さて、俊蔭の娘さんとワンナイトラブをした若小君
でも、コドモだから
まさかの外泊の間、お家は大変な騒ぎでした
なにしろ若小君の両親、すっごい過保護なんです
……たしかにコドモだしお坊ちゃんだし、というのは分かりますが
それにしても……
若小君と一緒にいたお兄ちゃんには
「見つけてこなかったら、勘当だからな」
と言いだす
お供をしていた男たちには
「検非違使(警察みたいなモノ)に突き出して牢屋に入れるぞ」
と言いだす
(というかそれって可能なの ……謎です)
もっと身分の低いお供たちは、縛り上げて叩くという折檻まで
あーあ……
結局、お兄ちゃんが見つけてくれるのですが
これ以降、当然、両親の目は厳しくなるわけで
こうなると、若小君は俊蔭の娘さんとの再会なんて不可能なわけです
……ここで、しばらく物語は若小君のハナシをやめてしまいます
まぁ、主役でもないですしね
この間の、俊蔭の娘さんの出産・子育て奮闘記と
ワンナイトラブで生まれた仲忠くんの苦労話でいっぱいいっぱいです
……この間の、仲忠くんの苦労話は本当に面白いです
泣けるというか……ほとんど、おとぎ話の世界です
でもまぁそれは、また今度
つぎに若小君が登場するのは、およそ12年後
つまり、仲忠くんが12歳になった頃です
仲忠くんの、お父さんとの感動の再会
ということになるわけです
コドモだった若小君はすっかり立派なオトナの男になっています
その名は藤原兼雅
右近衛大将という華々しい上に政界の中枢の一角を担う職に就いています
……まぁ、もともとお坊ちゃんだからね
そんな若小君改め兼雅
俊蔭の娘・仲忠が暮らしていた山の近くをたまたま通り
俊蔭の娘が弾いていた琴の音に気づくのです
もちろん、俊蔭の娘の音と分かるわけではありませんが
「あれ、なんか凄いステキな音が聞こえる……」
と山の中をたずねて行くのです
さすがだよ若小君改め兼雅
やっぱり違いが分かる男なんだね
(聞き分けちゃう兼雅の耳が物語上重要なんだよ という『うつほ物語』研究者の指摘もあるのですよ)
……で、俊蔭の娘・仲忠に出会い、自分の妻子だと知り、都に引き取るのです
感動ですね
……ですが
妻子を引き取るときの若小君改め兼雅の描写に、アレッ となります
なんでもこのヒト、一条に広大な屋敷があって
……前のミカド(嵯峨院)の女三宮(第三皇女)をはじめ
たくさんの親王や公卿のムスメや、ちょっとした愛人もいっぱい住まわせていて
「こんな騒がしいトコじゃアレだよねー」
と、三条堀川の別邸に迎えることにした、と……
しかもその三条堀川の別邸というのは
嵯峨院の女三宮との間に生まれたムスメをいずれ皇太子のキサキにする予定で
そうなったときの実家にするために用意していた邸……
待て待て待て待て
若小君改め兼雅
オマエ、いつからそんな男になってしまったんだ
……いや、仕方ないですよ
お坊ちゃんですから
いろんな政略結婚とか、ありますよね
結婚で一族が繁栄するとか、大事ですよね
……とは思うのですが
でも、でも……
あの可愛かった若小君が
と思うと、切ない……
ということで
俊蔭の娘さんと仲忠の母子は、お父さんと再会できましたが
お父さんの若小君改め兼雅さんは
すっかり色好みのオトナの男になっていたのでした……