引越しの片付け。
とにかく、処分する棚の引出しを
片っ端から開ける。

すぐに処分できるものもあれば、
ついついじっくり見入ってしまうものも。

あーこれは、息子の幼稚園時代の名簿。
保護者の名前の横に、平仮名で子供の名前が書いてある。そして、今では考えられないことだが、住所と電話番号も。

風を切り、息子を自転車に乗せて幼稚園へ向かった光景が頭をよぎる。

次に出てきたのは、
娘が作ってくれた「マッサージ券」「耳かき券」「肩たたき券」。

本人たちがいる時ならいつでも〜と書いてある。あー、いる時に使えばよかったなー。

そして、次に手に取ったのは、ほとんど使っていないノート。これは捨ててもよいヤツだな。
…と思い、パラパラとノートをめくると、一番後ろのページに、私の殴り書きが…。

きっと、新聞にでも投稿しようとして途中で諦めたものだろう。
自分の字の汚なさに、解読は困難。
しかし、読み進めてみると、結構いいことが書いてあった。

読みやすいように少し書き直してみた。

*****

とあるスーパーでのこと。

買い物をすませ、小5の息子と駐車場へ向かった。
息子は、その手前にあるトイレに寄ってから車に乗るというのが常だ。

今日もトイレに寄っていくのかな?などと考えながら、私の後ろを歩く息子を振り返った。
すると、息子は私のすぐ後を歩いてくるのではなく、遠回りしてこちらに向かってきた。
その顔は明らかに怒っている。

「お母さん!テレビの前通ったらテレビ見ている人が嫌な気持ちになるでしょ!」
どうやら私は、息子のトイレのことを考えながら歩いていたら、テレビの前を堂々と通っていたらしい。たしかに、テレビ前のベンチには、1人座っているのが見える。

私は、自分の失態をカモフラージュするかのように「アンタは、よく気がついてエライね!」
と、息子をほめた。

すると息子は
「そういうことじゃなくて・・・1足す1は?」と、私に聞いてきた。
私が「『2』だよ」と答えると、
「…そういうこと」
と、ポツリと息子は言った。
そして、頭の中が『?』マークの私に、
「当たり前のことだっていうこと」と続けた。