「そういえば、ほら、あの、オセロが得意だった…」
前後の話はなんだったか忘れたけど、
ああ、あの指導員のこと、忘れてないんだあ、と思いました。
ウチの子、小さいときからオセロが得意だったんです。
小学3年生のとき、もう誰もウチの子には勝てない、
そんな風でしたから、誰も相手になってくれなくて
そんなときに
学童の指導員の男の子がいつも相手をしてくれていたのです。
学童は小学校3年生まで。
学童を卒業して、1年ぐらいたった頃かな、
その指導員の訃報が入りました。
自死でした。
衝撃でした。
身近で、初めての経験でした。
「子供たちに、どう伝えよう…」
親たちの、暗黙の了解で、交通事故、ということにしました。
「そういえば、ほら、あの、オセロが得意だった、交通事故で亡くなった…」
あれからもう十数年もたっているのに、ふいに会話に出てきた彼。
ああ、ウチの子の心に彼はいるんだな、と思いました。
その方のご両親に伝えたいのです。
「もうこの世にはいないかもしれないけれど、誰かの心の中で生き続けていますよ」
と。
(実は、交通事故で亡くなったのではないことを、言うべきかどうか、悩んでいます)