保育士をしていた頃。
クラスのエミちゃん(1歳)の様子が気になっていました。
なんだかこの頃、機嫌が悪いというか、イライラしているというか、
お友達とトラブルになってしまうことも多くなっていました。
そこで、エミちゃん担当のベテラン先生が、
いつもお迎えに来るエミちゃんのおばあちゃんに
家庭での様子に変わったところがないか、
それとなく、訊いてみることになりました。
おばあちゃんによると、
最近、お母さんの残業が多く、
帰宅の遅い日が続いているということでした。
次の日、
珍しく、エミちゃんのお母さんがお迎えに来ました。
「あ、エミちゃんのお母さん、お帰りなさい~」と声をかけると、
いきなり、
「ゆっこせんせい、私って、愛情不足なのかな?」
と・・・。
「今、下で、ベテラン先生に言われちゃった。
愛情不足なんじゃない?って。」
今にも泣きだしそうな、辛そうなエミちゃんのお母さんの顔。
今も忘れられません。
話を訊くと、
昨日帰宅後、おばあちゃんから、エミちゃんの園での様子を聞いて、
心配になって、今日は、自分でお迎えに行こうと、
なんとか仕事を早く切り上げて来たとのこと。
「私、エミへの愛情、足りないのかな」とうつむくお母さん。
「愛情不足」って何!?
って、その時、私、思いました。
こんなお母さんの姿を見て、愛情が足りないなんて思えない。
確かに、お母さんと過ごす時間が少なくて、
エミちゃんは淋しい想いをしてたかもしれないけど、
それは、「愛情」が足りないんじゃなくて「時間」が足りなかっただけ。
まるで、「母親失格」の烙印を押されたかのように、
うなだれるエミちゃんのお母さんを見て、
そんな言葉で、片づけてはいけない!と感じました。
親子のいろいろな問題が取り上げられるとき、
よく登場する「愛情不足」という言葉。
でも、その多くは、「愛情」そのものが足りないんじゃなくて、
愛情を伝える「時間」や「方法」がうまくいってない
ってだけじゃないかなって思うんです。
一緒に過ごせる時間が短くても、
十分に愛情や安心感が伝わる過ごし方。
年齢によっても、適切な愛情表現は変わっていきます。
スキンシップが大事だったり、認めてあげる言葉が大切だったり、
一緒に何かすることで一体感を感じられたり。
子育て中のお母さんに関わる者として、
そんな方法や心がけを伝えられたらなって思います。
「愛情不足」なんて、簡単で残酷な言葉で、
決めつけて終わりにしてはいけないなって思います。
今は、そんな風に言葉にできるけれど、、
当時、まだ経験の浅い保育士だった私は、
ちゃんとエミちゃんのお母さん気持ちに寄り添えたかどうか。
「愛情不足ってことじゃないと思うけど・・・」
と言うのが精いっぱいだったかも。
だから今、こんなブログを書いているのかな。
若い保育士さん達や、
「愛情不足?」って悩み傷ついてるお母さん達に届くといいな。