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ゴーリキー・パーク〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)
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Gorki Park
1,230円
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マーティン・クルーズ・スミス(Martin Cruz Smith 1942~)は米国の推理作家。ペンシルヴァニア育ちだが、現在はカリフォルニア、サンラファエル在住。
本作品「ゴーリキーパーク」は1981年発表、ロシア人捜査官アルカージ・レンコを主人公とした推理小説で、ベストセラーとなった。作者はソ連には旅行で一度行っただけで、資料と現地に詳しい人たちへの取材で書いたという。70年代のソ連の社会、空気が見事に描かれている。
Timesから80年代のスリラーと激賞され、CWAよりゴールデンダガー賞を受賞した。70年代から小説を書いてきたが本作品で飛躍、ベストセラー作家の一人となった。
レンコを主人公としたシリーズは、2019年発表の”The Siberian Dilenma”まで9作発表している。38年間に渡り書き続けていることになる。
<作品概要>
モスクワの冬は長く、暗く、すべてを凍りつける。クレムリンとモスクワ大学の間に、モスクワ川に沿って2キロに渡りゴーリキー公園がある。冬にはスケートリンクがいくつか開設され、スケート道路も出来る。
真夜中に公園を巡邏していた民警が小用を催し、通路を外れた。雪に覆われ、凍った3体の死体を見付け通報した。殺人担当捜査官アルカージ・レンコは現場に行った。KGBのプリブルーダ少佐が来て死体を確認した。死体の一つは外国人の青年だった。レンコはKGBの担当だと思ったのだが、プリブルーダは国家保安案件ではなく民警の担当だと言い放った。面倒はレンコに押し付けようとしたのかもしれない。以前、少佐が強制収容所から収容者を連れ出して殺した事件があり、レンコは少佐を告発しようとしたことがあった。KGBは即座にもみ消したが少佐は忘れていないようだった。
KGBが去ったので、レンコたちは現場検証をした。死体は外国人の青年と、若い男女だった。銃で撃たれ、指は潰され、顔も銃弾で正体不明にされていた。身元確認は難しい。モスクワでは酔って殺したり、殺されたりするのであり、外国人が絡まない限り計画的な殺人事件はない。レンコは上司のイアムスコイ検事局長に、すぐにKGB扱いになると報告した。
レンコは将軍の息子だった。父はスターリンの陣営だったので元帥を目前にスターリンの失墜により引退させられた。共産党員だが活動はしていない。妻ゾーヤは教員で党活動に熱心だった。ソ連社会で上昇するには党活動を認められるしかない。夫には批判的で、同僚のシュミットと公然と浮気していた。幼馴染の親友ミーシャは弁護士でレンコの理解者だった。だが、彼の妻ナターシャはゾーヤに同情していた。ソ連では弁護士も公務員だが、裏金が多いのでミーシャ家は豊かだった。
被害者の身元確認は難航し、レンコは全土に照会した。また、女の履いていたスケート靴の持ち主が判明した。モスクワ大学を放校されたイリーナ・アサノバだった。女優志願で撮影所にいた彼女をレンコは訪ねた。服装は派手だったが継ぎがあたり、ブーツは擦れていた。スケート靴は盗まれて、盗難届も出していたと言った。被害者の身元の手がかりがない。レンコはモスクワ大学人類学研究所のアンドレイエフ教授を頼り、女性の頭蓋骨から顔を復元するよう依頼した。
レンコは被害者の一人が外国人なので、KGBにモスクワにいた外国人の資料を要求する事にした。KGBとの悶着を嫌うイアムスコイは了承し、なぜか事件を引き取ると思ったKGBは資料を送ってきた。資料はファイルやテープでレンコは部下のパーシャとフェタと共にウクライナホテルのスイートを確保し、運び込んで調べ始めた。モスクワでは外国人の行動は全て記録され盗聴される。
