私の祖母は外面が良い。

逆に私は、家族の誰もが「サービス業だけはやるな」と言う程、まぁ、いわゆる、良く言えば、正直者。

私は常々、その祖母の外面の良さを、うらやましいと思っていた。


しかし、その祖母が最近私にグチをこぼす。

祖母は週に2日、デイケアセンターに通っているのだが、そこでやる事なす事、全てが裏目に出てしまう、というのである。


編物が得意な祖母は、デイケアセンターに編物を持って行っているのだが、最近、貼り絵の制作が忙しくて、編物が進まないらしい。

貼り絵がめんどくさい祖母は、介護士が貼り絵をしようと言い出した時、とっとと終わらせてやろうと思い、率先して貼り絵を始めた。


その日の介護士による連絡帳。

「とても積極的に貼り絵制作に参加されていました。」


また、巨大な貼り絵なのでなかなか終わらず、紙切れにノリを付けて1枚1枚貼ることにしびれを切らした祖母は、最初に一気に台紙にノリを塗り、そこに千切った色紙をばらまいて、台紙にくっつかなかった色紙を払い落とす、という荒業に出た。


その日の介護士による連絡帳。

「貼り絵制作に工夫を凝らし、大変精力的です。」


そして今日は、いい加減、手で千切った色紙を台紙に貼るのがダルいので、ピンセットを持参し、さっさと終わらせるべく、せっせと色紙を貼っていたという。


今日の介護士による連絡帳。

「家からピンセットを持ってきて、意欲的に貼り絵に取り組んでいます。」


祖母はどうしたらいいのだろう、と私に言う。

そんなの、やりたくないって一言で終わるのに。


外面が良い人は外面が良いなりに大変なんだな、と思った。