世界観episode63~姉とアメリカと年末休暇③(HSP社会人前編⑧)

 

 

 

    前回に引き続き、

  2001年に起こった

  9.11同時多発テロ後の

  アメリカを観に

  年末にNYに滞在していることを

  お話ししました。

      

 

   世界観episode62~姉とアメリカと年末休暇②(HSP社会人前編⑦)

  

 

 

  今回も、

  引き続き

  年末のNYでの滞在のことを

  お話しします。

 

  

  

  チャイナタウン・

  リトルイタリーツアーから帰宅し、

  家でまったりしていたとき、

  姉から今後の予定を聞かれました。

 

  一つ目は、

  アメリカ名物、

  タイムズスクエア前での

  カウントダウンに参加したいか。

 

  二つ目は、

  グラウンド・ゼロに行くかどうか。

  (グラウンド・ゼロに行くに合わせての

    外出プランを考えてくれたらしい)

  

 

  一つ目の

  カウントダウンは、

  「寒いからいい。

   あの人だかりの中で

   トイレ、行くの無理そうじゃん」

 

  (タイムズスクエアの前は

    カウントダウンの人だかりがすごく、

    4時間くらい待ちらしいです。

    ということは、

    いったんその列に参加すると

    どう考えてもトイレに行けない)

 

  そう答えると、

  姉はほっとしていました。

 

  ものすごく寒いので、

  姉としても行くのは

  本当は今ひとつ気が進まないけれど、

  姉は、私が行きたいのなら

  頑張って一緒に行こうと

  思ってくれていたらしいのです。

 

   

  私も姉も寒いのは苦手。

  あんな寒い中に4時間以上も

  トイレを我慢して立ち続けるなんて  

  正気の沙汰じゃないと、

  意見が一致したのです。

  (しかもトイレに行きたくなるから

   温かい飲み物も飲めない)

 

 

  二つ目の

  グラウンド・ゼロですが、

  この件については、

  姉に感謝しかありません。

 

  というのも、

  私は姉から

  「行くよね?グラウンド・ゼロ。」

  と聞かれた瞬間、

  私は躊躇したのです。

  (「当然行くと思うけど、一応確認するよ」

   という姉の心の声が聞こえそうでした)  

 

  なぜ躊躇したかというと、

  単純に怖かったからです。

 

 

  9.11同時多発テロ後のアメリカを

  感じに来たのになぜと

  思われるかもしれませんが、

  アメリカを感じることと、

  実際に9.11の現場を見に行くのは

  似て非なる物です。

 

  姉の質問により、

  9.11の映像が

  鮮明に私の頭によみがえり、

  一気に色々な想像が

  私の中で始まりました。

 

  あの場で救援のために

  命を落とした消防士や

  救急隊員のこと....。

 

   

  憶病風に吹かれた私は、

  姉に

  「いや、やっぱり、

   観光で行くのはちょっと....」と

  もごもご答えました。

  

  怖いと認めるのは嫌だったので、

  姑息にも

  「観光に行くのはどうかと思う」

  と理由をすり替えたのです。

 

  姉は、

  そんな私の欺瞞を見抜いたのか

  ばっさり、一刀両断。

  「えぇ?

   ここまで来て行かないのは

   ないでしょう。

   観光とかそういう問題じゃない。  

   観ておくべきものだから」

  

  こうして私は

  グラウンド・ゼロに行くことに

  なりました。

 

 

  HSS型HSPの特性に、

  ニュースや映画等で

  悲惨な場面、

  暴力的な場面等を観ると、

  感情移入をし過ぎるため疲労する

  というものがあります。

  いわゆる感情疲労です。

 

  しかも、

  私の場合は、

  どうも視覚・聴覚からの記憶力が

  優れているらしく、

  2023年の1月2日でも

  かなり正確に

  当時のニュースの映像の断片、

  実際に

  グラウンド・ゼロを訪れた時の

  感覚を思い出すことができます。

 

  今にして思えば、

  アメリカに行った割に

  グラウンド・ゼロに

  行くのを逡巡したり、

  「プライベート・ライアン」を

  観るのに挫折したのは、

  HSS型HSPのこの特性に

  よるものだったのです。

  

  もちろん、

  あからさまに偽物とか嘘と

  わかるのものはさすがに平気です。

 

  例えば

  暴力的な描写もしっかりある

  タランティーノの映画は

  HSPの中には

  苦手な人もいるかもしれませんが、

  私は平気だし、

  むしろ、タランティーノの映画は

  好きです。

 

 

 

  グラウンド・ゼロには

  夜行くことにして、

  日中は、

  姉とマンハッタン観光をしました。

 

 

  ロックフェラーセンターの

  クリスマスツリーを見て、

  中学校の英語の教科書の

  挿絵の通りと感動しました。

 