レンコは現場に行った。現場に怪しい外国人の大男がいた。レンコは追ったが殴り倒され、逃げられた。
検死医のレヴィンが死体から金粉や石膏を検出していた。イコンの修復に関わっている。ソ連ではイコンの取引は禁止されているが海外では高価なため闇取引されていた。レンコは情報屋のゴロドキンがイコンの闇取引に関わっている事を知っており彼を探した。彼は、取引相手らしい米国人ジョン・オズボーンと接触していた事がわかった。
延々と盗聴テープを聞いているとイリーナとオズボーンの電話連絡に行きあたった。二人は関係があった。オズボーンのファイルには、彼は1942年に米国の武器貸与団の顧問としてソ連に滞在、メンデル将軍と共にファシストと戦い大祖国戦争に貢献したとあり、現在は米国の毛皮商人だった。メンデルは後に貿易省の高官になっており、オズボーンの資格を認可していた。彼は頻繁にソ連を訪れていた。
パーシャは、ドイツ人ハンス・フレデリック・ウンマンがゴロドキンと付き合っている記録を見つけ出した。ウンマンはドイツでは犯罪者だがソ連ではドイツ共産党員とされKGBが便利に使っていた。ゴロドキンは彼に女を世話しているようだった。
レンコは逐次イアムスコイに報告していた。所用で官庁ビルに行ったレンコは、居合わせたイアムスコイに幹部用サウナに誘われた。知人で貿易省の幹部をしているメンデル将軍の息子エヴァゲニー・メンデルに会った。彼の知人オズボーンが来た。彼は、民警の捜査官に会ったのは初めてだと言い、レンコの仕事に興味を示した。場違いを感じていたレンコは出て行った。
レンコにシベリア、ウストクート市の民警ヤクーツキー刑事から被害者照会に応える電話があった。住民の19才の娘ダヴィドフと24才のボロディンが行方不明になっており被害者かも知れないという。ダヴィドフは毛皮の選別場で働いていた美人で、ボロディンは山賊コスチアの異名があり、猟師、ブローカー、賞金稼ぎなどをしていた男だという。二人は恋仲だった。ソ連では所在不明となるのは犯罪であり、所在不明者が生活する事は困難だった。シベリアでは誰でもイコンの修復はしているとも言った。
ヤクーツキー刑事から資料が送られてきた。市内の毛皮見本市でのダヴィドフが写っている写真があり、後ろにいるのはボロディンだと説明書きがあった。横にいるのはオズボーンだった。
ようやく、闇市場でゴロドキンを見付け、事務所に連れて来た。知人のウンマンから、イコンの客だとオズボーンを紹介されたという。だが、オズボーンが欲しいのはイコンではなく骨董の長櫃だった。苦労して入手したが、いつまでも連絡がなかったところに、ウンマンとオズボーンを見付けたので尾行した。彼等は田舎者男女2人と会ったので、長櫃の取引を横取りされたと思い男に文句を言ったところナイフで脅されたという。
長櫃はまだ手元にある。オズボーンしか買ってくれる者はいないだろうと思っていたが別のアメリカ人が接近してきたという。名前は言わなかった。
レンコはKGBのプリグルーダ少佐なら知っているだろうと裏から探った。アメリカ人はカーウィルと分かったが、カーウィルは二人いた。若い方はジェームズ・メイヨー・カーウィルでモスクワ大学に留学しておりイリーナとも知り合いだった。もう一人はウィリアム・パトリック・カーウィルでモスクワ旅行中で、メトロホールホテルに滞在していた。ゴロドキンに写真を見せて確認するとウィリアムだった。
レンコはパーシャにゴロドキンを家に送らせ、暫くぶりにアパートに戻った。アパートはもぬけのカラだった。家具備品は全てゾーヤが持ち去っていた。ベッドと寝具だけは残されていた。寝入った所に電話があった。ゴロドキンとパーシャが死んだという。撃ち合って死んだような体裁だったがレンコはありえないと分かっていた。誰かが殺したのだ。KGBのプリグルーダだろう。長櫃はなくなっていた。
