ホッとしたのも束の間。
なんだか今度は左足のくるぶし辺りがモゾモゾする。
背筋がゾッとする。
奴は、まだ存命しているのか?
おそらく、指で弾かれたくらいじゃどうってことないのだろう。

私は、今度は左手でスカートの裾を揺する。
恐る恐るくるぶし辺りを触ってみても
奴がくっ付いている気配はない。
どうやら、ロングスカートの裾が足元に触れて
虫が這っているように感じたらしい。

そう。
このスカートは、
先日娘が「私には大きすぎるからお母さんにあげる」と言って私に譲ってくれたものなのだ。
162センチの私でも十分ロングなのに
156センチの娘なら引きずるくらいの長さに違いない。

スカートの裾が、
何度も足首辺りに触れて気になるので、
私は、スカートの裾をひざの辺りまでたくし上げた。
外は暗いし、車の中だし、
誰に見られる訳じゃないし、いいだろう。

が、しかし…
今度はひざ付近がモゾモゾする。
なんだかどこもかしこも痒くなってきた。

気のせい、気のせい、虫はどっかに行っちゃったんだから大丈夫!
私は、気を落ち着かせようと
水を飲もうとした。
フタを開けたままの
ペットボトルを口に近づけて飲もうとしたその時、
嫌な予感がしてペットボトルから口を離した。

つづく