走っていった。
すごい!感動!!初めて夢の住人と喋った。しかも自分から声を掛けたぞバンザーイ!!
と口に出さずに私は喜びに浸った。
(脇役の夢人にもドラマが与えられています。これはRPGゲームでいうところのサブイベントみたいなものです。多分、追いかければ少年の世知辛いドラマが見られる)
「あ、そうだ」
私はさっきから手を止めずにモップを掛けている清掃員にも声をかけた。
「こんにちは!」
聞こえる程度に叫んだつもりが、出た声は思ったよりデカかった。
現実の自分の口が動いたんじゃないかと思ったくらいだ。あせる私。
彼女をみると、手を止めてモップを握ったまま私を見上げていた。
「入口と出口がわからないの?」
…は?
答えてくれた清掃員には悪いけど意味がわからなかった。
私は返事をせず、女性の言葉に疑問を抱きながらまた階段を上りはじめた。
(夢の中では柔軟に頭が働きません。私は起きてから考えることにして記憶にとどめています。
ちなみにこの清掃員はもしかしたら私が体育館から引き返してきた姿を見て、あれ迷ってる? と疑ったのかもね。普段からよく道を尋ねられるんだろう。親切な人だ。
たかが夢人だし、とみくびらずに相手の気持ちを思いやる癖をつけていこう)
ページ3へ続く。