春といっても山の麓はまだ寒いだろうから

 

あなたもまだ本調子ではないかもしれないから

 

お宿についても温かく過ごせるように

 

母さんはオーバーオールを買いました

 

 

 

獣医さんは言いましたね

 

「桜の花が見られるかどうか」って

 

でも父さんと母さんは願っていました

 

きっとあなたには奇跡が起きて

 

都会よりひと月遅れのピンクの花が

 

溢れるほど咲くのを家族で一緒に見られるって

 

 

 

あの寒い二月

 

試着も兼ねて

 

あなたにこの服を着せてみた

 

いつものようにおとなしく

 

一本ずつ脚を通してから

 

トコトコとゆっくり部屋を動く姿が

 

なんとも可愛かった

 

 

なんとも可愛かった

 

 

とっても可愛かったよ

 

 

 

 

一緒の旅には出られなかったけど

 

あなたの思い出の物をバッグに入れて

 

父さんと母さんで目的の地を旅してきました

 

 

 

桜はとうに終わっていて

 

青い空と草原が続いていて

 

野鳥の声が癒しをくれました

 

 

 

可愛い娘よ

 

この服はどうしても捨てることができません

 

まだまだ持っていてもいいよね

 

まだ時にはしっかりと泣いてもいいよね