レンコはイアムスコイにプリグルーダ捜査を迫った。彼は証拠もなく狂い沙汰だと言い、パーシャ殺人事件の捜査からレンコを外した。
レンコはメトロホールホテルのカーウィルの部屋に侵入した。財布があった。カーウィルが戻ってきた。財布にニューヨーク市警の刑事のバッジが隠されていた。彼は弟ジェームズを探しにモスクワに来ていた。ジェームズは宗教的信念に取りつかれており、教祖として振舞っていたという。彼らの既に亡くなった両親は米国共産党の擁護者で、狂信的な夫婦でもあった。ウィリアムは年の離れた弟は心を通わせてはいなかったが、それでも弟だった。ゴーリキーパークで殺されたのは弟だと。殺人現場で出会い、レンコを殴ったのはカーウィルだった。
シベリアのヤクーツキー刑事からの連絡でイリーナは同じ町の出で、ダヴィドフの親友だと分かった。彼女の夢はシベリアから脱出する事だったと。
冬、モスクワ川に拳銃を投げ捨てても川は凍っているので目立つだけである。レンコは工場から川に排水が流れ込む氷の薄いところをダイバーに探させた。バッグに入った拳銃が見つかった。犯人はバッグのなかから撃っていた。凶悪な相手を突然撃ち殺したのだろう。
ウクライナホテルには盗聴テープが届いていた。イリーナとオズボーンが会う約束をしていた。レンコは落ち合い場所の地下鉄の駅に行った。イリーナが改札に向かっていた。後ろから男が二人尾行している。ホームの先で消えた。イリーナは線路上に落ちていた。レンコは男二人を奇襲し、瀕死のイリーナを救い出した。
レンコは、口の堅いユダヤ人の検死医レヴィンに治療してもらいアパートに連れ帰った。レヴィンは、イリーナは薬を顔に注射され片方の視神経を失っていると言った。相手はKGBしかいない。
レンコは父の邸宅に行った。レンコは不肖の息子である。母を死に追いやった父との確執もあった。滅多に会う事はなかった。老いた父は語ってくれた。メンデル将軍とオズボーンはファシストの反乱を鎮めた英雄とされたが実は捕虜のドイツ士官を森にピクニックに連れ出し、些細な口論の結果殺したのだという。臆病なメンデルは犯罪行為を必死に糊塗しようとして勲章を得たのだと嘲笑した。
メンデルとオズボーンは共犯者であり、腐れ縁だった。
レンコは使っている情報屋のスワンにボロディン達が住んでいた場所を探させていた。ソ連にはホームレスもスワッタ―もいない。人知れず生活できる場は多くはない。見つけたと言って来た。
イアムスコイから呼ばれた。ゾーヤに去られ仕事になっていない。引継ぎ報告を書いて待機しろと命じられた。同僚の捜査官」ニキーチンは熱心に犯人を追う愚を説いてくれた。
問い合わせていた外務省から長櫃がヘルシンキ共産青年同盟美術協議会に送られていると報告が帰ってきた。長櫃は禁輸品なので許可がなければ輸出できない。レンコが調べると美術協議会は存在せず、長櫃の送り人はウンマンだった。
戻るところも着る者もなく、レンコのアパートにいるイリーナにスカーフを買って帰った。今のレンコにはスカーフしか買えない。僅かな蓄えはゾーヤが持ち去っていた。イリーナを抱き朝になった。
親友ミーシャから電話。ゾーヤの離婚代理人をしている弁護士が、レンコと代理人ミーシャは反共産党発言をしていると法廷で発言すると言っているという。法廷が認めれば離婚どころかレンコ、ミーシャの将来はない。相手弁護士を説得するので来てくれという。レンコは一緒だったカーウィルと待ち合わせ場所の元教会に行った。ミーシャは暗い顔をしていた。レンコを騙すことに耐えきれず、「誰かが女の首を持っていくぞ」と叫んだ。
レンコは、すぐにモスクワ大学の人類学研究所に行った。車が出てきて、運転しているのはイリーナを殺そうとした男だった。レンコは車を尾行した。車の行先はイアムスコイの別荘だった。イアムスコイは、男が渡した首を斧で切り刻み小屋に捨てた。小屋にはゴロドキンの長櫃があった。男は帰って行った。事件の裏にいたのはイアムスコイ検事局長だったのだ。昔の書類を調べると、メンデルとオズボーンの叙勲申請をしたのは当時副官だったイアムスコイだと分かった。
