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泥棒のB (ハヤカワ・ミステリ文庫)
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スー・グラフトンのアルファベットシリーズ第2作で1985年刊行(日本語訳は1987年)
裕福な未亡人が所在不明となり、捜査の結果、隣家で起きた放火殺人事件の被害者で奥さんとされていた遺体は、実はその未亡人であったというストーリーなので題名は「消えた未亡人の謎」とでもしてくれれば分かりやすいのだが、「泥棒(Burglar)」では連想は効かない。
本作に限らず、アルファベットシリーズ通じて言える事で、読書後にストーリーを書き残して置こうと思い立ったキッカケでもある(再読しようと思って手にするのだが内容が思い出せない)。熱心なファンならずとも作品の刊行順が明白という利点があるので一概に批判するわけにもいかない。タイトルの命名は「作家の勝手でしょ」の問題だとするに異論はない。
グラフトンはシリーズ中盤から多様なチャレンジを試みるが、本作は2作目という事もあり基本に忠実な謎解き推理小説である。第1作はフウダイッツ(犯人は誰だ?)だったが第2作はハウダイッツ(どうやって犯罪を?)であるところに変化を追い求めたグラフトンらしさがあるともいえる。
(ストーリー)
キンジーはサンタテレサのコンドミニマムに住む裕福な未亡人エレイン・ボールトの捜索を妹のビバリー・ダンジンガーから頼まれる。エレインは冬はフロリダのコンドミニマム、春になればサンタテレサに戻る暮らしを続けており、今年も旅立っていたがフロリダにいなかった。キンジーがフロリダに調査に行くと、エレインのコンドミニアムには又貸しだと主張するバット・アッシャー(実はマーティ、エレイン殺害犯)が居座っていた。
キンジーはビバリーに警察に捜索願を出すように進めるが頑なに拒否される。フロリダのエレイン宅の隣人でブリッジ仲間ジュリア・オクスナーはキンジーにエレインの調査を依頼、キンジーはビバリーとの契約を解除されたが、調査を続行する。
エレイン失踪と同時期、コンドミニマムの隣の住宅で放火殺人があり、エレインのブリッジ仲間マーティ・グライスが黒焦げ死体で発見される事件があり、キンジーは関連を疑う。
キンジーはマーティの夫リンゼイの甥で不良のマイクと知り合い、マーティが外出していたリンゼイと話したという9時以前にグライス宅で死体を見たという話を聞く。マーティの検屍を疑ったキンジーは、マーティが歯医者でエレインと彼女のX線写真を入れ替えたのを確認しマーティとされていた死体はエレインであり、犯人はエレインの資産を狙ったマーティだと突き止める。
追い詰められたマーティは、焼け跡に調査に行ったキンジーを殺そうとするがアクションの末、逮捕される。