阿闍梨【談笑】
❖酒井雄哉阿闍梨VS池上彰対談 4
◆戦争の悲惨さ
◇戦争の悲惨さ
池上 戦争の体験をされると、戦争の悲惨さが身にしみますか。
酒井 ぼくも鹿児島の鹿屋へ予科練としていきましたが、その時も戦争の悲惨さを感じてはいたけど、心からひどいなあって思ったのは、お坊さんぬなってからなんだよ。あれはちょうど、ベトナム戦争のころだったな。知り合いがずいぶん熱心に反戦運動の活動をしててね、ビラを配ったりしていたんだ。当時、ぼくがお世話になっていたお師匠さんの家には双子の子どもがいてね。ぼくがお世話係をしてたんだ。風呂に入れてやったりして、子どもたち、ぼくにすっかりなついていて、ぼくが三年間山にこもって修行をする「三年籠山」の行に入ることになって、「お山にしばらく行くよ」というと、泣いてねえ、行くなってしがみついてきた。あの時はつらかったね。だけどなんとか気持ちを抑えて山に上がって、少したったころかなあ、浄土院伝教大師の御廟の庭掃除をしていた時に、ふと子どもたちのことを思いだしたりしてね。会いに行きたくなってね。
夜中にそっと抜け出して、山の稜線を下って子どもたちのことを覗きに行こうかなんて思ったことがあってさ。その時に、反戦運動をしていた人のことを思い出して。ぼくなんか、自分の子どもでもない、お師匠さんの子どもでもこんなにいとしく思うのに、戦争に巻き込まれて自分の子どもが命を落としたり、子どもに食べるものを与えられなかったりしたら、かの地ではどういうことになっているんだろうと。親にとって子どもを失うくらいつらいことはないだろうと、しみじみ戦争というのはなんて残酷で悲惨なんだろうって、改めて思い知ったね。
池上 戦争の最も悲惨なことは、肉親や大切な人を失ったり、自分の子どもを飢えさせたりすることなのかもしれません。人類は進歩しているんでしょうか?
ぐるぐるまわっているんでしょうか?
酒井 ぼくはね、人類は進歩しているようで、進歩してないんじゃないの?って思うね。争いごとなんか、いっこうに消えて終わっていないし、ますます政治的にも世界が混迷しているし、核を増強する国もあるし、飢餓の問題やは、課題が山積みだよ。人間の私利私欲もほどほどにしてゆかないと、化学兵器を使用したら、しまいには地球がなくなっちゃうっていうの。憂慮すべき問題だよ。よい文明の力を進化させるのはいいけど、悪に走って加担したら、これ、終末だよ。
世界のみんなが、少しでもよい方向になるようにと、知恵を絞って考えを出して、鍛えていかないといけないよね。
この世で大切なものってなんですか 酒井雄哉 池上彰
❖増上寺からガザへ祈りの灯火 今すぐ停戦を
増上寺からガザへ祈りの灯火 今すぐ停戦を
増上寺境内にキャンドルでGAZA。スマホのライトでの生活を余儀なくされているパレスチナへ連帯しスマホを掲げた
パレスチナで人道支援活動をしているNGO団体は5日、東京都港区の浄土宗大本山増上寺で即時停戦を求める集いを開いた。共同声明「停戦を、今すぐに」を発表し、境内に「GAZA」の文字をキャンドルで灯し、犠牲者を追悼した。200人が参加した。
イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘が始まって1年を迎えようとするなか、ガザでの死者は4万1802人、負傷者が9万6844人、国内避難民が190万人にのぼる。現地で活動するNGOは多くの子どもたちが飢餓や精神的な抑うつ状態にあること、過酷な状況でも懸命に生きるパレスチナ人の生の声を届けた。
国連決議や国際司法裁判所の勧告が無視されている状態に、パレスチナ子どものキャンペーンの手島正之氏は「市民が主役と思って行動するしかない」と主張。ヨルダン川西岸地区で活動するパルシックの高橋知里氏は、インターネットで日本での抗議行動などが現地の人にも伝わり力づけられているとし「一人ひとりのできることは小さいが、それが現地に伝わり、世界にも広まっている。それは力強いこと」と連帯の力に希望を見いだした。
集会にはガザの難民キャンプ出身で医師のイゼルディン・アブラエーシュ氏も参加し「行動が必要です。即時停戦をもっと広めて下さい」と訴えた。
実行委員会は「一人の市民として、一刻も早い恒久的な停戦と占領の終結、この理不尽な暴力の終息を強く訴え」る声明を発表。宗教者に求めることは何か、との問いに対し、セーブザチルドレンジャパンの金子由佳氏は「パレスチナ問題は宗教問題ではないが、宗教者の取り組みが重要になる側面がある」とし、「平和を訴えていない宗教はないと理解している。そこを宗教者は声を大にして言ってほしい」と要望した。パレスチナ子どものキャンペーン代表で浄土宗僧侶の大河内秀人氏は「尊厳、自由や人権、平和をテーマに連帯することが信念や信仰の妨げにはならないし、連帯していくことは可能なこと。憎しみや欲や無知が私たちの一番の障害。それを乗り越えるために、信仰の力を活かしたい」と話した。
仏教タイムス 10月10日