戻ってきた男が二人を見付けた。襲ってきた男をカーウィルが殺した。男はKGBだった。KGBを手下に使っているイアムスコイはKGBに間違いなかった。対抗する民警に入り込んでいたのだ。レンコが検事局長を告発するとすれば検事総長に報告するしかない。
レンコは、イリーナをスワンが見つけ出した隠れ家に連れて行った。イリーナは、ダヴィドワとボロディン、米国人ジェームズが住み、櫃を作っていたと知っていた。被害者はこの3人だとも知っていた。だが、信じたくなかったのだ。やっと、シベリアを逃れて、なぜモスクワで死ななけれなならないのか。
裏にはクロテンの飼育小屋があった。ウストリートの飼育場で火事があり最高級のハルグジンクロテンが6匹死んだ事になっていた。死んだ筈のクロテンがここにいたのだ。
ミンクはアメリカ産だが最高級毛皮のハツクジンクロテンはロシア特産である。毛皮は輸出されるが、生体は厳しく禁輸されていた。米国に持ち込んで繁殖させれば暴利を得る事が出来る。オズボーンの狙いだった。
レンコがホテルウクライナに戻ると部屋は荒らされていた。留守番のフェトは、ウンマンが来て荒探ししていったという。フェトは民警だが、プリグルーダと通じていた。レンコは承知して使っていたのだった。
フェトは、レンコは元教会でゾーナの弁護士を殺した容疑で追われていると言った。指紋が残されていたと。
嵌められたと知ったレンコは北の鉱山で働く荒くれ者たちを送る列車に乗った。フィンランドの国境の町に行きフィンランド警備隊の少佐に通関した長櫃の話しを聞いた。彼は覚えていた。長櫃は区分けされ、小動物が入っていたと。その時の名残だとフロアに糞が残っていた。クロテンだった。
レンコは証拠品と共にモスクワに戻った。翌日はメーデーで、その夜はお偉方のレセプションが行われていた。レンコは会場のホテルに行き、証拠品と報告書を検事総長に渡す手配をした。
ホテルの入口前でオズボーンが待っていた。オズボーンはレセプションの後、空港に向かう予定だった。クロテンをアメリカに持ち込んだので、彼はモスクワに戻る事はない。レンコはアメリカには帰れないと告げた。3人を殺した証拠は揃ったと。
彼は取引を申し出た。少しだけ待ってくれればイリーナは死ななくて済むだろうと。嘘ではない証拠にイリーナのスカーフを見せた。イリーナはモスクワ大学のプールで殺されると言う。レンコは、すぐにモスクワ大学に行った。
プールでウンマンがイリーナをプールに浸けていた。レンコは拳銃を突き付け、イリーナを床に上がらせた。後ろから近付いたイアムスコイが「銃を捨てろ」と言った。ウンマンがナイフでレンコを突き刺した。拳銃を拾ったイリーナがイアムスコイを撃った。レンコはナイフを抜いて、プールに落ちながらウンマンを刺した。イレーヌに、二人を殺したのは自分だからKGBに自白しないように言って気を失った。
レンコは重傷だったが病院で回復した。プリブルーダを含め5人のKGBが毎日尋問した。レンコの捜査結果は彼等には不都合だった。彼らの真実を言わないレンコへの尋問は続いた。
夏になり、レンコはKGBの別荘に送られた。尋問は続き、精神医療学者も来た。”真実”を言わない者は薬物治療の対象になる。プリグルーダ少佐は警護役として付き添っていた。彼はレンコを認め始めており、尋問する事はなかった。民警の同僚が来た。妻ゾーヤも送り込まれてきた。彼らもレンコを懐入する事は出来なかった。検事総長は動かなかった。
秋になり、レンコは突然レニングラードに送られた。毛皮会館で役人から「アメリカに行かないか」と持ち掛けられた。彼らはオズボーンがクロテンを持ち出したことを知った。「イリーナもアメリカにいる。クロテン問題を始末するのを手伝って欲しい」と。レンコは了承した。