     また、

  姉が話の種にと

  連れて行ってくれた

  アメリカのスタバでは、

  サイズの大きさに驚きました。

 

 

  そして、

  美しいアール・デコ建築の

  エンパイア・ステートビルと

  クライスラービルを見に行きました。

 

  特に、

  クライスラービルは

  アール・デコの

  最高傑作と言われ、

  頂上が美しい尖塔状になっています。

 

 

  姉は、

  私のそんな好みを

  知っていたので、

  マンハッタンの中でも

  美しい物が好きな

  私好みの場所を選んで

  連れて行ってくれたのです。

 

 

  クライスラービルで

  うっとりした後に、

  グラウンド・ゼロに行きました。

  

 

  グラウンド・ゼロには

  夜の冷え冷え刺すような冷気の中、

  大勢の人がいました。

 

  みんな、

  そこで亡くなった人々を

  静かに悼んでいました。

  

  キャンドルや追悼メモが

  あったように思います。

 

   

  かつて

  ツインタワーがあったところには

  何もない「無」が暗闇の中

  荒涼と広がっていたのです。


  それを見た私は、

  大きく目を見開き、言葉を失いました。

 

  

  暗闇の「無」の広がりに

  徐々に怖さを感じ、

 

  なぜここが、

  グラウンド・ゼロ、

  「爆心地」と呼ばれるのか

  分かった気がしました。

 

  

  数千人もの人々が

  この場で亡くなっている重みに

  ただただ圧倒されました。

  

  あんなに大惨事があったのに

  今は何も無い....。

 

  ここで

  多くの人が炎に耐えかねて

  自ら飛び降りたり、

  転落したりしたのか....。

 

  大勢の消防士・警察官の殉職者達...。

  自分の命を犠牲にする可能性も

  覚悟しながら

  ただただ人を救うために、

  自分に家族がいても

  危険を犯して助けに行き、

  亡くなったのか、と思うと、

 

  あまりにも強烈すぎて、

  涙も出ませんでした。

 

 

  絶句してしばらく現場に向き合った後、

 

  姉が気を遣ってくれたのか、

  「そろそろ行こう」

  と声をかけてくれました。

 

 

  その後、

  グラウンド・ゼロの

  感想を聞かなかったのは、

  姉の優しさだったなと思います。

  

 

  少し離れるにつれ、

  色々なことが頭に浮かびました。

  


  亡くなった人も無念だけれど、

  あれだけの事故だから

  有毒な粉塵も

  いっぱい吸っているだろうから、

  生き残った警察官・消防士の方々に

  これから待ち受けるだろう

  苦難のことを思うと

  やっぱり言葉がなくなりました。

    

 

  無念だったのは確実なので、

  安らかにお眠りくださいとも

  軽々しく言えず、

  ただただ

  何とも言えない寂寥感にも

  似た思いが胸に広がりました。

 

  

  人間の愚かしさへの

  哀しみというのが、

  一番近いかもしれません。

  

  ※9.11テロのうち、

   グラウンド・ゼロでは

   約3,000人もの人々が死亡。

   そのうち

   消防士・警察官の殉職者が約400人

   ツインタワーからの転落者は推定200人

 

  

  あれから

  20年以上経ちますが、

  9月11日には

  やはり、

  同時多発テロのことを

  思い出します。 

 

  あまりにも

  重たい現実を見ましたが、

  行かなくて

  ただ怖いと思うより、

  その場で亡くなった方々を

  悼むことができたのは、

  自己満足ではありますが、

  良かったと思います。

 

 

  そして何より

  あのまま行かずに逃げたなら、

  きっと私はずっと

  逃げた自分を

  自分をずっと許すことができず

  何で行かなかったのかと

  公開し続けると思うのです。

  

 

  HSS型HSPの特性を考えると、

  あまり強烈すぎるニュースや映画は

  見ない方がいいらしいのですが、

  私にとっては、

  傷みを覚えても

  その現実をみることが大切なのです。

 

  多分、これは

  HSS型HSPの特性の

  共感性と優しさなのかもしれません。

 

  私は

  苦しい思いを見て見ぬ振りを

  するのは心苦しいし、 

  かといって

  何かができるわけでも無い場合は、

  せめて「知る」ことだけは

  逃げずにしたいという思いが

  強いようです。


   

  グラウンド・ゼロは、 

  私一人では

  とても行くことができなかったです。

  そばに姉がいてくれるから、  

  現場を直視することが

  できました。

 

 

  何も言わず、

  そばにいてくれて、

  私に向き合う機会と勇気を

  与えてくれた姉には

  本当に感謝しています。

  

  

  明日は、  

  最後のお話しです。

  憧れのコロンビア大学、

  セントラルパークを

  訪れたことをお話しします。

 

 

 

  

 

 

 

  

   に続きます。