私は言わなくてもいい余計な一言を黙っていられない。
そして、わりと素直なので思ってもないお世辞が言えない。
先日もコンパに呼ばれて行ったとき、相手は趣味がサーフィンという会社員だったのだが、サーフィンで培った二の腕の筋肉がご自慢らしく、私に「腕、触ってみ」と言ってきた。
でもたいしたことない二の腕。
これくらいの筋肉ならよくいるじゃないかと鼻で笑いつつも、「スゴーイ!」という言葉を期待している相手に向かって何か言わなくてはいけない。
うーん。
「すごい、お肌ザラザラだね」
一瞬寒い空気が目の前を通り過ぎた。
でも全然すごくない筋肉に向かって、「スゴイ」って言うのは失礼じゃない?
鳩が豆鉄砲をくらったような顔をした相手を見て、話題を変えなくてはと、私(と周り)は焦った。
そこで、たいしたことない筋肉でも、サーフィンの話題ならばなんとか盛り上がるに違いないと思い、慌てて続けた。
「サーフィン初心者なんだけど、何かアドバイスをちょうだい」
任せなさい、とばかりに話し始める男。
ところがこれがまた、なんだかひっかかる。
「俺が波に乗るときは…」
「俺のスピリッツと波が…」
「俺は…」
………???
私は「私が波に乗るにあたっての経験者からのアドバイス」を聞きたいのであって、「会って間もない『俺』が波に乗る時のコツ」を聞きたいわけではない。
やんわり進行中の「オレオレ話」に割って入り、また余計なことを言ってしまった。
「波に乗りたいのは私なんだけど」
自信満々にサーフィンのスピリチュアルトークを展開していた彼はさすがに怒ったようだ。
そのまま15分近くトイレに立ったまま、戻って来なかった。
普通だったらこんなとき、たとえ自分の質問と全然違う内容が返ってきても、「スゴーイ!」とか「ステキー!」はたまた「今度サーフィン教えてくださ~い!」等々、相手を持ち上げる言葉を相槌代わりに連発するのだろう。
でも私には無理。
場の空気を読めないって言われればそうかも知れないんだけど、言葉のキャッチボールができてない時点で、どうしても言ってしまうんだよね。
今回も(少しは)反省しつつ、懲りずに出会いを求める私でした。