父からメールが来た。
「詳細が決まったら連絡しなさい。」
…全く意味がわからない。
私は父に、何の提案も相談もした覚えはない。
思い当たることと言ったら、転職くらいだが、父が今までに私の仕事先を気にかけたことは一度もない。
一体、父は私に何の詳細を求めているのだろう。
しばらく考えながら、携帯のメールボックスの中を流し読みしていて気が付いた。
私は父にメールを送っていたようだ。
「そしたらワレワレ今、お金ないし、久しくおいしいもの食べてないじゃん。ユキオと一緒にごはん食べに行こうよ。」
「ユキオ」とは、父の名前である。
そして「ワレワレ」とは、私と弟のことを指す。
私は、弟に返信するはずのメールを、父に送っていたのである。
私はたまに、どういうわけか、メールの送り先を間違える。
先日も、友人に返信するはずのメールを、我がボスNに送ってしまい、冷や汗をかいた。
しかし、今回のは間違えるにも程がある!
よりによって、父を呼び捨て、お金がないからおいしいものをご馳走してもらおう!という図々しい計画の内容を当の本人である父に送ってしまうなんて。
とりあえず、素直なだけが取り柄の私は謝った。
このことを近所に住む親戚のおばさんに話したところ、間違えて送った相手が良かったと言う。
社内恋愛をしていたおばさんの同僚は、今夜いつもの場所で…云々という愛のメールを社員全員に一斉送信してしまい、会社を辞めたらしい。
メールの送り先は必ず確認しようと、改めて思った。