ツバメが巣立っていきました
六羽生まれたのに
巣立ったのは一羽
今年の敵はカラスでした
早々に一羽が取られ、しばらくして三羽
今度こそは見逃すまいと
思っていた矢先
ぎゃあぎゃあと騒ぎ出す声に飛び出してみるも
すでに遅し
姿は見えない、でもコッコッと屋根の上を
歩く音がする
あぁ、もう取られてしまった
靴も履かずに汚れてしまった足裏も虚しく
その日から最後の一羽になりました
不思議なもので最後の一羽になってからは
何者にもちょっかい出されることもなく
昨日、親鳥と一緒に飛び立ちました
きっと、最後の一羽は渡鳥の常として
来年もここに巣をかけにくるでしょう
忘れられない我が家を思えば
それは嬉しいことなのですが
でも、私にはどうしても
一羽きりしか残らない
いえ、一羽だけ残していった
その結末が
ここいらの鳥どもの、計略のような気がしてならないのです
こうしておけば来年も
またここに戻り、巣をかける
木の実を埋めた場所を忘れたリスが
森の成長に一役買うように
終宿主に食べられるために
カタツムリの脳を乗っ取り、コントロールする寄生虫のように
巧妙に生存を生き抜く
素晴らしき賢い本能
毎年毎年、また来年も
その様を目の前で見るのでしょう
人間に与えられた智慧は
生き物全体の生きようを、我がこととして見せつけられ
その責任と悲哀を負うことにある
と 思うのは考え過ぎでしょうか
名残を惜しむ