いよいよ来週末は、娘の引越し。
家族4人で一緒に夜を過ごすのも、昨晩が最後となった。

今日は、一日中用事があるらしく、朝食もとらずにいそいそと出かけた。
出かける前に、玄関の方から何やら娘の声が聞こえたような気がする。

「え?何?」
と、玄関へ行くと、
「いってきます」
と、娘。

「なんだ、何かと思ったら『いってきます』か…」と、半ばがっかりしたように言った私に対し、
「だって、『いってきます』って言っても、誰も何も言ってくれないんだもん」と、娘。

***

実は、娘は『いってきます』を、ほとんど言わない子なのだ。
正確には、家族に向けて言うことはなく、ひとりごとのように小さい声で呟く程度。言わないことも多い。たまたま玄関に居合わせると、その小さな「いってきます」を聞くことができる…といった感じなのである。

小さい頃の話だが、いつまでも私の姿が見えなくなるまで何度も振り返りながら出かけていく息子に対し、娘は玄関を一歩出ると、一度も後ろを振り向かない子だった。
幼稚園バスに一旦乗ってしまうと、窓の外にいる私の姿を見ることもなく手を振ることもなく、そんな姿を見てなんだか寂しい気分になったものだ。

以前、いつの間にか出かけてしまう娘を見送ろうと、玄関にダッシュした私に対し
「それ、やめて。怖いから」
と言われ、それ以来は行っらっしゃいダッシュはやめていた。

だから、今日のように家族に聞こえるように「いってきます」を言うことは、娘にしては珍しかったのだ。

来週末は、主人がここの家に帰って来る前に、娘は家を出て行く。
もしかしたら、父親に最後の「いってきます」を言いたかったのかもしれない。