お見合いの精神科医。
お見合いの精神科医。 これは、4人のドクターたちの日常を描いた愛と情熱の日記です。 |
それは、ある秋の日のことでした。
マヤ先生が、深刻な顔で、こう言いました。
マヤ「お見合いで、『趣味は?』って聞かれたとき、何て答えればいいの?」
ユウ「は」
突然の質問でした。
ユウ「………」
マヤ「………」
ユウ「そ、そんなの、普通に答えればいいんじゃないですか」
マヤ「普通に?」
ユウ「普通に」
マヤ「………」
ユウ「…ご趣味は?」
マヤ「『男をいたぶること』です」
ユウ「うん。普通はあえて避けましょう」
マヤ「じゃ、じゃあ、どうすればいいのよ!?」
ユウ「こ、こんなときのために、よく使い回しの言葉があるじゃないですか!」
マヤ「たとえば?」
ユウ「音楽鑑賞とか」
マヤ「ああああっ! そういうの、ほんっとイヤ!」
ユウ「な、何でですか!?」
マヤ「だって『観賞』とかいって、結局は、ただ聞いてるだけでしょ!?」
先生、それを言っては。
マヤ「それに音楽なんて、誰っでも聞いてるじゃない! 聞いてない人探す方が難しくない?」
ユウ「は、はぁ。まぁ」
マヤ「それって結局は『空気を吸うのが趣味です』というのと同じじゃない!」
いや、それは違うと思います。
マヤ「そんな、無趣味と思われそうなのはイヤ! つまらない女と思われるもの! 他にはないの!?」
ユウ「………じゃあ、映画鑑賞とか」
マヤ「イヤ! 映画なんて、誰っっでも見てるじゃない!」
ユウ「………」
マヤ「たぶん、水野晴郎クラスになってはじめて、個性として成立すると思うのよ」
少なくとも、水野晴郎とはお見合いしたくはありません。
マヤ「他には!?」
ユウ「………じゃあ、旅行とか………」
マヤ「ユウ先生、旅行って、年に何回する?」
ユウ「………1回か、2回くらいでしょうか………」
マヤ「私も多くて4回くらい」
ユウ「い、いいじゃないですか」
マヤ「何言ってるの!? 趣味をするのが、一年に4回だけよ!? それを趣味と呼べるの? ていうか一年の大半が無趣味人間じゃない! 年に数日しか出勤しないのに公務員って名乗るのと同じじゃない!」
なんていうか、それはもう、根本的に違う気がします。
マヤ「とにかくイヤ。考え直し」
ユウ「………」
今の僕の趣味かつ義務は、マヤ先生の趣味を考えることです。
みなさま今後ともよろしくお願いいたします。