2011.3.26韓国ドラマ公式ガイドブック「トキメキ☆成均館スキャンダル」
シノプシスを読んで、キャラクターのどこに引かれましたか。
心の奥底に痛みを静かに抱えている感じがとても気に入りました。チャルグム4人組を始め、劇中のどのキャラクターもそれぞれ事情を抱えていますが、中でもソンジュンは、痛みを忘れようと反抗したり、大げさに振る舞ったりするのではなく、一人静かにその痛みを胸の奥にしまいこんでいます。そして、その痛みを抱えたソンジュンが、他人によって明るくなり、人間らしくなっていく。それ自体にとても引かれたように思います。
監督や脚本家から特に注文されたことはありますか。
口をそろえて注文されたのは、トーンです。トーンをあまり落としすぎないようにと。
どのように工夫されましたか。
ソンジュンのセリフには語感があって、少し重みをもたせなければいけないものが多かったです。例えば、..試験場で不正を告発するシーンなどでは、普段通りの軽い声ではいけませんから。また、父親や先生、王など、年配の方との共演シーンが多かったので、生意気にみえないよう礼儀正しく、だけど言いたいことははっきりストレートに、といったソンジュン特有のトーンにしたかったんです。それで制作陣の要望を聞き入れず、わざとトーンを下げました。...
声のトーン以外で演じるのが難しかったのは?
きっちり構えて話すよりもその反対の自然な姿を演じるほうが難しかったです。にこっと笑うとか。ソンジュンとしては、笑うこと自体がぎこちないわけです。いつも硬直しているソンジュンだから、どのくらい笑うのか、その勘をつかむのがとても難しかったです。それで、2話で初めてかすかに笑う心が出てきますが、たぶん、これくらい?その時も本当にたくさん悩んで、あのくらいだけ笑うことにしたんです。全く笑わないわけでもなく、笑っているのでもなく、「ソンジュンだったらこう笑ったかな?」と考えながら演じるのが難しかったです。
15話の市場でユニに告白するシーンを撮影するとき、「音楽が聞こえてくるような感じがした」そうですが、本当ですか。
...撮影当時、学生の団体客が見学に来ていて、周りがものすごくうるさかったんです。だけど、本番ではそういう雑音が一切聞こえませんでした。むしろ、自分でセリフを言ったり相手のせりふを聞いているときは、小さな女の子が川沿いで鼻歌を歌っているような感じというのかな?何かハミングをしているような...とてもかわいらしい感じのメロディが聞こえてきたんです。あんなに人がいっぱいいたのに、本番中はとても静かだったのを覚えています。
何か心残りはありますか。
もちろんたくさんあります。当時はあまりに忙しくて分からなかったのですが、もう一度ドラマを見てみると、足りない部分が目に入るというか。あるシーンを見ると、撮影当時のことを全部思い出します。「あの時は役に入り切れていなかったな」というのが伝わってくるので、すごく残念です。演技力についても、もともと不十分だと思っていましたが、あらためてまだまだだなと感じますね。
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演技への挑戦、単独でする仕事、圧迫感が尋常でなかった、「何としてでもうまくやらなきゃ」という思いしかなかったと言ったユチョン。ほとんど寝ていない状況で、気力も残らず、普通の状態でもなくなって。
でも共演者の方から「地獄の訓練のような状況の中でも新芽は育つもの」と思われた、情熱と礼儀と演技への取り組み。姿良く、聡明で、おっとりしつつも芯のある主人公ソンジュン役は、ユチョンにとって自己実現の相手として取り組みがいがあった、本当にスタートとしては恵まれた役だったのだろうと思います。
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今絶対に聞けないからこそ、ユチョンの言葉を何か聞きたくて、最近から昔に向かって各作品ごとに演技に関するインタビューを読んできました。最初からこんなに台本を読んで共演者に礼儀正しく熱心にやっていたんだ、作品ごとに緻密に考えてひとつひとつの動きを決めていたんだ、演技の勘は経験からなんだ、演技するほど新たな世界を見つけ、演技するほど何か自分に欠けていたものを癒していたんだ、と新たな発見がたくさんありました。
すべてを出し切ると無になってしまうので、力の抜き具合を調節しつつ、自分から何かを引き出してくる。すごい疲れるね、これ。でもユチョンはそれが面白かったんだよね。
やっぱりミューズの寄こした人のひとりなんだな、この男性。