僕はずっと自転車が欲しかった。
クリスマスが近づくと
町中を走るマウンテンバイクを眺めた。
21段ギアとか
28段ギアとか
変速ギア付きの自転車に
猛烈に憧れたものだった。
問題は
僕の枕元に自転車を置けるスペースがなかった事だ。
幼心に
『ここじゃ、ちと狭いんじゃないかい?』
と心配したもんだった。
母親が
『ユーマはもう寝た?』とそっというと
真ん中のお兄ちゃんが
『まだだよ!!静かにして!』と怒鳴っている。
どちらかというと、
お兄ちゃんの声の方が大きい。
きっと
この会話は
僕へのクリスマスプレゼントの用意を
家族全員で、してくれてた証だろうな。
朝起きると
お兄ちゃんが横に寝ていて
枕元には
ラジコンが置かれていたのだった。
不思議と文句を言う気にならなかった。
僕はずっと自転車が欲しかった。
でも手に入らないままなのに
ずっと温かい気持ちなのが
クリスマスマジックなんだろう。