☆摩擦による損傷
毛小皮は、ウロコ状の硬いケラチン蛋白質が
4~8重に毛先の方に向かって重なっており、
外部からの刺激に充分耐えられるようにできています。
しかし、日常頻繁に行うシャンプーをする時、
泡立ちが悪い状態で洗うと、毛髪と毛髪との摩擦が大きくなります。
泡は汚れを落とすだけでなく、クッションの役目をし、
摩擦を防いでいるのです。
無理なブラッシングも毛髪に大きな
摩擦を生じて、ダメージを与えます。
無理にとかすことは避けて、ブラッシングの前には
必ず洗い流さないトリートメントを使用し、毛小皮に薄い被膜を
作ってブラシとの摩擦を減少させることが大切です。
毛小皮の一部に剥離が起きると、その部分から損傷が広がり、
毛皮質が露出して水分が蒸発し毛髪は乾燥しやすくなります。
洗い流さないトリートメント、スタイリング剤は毛髪に
光沢やセットカを与えるだけでなく、
摩擦を少なくし、静電気の発生を抑えて損傷を
防ぐ大切な役目をしています。
☆熱による損傷
ハンドドライヤー、ホットカーラー、
アイロンなどによる損傷です。
毛髪は蛋白質なので熱に弱いのですが、
皮膚よりは強い抵抗力を持っています。
その限界点は120℃くらいまでです。
毛髪は、普通10~15%の水分を含んでいますが、
加熱していくとこれらの水分が蒸発し、
カサカサになって手触りが悪くなります。
さらに130~150℃以上の熱を毛髪に加えていくと、
膨らんで変形を起こすほか、
黒い髪の場合、茶褐色に変色してしまいます。
また、毛皮質および毛髄質中に気泡ができはじめ、
毛髪に弾力がなくなって脆くなります。
250℃前後のアイロンを約1分間毛髪の表面にあてると、
その部分の毛小皮は溶けてしまいます。
☆日光による損傷
太陽光線は、波長の長い方から順に
「赤外線・可視光線・紫外線」の3つに大別されます。
この中で、毛髪に何らかの影響を
与えるのは赤外線と紫外線です。
赤外線は、熱線ともいわれるとおり、
物体に当たると熱を発生します。
この熱により、毛髪のケラチン蛋自質が損傷を受けるのです。
さらに影響が大きいのは紫外線です。
これは化学線ともいわれ、熱は感じられませんが、
海、山、スキーなどで皮膚が焼けるのは
この紫外線の影響です。
毛髪も強い紫外線を受けると蛋白変性を起こします。
☆大気汚染による損傷
特に毛髪に与える影響としては、
工場の燃焼炉ガスや車の排気ガス中の硫黄化合物(SO2、SO3)、
窒素酸化物(NO、NO2)などによる化学的損傷です。
また、大気中のチリ、ホコリなどによる
毛小皮の物理的損傷があげられます。
☆ダイエットや偏食による損傷
毛髪を健康に保つには、毛髪に栄養を与える種々の
アミノ酸を含んだ蛋白質(大豆、いわし、小魚、牛乳、肉、卯など)を
バランスよくとることが大切です。
この他、ビタミンやミネラル(特に鉄、亜鉛、銅)も必要です。
ビタミンA、Dは、皮膚を丈夫にしてフケや抜け毛を防ぎ、
抜け毛の後の毛髪の再生に役立つといわれています。
したがって、ビタミンやミネラルを多く含んだパセリ、
小松菜、イチゴ、ほうれん草などをたっぷりと摂ることが効果的です。
また、リノール酸を含んだ植物性の油は、
毛髪にツヤを与えます。
落花生、ごま、サラダ油などに含まれています。
昔から、毛髪にはワカメやコンブなどの
海草がいいといわれています。
これは、海草には毛髪の栄養分となる鉄、
ヨウ素、カルシウムが多く含まれており、
頭皮の新陳代謝を高める効果があるためです。
特にヨウ素は、若々しさを作るという
甲状腺ホルモンの分泌を促し、毛髪の成長を助けてくれます。
やせたい、スマートになりたい、
という一心から過激なダイエットは、
いき過ぎると栄養失調になり、
健康を損ねるばかりか、
そこまでいく前に髪が光沢を失い、細くやせ、
最後にはバサバサと抜け落ちてしまいます。
ダイエットとはいえ、栄養のバランスに
充分気をつける必要があります。
ストレスや栄養不足などが毛球部に影響を与えた場合、
その結果が毛幹部に現れるのには1か月半かかります。
また、機能が回復するまでにも一定の期聞が
必要になりますので、もとの健康な髪に回復するには
相当な時間がかかってしまいます。
同様に産前産後や病気の回復時にも、
体力の維持や回復のために栄養バランスに
十分気をつけ、毛髪の成長に必要な栄養が
行き渡るように心掛ける必要があります。