悔いないで。笑顔にできればいいじゃん。 | やればなんとかな~る

やればなんとかな~る

口蓋裂という「おみやげ」をもって生まれて早23年。
医学生として勉学に励む傍ら、患者の苦悩を身をもって体験中。
患者としての苦しみ・痛み・辛さは優しいお医者さんになるためのワンステップ。
そう信じて、自分が自分で生まれた意味を日々探究しています。

久々の更新になります。

あるニュース記事を見て、いてもたってもいられなくなって、戻ってきました。

どうやら障害児を産み育てる親御さんを「(産んだことを)一生悔い、反省するべきだ」とか非難する、自称「キチガイ」な医者がいるようで。障害児が産まれるのは生活習慣とか、食生活が原因だから悔い改めろとか。はあ。

残念です。何でそんなこと言うかな。患者さん、親御さん達を傷つける意図があって言ったのだとしても、傷つける意図なく失言したのだとしても、実に残念。

いや、実のところ超腹立たしいんだけど、こういう、医者という立場から変なプロ意識を振りかざす「キチガイ」のために心の平穏が乱されることは更に腹立たしいので、ひとつ冷静に障害児(もう大人なので元障害児?)の立場から「親に悔いてほしいか」についてコメントしたいと思います。

言わずとも明らかだと思うけど、悔いてほしくなんかないです。

病気のことは恨んだ時期もありました。

親を恨んでいた時期も、忘れているだけで、もしかしたらあったのかもしれません。

だけど、29年間障害を抱え、あらゆるハードルを跳び越えながら生きてきた今、「親を恨んでいますか」と問われたら、恨んでいませんというのが私の答えです。

なぜなら、ありきたりだけど、感謝の気持ちの方が何倍も大きいからです。

なにも私はひとりでハードルを跳び越えてきた訳ではありません。幼少期に始まり、大学時代の手術の時まで、親が一緒にそばで走ってくれたという実感があります。

口蓋裂という障害を持って親の元に生まれた私を、見捨てることなく育てて、治療にまでつきあってくれた両親に私は感謝しています。

子供は親を選べないと言うけれど、私はこの親の元に生まれて正解だったと思っています。

そもそも「一生悔やんでほしい」とか、患者本人でも家族でもない「外野」が一方的に意見することではないと思うし、大切にすべきは本人と親の絆だと思う。

子供が「悔いなくていい」って言ってるんだったら、それでいいじゃない。って思うんだけど、ダメですかね。

障害児の立場からは、親に「悔いてる暇があるんだったら、子供を笑顔にしてあげる方に気力と感情を注いであげてください」と言いたいです。

もっとも、障害をもったお子さんを育てるガッツのあるお父さんお母さんなら、今回のような「キチガイ」先生の発言になど心折られないのかもしれませんが、

コンプレックスは人の偏見をきっかけにわっと芽吹くことがあります。現に、不覚にも優も少しソワソワしてしまったし。

いや、本当に、悔いてる暇があったら、お子さんを笑顔にしてあげられる術を考える方に頭まるごと使ってあげてください。

そして、将来お子さんに、悔いてほしくない、と伝えてもらいましょう。それでいいじゃないですか。

障害を持って産まれた子。それぞれ役割を背負って産まれてくるんだと思います。産まれなかった方がいい、なんてこと絶対にない。だから悔いないでください。

ていうか、子供の笑顔を少しでも目にしたら、その子を産んだことを悔いるとか、考えられませんよね。

悔いるなんて、後ろ向きなことにエネルギーを使ってたら、大事なお子さんを笑顔にする時間がなくなっちゃいます。もったいない、もったいない!

もちろん、一口に障害と言っても、命に関わるものから、外見上の問題まで様々。優は自分の障害のことしか分かりません。だけど、障害が親子関係をめちゃめちゃにするバリアになってしまうなんて、それはとてももったいないとしか思えないのです。

考えたくないけど、もし優の子供が障害を持って産まれてきたら、障害を、より強固な親子関係を築き上げる種にしたいと思う。自分がそうやって大きくなったように。

世間知らずの障害児がぎゃあぎゃあわめいてると思われるかもしれないけど、世間を知らずとも世間の中で障害を抱えながらいきることについては、そこらへんの医療関係者よりよっぽどよく知っているつもりです。

医療資源やら医療経済を持ち出して、障害児を社会のお荷物視したい人もいるのかもしれないけど、じゃあ一体医療って誰のためにあるんでしょうか。

もちろん予防を意識することが大事な場面もあるってことは分かります。優だってリーマス(催奇形性の強い薬)をわざわざ飲み続けながら子供を作ろうなんて毛頭考えていません。子作りに備えて1年かけて薬を変更していくつもりです。できれば子供には苦労させたくないという親心は誰にだってあるからね。

でもだからと言って、障害児が産まれるリスクを完全にゼロにできる訳じゃないじゃない。そして何より、悔いることでその子が幸せになる訳じゃないんだから、過去を悔いるより、その子の未来のためにもっと他にやることがあると思うんだよね。

長くなったけど結論。

親に悔いてほしいとは思わない。親は私を十分笑顔にしてくれたから。悔いることなく、前を見てくれたことによっぽど感謝。

色々な方面から色々と余計な事いう人がいるけど、主役は親でも医者でも世間でもなく、障害を抱えて産まれたその子だと思う。その子がこの先笑顔でいられるかどうかが一番重要。笑顔でいてもらうために周りが何ができるのか考えるのが、何より先決なのではないでしょうか。

それにしても、、、患者以上に病気のこと分かってるつもりのお医者さん、苦手です。病気は、お勉強だけですべて分かるものではないのに。優はこういう医者にならないように気をつけよう。

やや感情的に長くなりましたが、以上。