整形外科を受診する女医。最終話
整形外科を受診する女医 最終話
◆ ここまでのあらすじ。
首を痛めたマヤ先生。
しかたがないので、「大麻ちゃん」こと、整形外科の麻子先生に診てもらうことにする。
昼寝中の麻子先生を起こすと…!?
◆ 本編。
マヤ「おはよー!」
ユウ「お、おはようございます…」
大麻「あ、お…」
すると麻子先生は、マヤ先生の顔を見て、こう言いました。
マヤ「………」
ユウ「………」
大麻「お断りします」
まだ、何も言ってないのに。
僕、目が覚めての第一声が「お断りします」という状況に、生まれて初めて遭遇しました。
普段からマヤ先生がどれだけムリなことを言っているのかが、微妙に分かる気がしました。
マヤ「いいから、お願い。ちょっとだけ私のこと診てほしいんだけど…。時間ある?」
大麻「えっと…。今は…」
すると麻子先生は、寝ぼけ眼で口の周りをふきながら、言いました。
大麻「すみません。今はちょっと忙しくて…」
明らかに寝てただけなのに、「忙しい」と言い切った。
ここまで見事なウソは見たことがありません。
マヤ「……!」
マヤ先生の頬が、ピクッと動きます。
ユウ「い、いや、麻子先生、忙しいんですよね? 何かお仕事があるとか…」
僕は精一杯のフォローをしようとしました。
大麻「そうなんです。今はお昼寝しなきゃいけないから」
フォローが一刀両断。
少しは隠してください。その本音。
そう言いつつも、麻子先生は、マヤ先生の視線を恐れてはいるようです。
イジメられっ子が、精一杯抵抗しているようにも思えます。
マヤ先生は、どう説得するのでしょうか。
マヤ「待ちなさい! あなた、整形外科医なのに、本当に診ないの!?」
大麻「え…。だって…」
マヤ「だって、何? その胸は飾りなの!?」
先生、それはセクハラです。
あと本題とはまったく関係ありません。
すると、麻子先生はこう言いました。
大麻「か…」
マヤ「?」
大麻「飾りじゃありません!」
その返答、おかしいですよね。
否定する部分が違いますよね。
マヤ「じゃ、診てよ」
何ですか。その理屈。
大麻「え、でもぉ…」
マヤ「ね、お願い」
大麻「うーん…」
マヤ「いいから診なさい」
大麻「はい」
結局は迫力で押し切りました。
今までの論理は何だったのか。
大麻「…で、どうしたんですか?」
麻子先生がそう言うと、少しだけ真剣な目になりました。
マヤ「…うん…。首が少し痛くてね…。ちょっと前からなんだけど…」
大麻「どのあたりですか?」
マヤ「このへん」
すると麻子先生は、マヤ先生の首に手を当てました。
マヤ「………」
大麻「………」
ユウ「………」
マヤ「どう?」
大麻「そうですね…」
マヤ「うん」
大麻「私の推定ですけど」
推定ですか。
確定診断する気、ゼロですか。
僕は心の奥からそう思いました。
大麻「たぶん、おそらくなんですけど」
「医療に絶対はない」という言葉を先輩に聞きましたが、ここまで絶対がない医療も新鮮でした。
大麻「頚椎が少し不安定で、椎間板が押されてるのかなって」
マヤ「ふーん…」
大麻「X線取れば、確定すると思うんですけど…」
マヤ「うん」
大麻「X線は体にあまり良くないですし、時間もかかりますし、お金もかかりますし」
マヤ「………」
ユウ「………」
大麻「面倒ですし」
本音が出たー!
せめて最後まで建て前で押し切って欲しかった。
僕は心からそう思いました。
マヤ「そうね。面倒よね」
大麻「えぇ、面倒です」
え、何この会話。
こんな医療現場、見たことない。
大麻「いずれにしても、首の牽引と、首の筋肉を鍛える運動をしてみたらどうですか?
それで治らなかったら、また来てください」
マヤ「そっかぁ…」
大麻「そういう方向で、積極的経過観察という感じで」
「全力で放っておく」という言葉をオブラートに包んだ言葉でした。
マヤ「そうね。それでも首が痛かったら、首を洗って待っててね」
何ですか、その微妙な韻の踏み方。
大麻「えぇ。たぶんそれで大丈夫ですよ」
マヤ「えぇ。頑張るわ」
大麻「………」
マヤ「………」
大麻「………」
マヤ「牽引の処方箋、書いて」
大麻「あ、気がつきました?」
そりゃ気がつくと思います。
先生はマヤ先生のカルテを取り寄せると、手早く処方箋を書きました。
大麻「じゃ、時間ないので、そろそろよろしいですか?」
マヤ「えぇ。時間ないところ、ごめんなさいね」
大麻「いーえぇ!」
なんだか、「いいえ」ではなく「YEAH!」と言っているように聞こえました。
全力で肯定。
そして僕たちが立ち去り際に見ると、麻子先生は再び昼寝をしていました。
本当に隠す気ゼロだと思いました。
そして。数週間後。
マヤ先生の状態は良くなっているようで、一応は平穏な日々が過ぎています。
結果的に名医だと思いました。
しかし。
「病院のリハビリ室で、首を引っ張られてる女医さんがいる」
というのが、患者さんたちの間でウワサになりました。
どう考えても目立つと思いました。
なかなかに切ない光景だと思いました。
自分の病院で診療を受けるというのは、色んな意味で決してラクではない。
そんなことを、あらためて認識した今日この頃です。
みなさま今後ともよろしくお願いいたします。
-----------------------------------
そして○○○化、ついに情報解禁です。
○○○には「マンガ」が入りましたー!
当たった方、おめでとうございます!
アニメだと思ってくださった方、すみません。ありがとうございます。
いつかぜひ。
もし実現したら、僕の声はのび太の旧声優さんにやってもらいたい。
いずれにしても、とにかくマンガ単行本化です。
その名も、
マンガ・相手の心を絶対につかまえる心理術ハイパー!
「ハイパー」がポイントです。たぶん。
海竜社さんから出た、
「相手の心を絶対に離さない心理術」
「相手の心を絶対にその気にさせる心理術」
「相手の心を絶対に見抜く心理術」の3部作に続く、初のマンガ単行本です!
そしてマンガ家さんは、
自分の大好きな「ルパン三世」
の作画でおなじみ、山上正月先生です!
基本的に全編マンガ!
詳細情報はまたあらためて公開です!
とりあえず、アマゾンリンクはこちらから。
もちろん予約された方へのプレゼントもありますので、楽しみにお待ち下さい!
ではではっ!今後ともよろしくお願いいたします。