アメリカ側ではKGBのカウンターパートであるFBIが問題を担当していた。レンコはFBIのウェズリーに付き添われてニューヨークに行き、29丁目のバロセロナホテルに入った。ウェズリーは「亡命したい」などと言い出しても無駄だと告げた。面倒を嫌う官僚主義は米国も同じだった。
ホテルの部屋にはイリーナがいた。「あなたをアメリカに来させたの」と言った。彼女は、買い物好きなセンスのいいニューヨークの女に変貌していた。
ソ連大使館員のニッキ―とルーリックが来た。彼らはKGBで、オズボーンとの連絡役としてイリーナを呼び寄せたのだった。FBIのウェズリー、同僚レイとジョージも部屋に貼り付いていた。地元ニューヨーク市警の連絡担当としてカーウィルが名を連ねていた。彼は部屋に入ろうとしたが、市警には好意的でないFBIが押し出した。イリーナと抱き合えた時は深夜になっていた。
FBIの係員がレンコをオズボーンの豪壮な毛皮商ビルに連れて行った。逮捕される虞のなくなったオズボーンは、ゴーリキー公園で3人を殺す積りはなかったが、狂信的なジェームズが真実を話すと言うので3人とも殺さざるをえなくなったと言った。オズボーンはレンコをディナーに誘い、その後、セントラルパークを見下ろす高級マンションに案内した。「君とイリーナにやる」と。但し、イリーナは共有する事になると。イリーナはオズボーンのものになる条件としてレンコの米国居住を求めたのだった。レンコは拒否した。
ホテルに歩いて帰る途上、リムジンが停車し乗車を誘った。リムジンにはカーウィルと相棒のビリー、ロドニーが乗っていた。カーウィルは情報屋のホームレス、ラッツを留置場から引き出し、居場所のスタテン島に送った。ラッツは不審なクロテンの居場所を知っており案内してくれることになった。FBIやKGBに知られずに。明日部屋を抜け出す段取りをつけた。カーウィルの狙いはオズボーンだが、FBI、KGBはクロテンで、オズボーンを保護しているように見えた。カーウィルは、レンコとイリーナを逃がして、クロテンを渡す取引をFBIとKGBとする計画だった。
部屋に戻ったレンコはイリーナを「体を使って取引する淫売!」と責めた。「オズボーンは、シベリアから、ソ連から抜け出させてくれる。あなたには出来ない」と言った。ウソではない。
部屋には盗聴器があるのでカーウィルの計画をイリーナに話す事は出来ない。
夜明け前にウェズリーが来てレンコとイリーナを連れ出し、スタテン島に向かった。オズボーンと関係しているウェズリーは、人知れず二人を彼に引き渡す積りのようだった。フェリーでKGBらしき者と相談していた。二人をエサにしてオズボーンとクロテンの抹殺を企んでいるのかもしれない。
スタテン島の林に囲まれた広い農場に入った。高い柵には電流が通っている。通路を曲がった所で、木にもたれてカーウィルが立っていた。足元には獰猛な番犬が2匹死んでいた。彼は腹から内臓を出して死んでいた。
ライフルを持ったオズボーンが林から出て来た。ウェズリーは二人を引き渡して帰ろうとした。レンコは「KGBも来ているぞ」と叫んだ。騙されたと知ったオズボーンはウェズリーを撃ち、レイとジョージも狙った。ウェズリーは一撃で倒れ、レイも死んだ。ジョージは林に逃げ込んだ。レンコはレイの拳銃を取り上げ、車の鍵を探してイリーナに渡し、「逃げろ」と指示した。
HGBの二人が来て撃ち合いになった。レンコが林に入るとクロテンの飼育場があった。小屋には80匹以上はいる。拳銃はライフルの威力には敵わない。男達は次々に殺されていった。ゲートでイリーナを見付けたオズボーンはレンコに「出て来なければ、殺す」とイリーナに銃を突きつけた。イリーナはオズボーンを信じていたのだ。
レンコはクロテンの小屋を壊し始めた。慌てて近づいて来たオズボーンにクロテンを投げつけ、拳銃で撃ち殺した。
レンコはイリーナに行けと命じた。FBIは亡命を許さないので市警か別の役所がいいと。イリーナは去って行った。
残ったレンコはクロテンの小屋をライフルで撃ち始めた。クロテンは自由の地を求めて逃げて行った。