阿闍梨【談笑】

❖酒井雄哉阿闍梨VS池上彰対談 3

◆宗教は同じ根なのに、分かれて争うように 



◇宗教は同じ根なのに、分かれて争うように


酒井 池上さんは、お忙しいのによく中東など海外取材であちこち行かれるそうですね。海の向こうの政情はずいぶんと混乱しているとか。


池上 二〇一一年一月、北アフリカのチュニジアで発生した政変が、瞬く間に中東諸国に波及し、ドミノ倒しのようかな「民主化運動」の火が燃え盛るようになりました。チュニジアが、まさしくかって社会主義消滅のきっかけになった「ベルリンの壁崩壊」のようになって民主化の波は、エジプト、そしてリビアにも及んでます。リビアは政府軍と反政府勢力との間で、激しい内戦状態になっています。バーレーンにも動きがありますし、サウジアラビアでもシーア派の行動が目立ってますね。


酒井 ニュース報道で、以前行ったエジプトの広場で大騒ぎしていた光景を見ましてびっくりしましたね。同じイスラム教徒ということで一つにまとまることはできないのですかね。


池上 イスラム教のどこの勢力でまとまるかが難しいんです。大きくはスンニ派とシーア派に分かれています。両者はもともと一つだったのですが、イスラム教の預言者ムハンマドが亡くなった時に、だれを後継者にするかでもめてしまった。ムハンマドの血筋を引いている人がやるべきだという人と、いや実力と人望のある人がやればいいという派に分かれた。それがシーア派とスンニ派です。ムハンマドと血のつながる従兄弟のアリーを後継者に立て、以降アリーの息子たちに引き継がれるべきだと考えた一派が「アリーの党派」「アリーの仲間」といわれた。「党派」がアラビア語で「シーア」なんです。だからシーア派は日本語に訳すと「党派・派」なんです。一方、だれであろうと実力があり人望がある人が後継者になればいいという一派は、それをよりどころとして、生前のムハンマドの言葉や彼のしていた行動などを大事にしようと、ムハンマドの言行や慣習、そういうものを集めて受け継いでいこうと考えました。アラビア語で「慣習」(スンナ)の形容詞がスンニであり、スンニ派と呼ばれるようになった。日本でもイスラム教の専門家は「スンナ」といいますが。


酒井 ムハンマドを神様として拝んでいるのではない。


池上 ムハンマドは人間の預言者であって、神じゃないんです。神の言葉を預かる人、ということですから、ムハンマドそのものは拝まないけれど、神がムハンマドを選んで言葉を渡したということは、人間の中で素晴らしい人ということです。われわれ人間はムハンマドのように生きていきたいと、人間の生き方の理想像としてあがめているんです。中東諸国でしばしば男性がひげを生やしているのもムハンマドがそうしていたと伝えられるからだし、女性が黒い布で体を隠すのも、ムハンマドの妻たちにそうさせていたことからなんですね。


酒井 イスラムのいろいろな考え方の違いはわからないものですね。


池上 われわれのようなイスラム教徒以外の人間には、なかなかそれぞれの違いはわからないですよ。実際、お祈りのやり方が若干違ったり、年間の宗教儀式が違うくらいなんですよ。同じコーランを唱えますし、一日五回のお祈りは同じです。お寺や神社と同じように、彼らもお祈りのときに必ず身を清めて手を洗うんです。その洗い方が、上から洗うか下から洗うかの儀式作法が異なっていたり、お祈りするときに額を地面につけるのですが、敷物に直接額をつけるのがスンニ派で、素焼きの石を置くのがシーア派、くらいの違いなんですね。


酒井 イスラム教では戒律を非常に重んじると聞いたことがあります。同じ神様を崇拝しているにもかかわらず、対立することは悲しいですね。


池上 不思議なことに、宗教ってみんな途中で分裂してしまいますね。キリスト教も、東方正教会とカトリック、さらにはプロテスタントなどと分かれるでしょう。仏教も、大乗仏教と、上座部仏教に分かれましたよね。お釈迦様の教えをどう解釈するか、人をどう救うかということで姿勢が分かれていきました。日本の仏教に慣れていると、タイやラオスにいくと、仏教や仏教建築などすべてキンキラキンで圧倒されちゃう。これが同じ仏教なの、と驚きます。


酒井 お釈迦様が説かれた経典の教えも、考え方やとらえ方によってはさまざまな見方もあるし、日本仏教も時代を乗り越えてくると、いろいろ解釈が異なることもありますね。


たとえば、今ぼくは池上さんを真正面から見てますけど、右側から見た目、違う側面から見た目では、それぞれ違うように見えるでしょう。池上さんご本人には違いはないんですが、それぞれの取り方で違ってくるんですよ。


それと、仏像や建立物も長年の風雨に耐えてきたわけで、当時の色彩は、なかなかわからないかもしれないけれども、実際いろいろなお寺さんに行ってみると素晴らしい色彩でかざられたものはたくさんありますよ。ぼくがお世話になっている比叡山の根本中堂は千二百念仏の不滅の法灯があり、時代を超えて守り継がれた灯が仏様と共にあります。中堂内を見ると大きな柱で支えられて、昔の人の叡智はすごいなと思いますね。


以前、日光山輪王寺の大猷院におじゃまさせていただいたことがあって、その拝殿は金箔が施されていて、狩野探幽の描いた唐獅子があって素晴らしかったね。ああいう実際の本物に触れて鑑賞することもいいですね。本や映像で見ているのとでは全然違うし、歴史を知るうえでの参考になるよね。日本はそういうお寺や文化遺産があるから、あらゆるものを見るといいよね。


この世で大切なものってなんですか 酒井雄哉 池上彰


❖登天天満宮落慶法要

 

東塔境内にある登天天満宮の落慶法要が行われました。

登天天満宮は、北野天満宮の祭神である

菅原道真公をお祀りしています。

比叡山上に天満宮があるのは、

道真公と延暦寺の僧侶との伝説に基づいています。

この度、社を新たに建て直してただき、

北野天満宮様、延暦寺それぞれが落慶法要を奉修しました。


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