書くことが好きか嫌いかと聞かれたら、私は「好き」と答えるだろう。ただし・・・という条件付きだけれど。

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子供も巣立ち、これからの人生を考えた時に、自分には一体何ができるのだろうと、ここ1年くらいずっと考えていた。どうせだったら、自分の好きなことをして過ごしていけたらいいな。そして、それで多少なりの収入が得られれば…そんなふうに考えていた。

Webライターなんて、どうだろう?家にいながらにして仕事ができそうだし。

そんなことがチラッと頭をよぎったこともあった。

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私は、かつて地元ミニコミ紙のライターをやっていたことがある。下の子が、まだ幼稚園児の頃の話だ。

ネタ探しから撮影、そして記事を書く。それは、新しくオープンしたお店の紹介だったり、町内会の紹介だったり、その街でのちょっとした有名人の紹介だったり。一面が「メガネ」の特集の時には、街を歩いているメガネの似合う人を捕まえて取材させていただいたこともあった。

手軽にできる料理を紹介するコーナーでは、料理の得意な人を探し出し、実際にお宅に伺い料理の過程を取材させてもらったりもした。

そのミニコミ紙のライターは、持ち回りで月に1回程度、新聞の地方版にも記事を書かせてもらったりもした。主人の転勤のため、わずか2年ほどしかできなかったお仕事だったけれど、記事の書き方などをプロから学ぶことができ、とても勉強になった。この経験は、今でも文章を書く上で役に立っている。

「書くこと」が好きで始めたライターの仕事だったけれど、ある時、記事を書きながら苦しんでいる自分に気が付いた。あれ?書くことが好きなはずなのに、なんで楽しくないんだろう…と。

その時、私はハタと気付いた。私は、書くことなら何でも好き、という訳ではないのだということを。

私は・・・

プロフィールに書いてあるように、ただ好きなことを書くのが好きなだけだったのだ。

そのライターの仕事をしていた時に一番困ったのが、野球についての記事を書かなければならない時だった。私は、スポーツは観るのもやるのも苦手。苦手というよりも興味がないのだ。

人によっては、たとえ興味がないことについても、ある程度のことなら知っている…という人もいるのかもしれない。しかし、私の場合、方向音痴の人が全く道がわからないと同じくらい、興味がないことには全く疎いのだ。スポーツ以外には、映画も同じ。特に海外作品につては、「スーパーマン」や「スターウォーズ」などの誰でも知っているような有名な作品でさえ、そのストーリーや俳優の名前も顔もわからない。

そんな全くわからない分野について記事を書くということは、本当に辛いことだった。調べて調べて調べて、ようやく文字にしたのだが、どうもフワフワとした地に足の付かないような文章で、これで説得力のある内容なのだろうかと、なんとも言えない居心地の悪さを感じたことを覚えている。

たった一度だけ、そのミニコミ紙上でコラムを書く機会に恵まれた。私は、その時「男はなぜ戦うのか」というタイトルのコラムを書いた。それが超楽しくて、夢中になってあっという間に書き上げた。この時に、私は思った。私は、ただ単に好きなことを書くのが好きなだけなのだと。だから、私にはWebライターは無理なのだ。

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私の娘は、踊りを通して自分を表現するのが好きだと言っていた。人によっては、それが歌だったりピアノだったり絵だったりするのだと思う。私にとっての「ソレ」は、書くことだ。書くことが、一番自分を表現しやすい。そして、書くことは、何より自分にとっての「癒し」なのである。

これからの人生、私は何をして生きていけばよいのか未だ模索中だ。しかし、これからも私は、書くことで自分を表現していきたい。何になるわけではないにしても。