原作は大変面白い小説で、しかも時子奥様を松たか子が!!
というわけで、すごく楽しみにしていました。
で、見てきた。
いい映画だった。
まず脚本がすごくいい。
原作を十分生かしつつも、分かりやすく人物関係を説明し、過去と現代を過不足なく描き分ける。
見てて、すっと話が入ってくる。
笑ったり泣いたりしんみりしたり。見ててだれるところがなかった。
そして、小さい嘘だけど取り返しのつかないことをした後悔の涙。
謝ることもできないために背負い続けたその重さ。
これは、戦時中でも平和な時代でもどこの誰にでも起きそうな、重い重い自責。
その重さに震えます。けして間違った選択だとは思わないけれど。
また、平井家の昭和初期の暮らしぶりや小さい家の造形が本当にすばらしい。
台風の時は外から木の板を打ち付けたなあ、とか。
玄関脇の洋間とか。
お勝手の小ささ。
旦那様が会社から帰ってすいすいと女中や奥様に手伝わせて着物に着替える様子とか。すごく自然で懐かしい。私の父は着物なんか着ない歳だけど、おじいちゃんは着てたような気がする。
洗い張りまでうちでやってたのかなあ。これは、ぴんとこなかったけど。
もちろん、原作をはしょったりしてるところもある。たきちゃんが女中奉公に上がった年が違う。
一番大きいのは、原作では、時子奥様が再婚であるということ、京一坊ちゃんは連れ子であって、旦那様の子どもではないこと。そして、旦那様は、いわゆるED?でありセックスレスの夫婦であること。
この設定は確かにややこしいので一切なし。映画としてはすっきりしてて、見てて問題はないかもしれない。
しかし、これがないと、奥様が不倫する理由が、弱い。ただの蓮っ葉な女みたいである。
いや、多少蓮っ葉でも、ぞろっとしたいい男にくらくらというのなら分かる。
でも、吉岡秀隆では……。これ、キャスティングミスだよorzここだけは、最後まで納得いかなかった。
いっそ、薹のたった大学生(いつまで学生やる気だ)の妻夫木聡が、板倉役でいいじゃん!と思ったりしたのだけれど。
でも、最後の最後、やはり来たよツマブキ!!な、泣くシーンがあったので(今日本で泣かせたら、芦田愛菜か妻夫木か?!だよね)、甥っ子役は妻夫木で仕方なかったのかもしれない。
とはいえ、やはりここはへなちょこな感じのする若いイケメン俳優持ってきて欲しかったなあ。
うーん。
綾野剛?
カトシゲあたりでもよかったかも。
それにしても、この監督の映画に良く出る俳優さんばっかりで、(中島朋子が奥様の親友でちょろっと出てきたのには、ちょっとちょっと、と思ったわ)まるで手塚治虫のマンガのスター制みたいだな。
さて、この映画ですごく驚いたのは、メイクの細かさ。
たきちゃんが出てきたばっかりの頃は本当に山出しの田舎娘でほっぺが真っ赤っか。
それが、一年たって平井家に移ってからは顔の色も落ち着いてきれいな娘さんに見える。
それよりも驚いたのは、逢瀬をやめた奥様が「痩せておしまいに」というナレーションのあと出てきた奥様の顔が本当にげっそり痩せてる。
その直前のシーンがほっぺぱんぱんだったから余計にそう思うのかもしれないけど。
メイク?日をおいて撮影したのかしら?
でまあ、昭和モダンな雰囲気を出しているので、音楽もミュゼット風だったりするんだけど、見てる最中なぜか既視感。えーと、これはなにかしら?
と思ったら、あれよ、「ハウルの動く城」
哀切を帯びた三拍子の曲調と、倍賞千恵子の声が重なって、ハウル?ハウル?とひっかかってしまったよ。
松たか子の昭和な口調もすごく良かったし、美術も細部まで行き届いてて、本当にいい映画だった。実は平成のたきばあちゃんのつましい暮らしぶりもなかなか良かった。ベッドの宮の上の人形、ずっと気になってたんだけど。
DVDまで買うかどうかはわからないけど、とてもいい映画でした。