みなさんお久しぶりです。
つい先日、大学院最終年の一学期目が終わりました。この半年で学ばせて頂いたことは沢山ありますが、やはり大きなところというのはクリニカルリーズニングやフレームワークに基づいて問診、評価、治療・マネジメントを行なっていく過程が自分の中で整理されたというところだと感じています。
僕が通っているカーティン大学筋骨格系専門修士では、整形外科的なテストを用いた評価方法を教わる事はもちろんですが、一体それらのテストの信憑性はどうなのか、エビデンスではここまでわかっているけど、どこがまだわかっていない部分なのかなど、全ての情報を鵜呑みにする危険性などを学びました。また、バイアスがかかった状態で選択的にそういった情報を選ぶということも避けなければいけないと同時に、それらの限られた情報をどのように解釈して実際に目の前にいる患者さんに応用してくのかというところを実習でも経験させてもらいました。
そういった貴重な経験をこちらの大学院でさせてもらっている時に感じたことなのですが、現在通っているコースにはイギリス、オランダ、ノルウェー、香港、シンガポールなど様々な国からのPTが集まり共に勉強しています。そのPT達との会話の中で非常に重要だなと感じたことは、世界から来ているPT達と‘共通のPT専門用語’をベースとした会話が可能だというところです。これがどういうことかというと、例えば僕がオーストラリアの学士過程で学んだ Passive Physiological Interval Movement Test (PPIVM)/ Motion Palpation Test や、Passive Accessory Interval Movement Test (PAIVM)/ Pain Provocation Testなどといった手技を、オーストラリア以外から来た他の学生はそれぞれ自分の国で学んでいるために、評価項目などに関しても共通の知識として会話が成り立つというところです。
残念ながら、僕が日本の養成校をでた頃にはこういった評価項目は全く知りませんでした。養成校の数が多く、教育水準の一定化が難しい現状の日本で、今後こういった海外でのPT達と対等にディズカッションを行なっていくには、そういった「共通知識の拡大」が日本には必要だと感じています。グローバル化が進む中で、もちろん英語の文献や教科書を読む能力は今後非常に重要な課題ではあると思いますが、それと並行して今できる範囲での知識の共有化をできればと日々感じています。そういった意味で今回、帰国した際にエバーウォークさんにご協力いただいてセミナーを開催させて頂く機会を得ました。
僕は大学院でリサーチをした程度で、何本も論文を書いているわけではありませんし、そういった者がセミナーをするということに疑問を感じる人もいるかもしれません。ただ、オーストラリアの大学で学んだことによって、今まで研究・エビデンスといった遠い存在であった物がより身近に感じるようになりました。また、研究家というよりは臨床家であるからこそそういった知識を日常の患者さんの評価・治療にどのように活かしていけばいいのかということをカーティン大学で学ばせていただいています。
今回のセミナーでは、そういった共通の知識を日本人のセラピストの皆さんにも知って頂きたいといった思いで、腰痛に対するオーストラリアでの評価・治療という題でお話をさせて頂きます。「日本にはダイレクトアクセスシステムがないから自分にはあまり関係ないかな」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、診断名を下す行為を行わないPTを含めたセラピストの中で考えられる問題点として、医師からの診断名を元に治療を行なっていく際の‘落とし穴’が考えられます。
近年の研究でより明らかになって来ていますが、器質的な変化・病変(例えば椎間板の退行性変化やヘルニアなど)は痛みや症状と関連性が低いというエビデンスがより共通の知識として認識され始めています。では一体、全てのそういった病態が本当に全く関係ないのか、どのような時にそれらの器質的な変化が患者らと関係があって、どのようにそれらの評価・治療を行えばいいのか。そういった部分を自分の中でしっかりと判断できるように、今回のセミナーを通じてお伝えできればと思っています。
あまり開催まで日時がありませんが、海外での共通知識などを知りたい方、腰痛に携わることがあるセラピストの方は会場まで足を運んで見て下さい。
当日より多くの人にお会いできるのを楽しみにしています。詳細はこちらよりご確認下さい。
江戸英明