緊張してるから、ダメなの?胡蝶の夢 | 九段下・渋谷・池袋・新宿・品川・上野・秋葉原★心療内科ゆうメンタルクリニック

緊張してるから、ダメなの?胡蝶の夢



こんばんは。ゆうきゆうです。

突然ですが、僕は人を自由に動かす超能力を使えるんです。

たとえば本屋やレンタルビデオ店。
僕の見たいものの前に、誰か人がいた場合。

図解すると、

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棚棚棚★棚 (★が僕の見たいもの)

 僕 人
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というようなシチュエーションです。

「僕」「人」と並べると、僕は人じゃないみたいですが、その通りなので反論できません。


さてこんなとき、あなたはどうしますか?

「待つ」?

さすがにそれは面倒です。

「声を掛ける」?

「超能力」とか微妙なことを言う人間が、そんな勇気のいることができるわけがありません。



こんなときこそ、その超能力の出番です。


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棚棚棚★棚
 僕
 ↑ 人
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と、棚に近づくように移動すると、

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棚棚棚★棚
 僕
人←
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というように、僕の後ろを通って移動してくれるのです!

「通すために開けてくれた」と感じるからだと説明されます。

成功率、90%です。
すばらしい。

この際、棚に体を寄せたときの体勢をものすごくつらそうにすると、さらに動いてくれる率が上がります。
「つらそうだから、早く移動してあげよう」と思うからだと思われます。

「ヘンなヤツだから逃げよう」という可能性もありますが。


この超能力を使わない場合は、他にはこんな方法が考えられます。


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棚棚棚★棚

僕/ 人←      『ハンドパワー』
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棚棚棚★棚

  →僕裸 →人   『強引に迫る』
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棚棚棚僕棚

   ★  →人   『本棚に僕が』
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棚棚棚★棚

僕 僕 僕  →人    『分身の術』
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棚棚棚★棚

僕裸 僕裸 僕裸 →人 『全員で脱ぐ』
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棚棚棚★棚
  僕
僕僕  →人 『合体してキング僕』
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棚棚棚★棚
  死
死死 勇者 人   『退治される』
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僕僕僕★僕

棚 →人   『そもそも棚が僕』
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………。

今回はじめてこのブログを読んだ人に言っておくのですが、これは心理学ブログです。

というかこれだけ「僕」って書いてあると、「僕」って何だっけ?と思えてきます。
まさにゲシュタルト崩壊。


言い訳程度に心理学を出しつつも、今夜もセクシー心理学の世界をお届けいたします。


◆ あなたも実は、蝶々さん。

あなたは、「胡蝶の夢」という故事をご存じでしょうか。

それは中国の思想家、荘子の語った、こんなストーリーです。


彼はあるとき、蝶になった夢を見ました。
美しい羽根を持ち、ひらひらと花の中を飛び回ります。

とても楽しく、うっとりとした気分になったときに、彼は目を覚まして、驚きます。

「自分は蝶じゃなくて、人間じゃないか!」


ここで「あぁ夢だったんだ」で終わらないところが、荘子のスゴいところです。

彼は、こんな風に考えます。

「これは、人間である自分が、蝶になった夢を見たのか。
 それとも、今の自分こそが、蝶が見ている夢なのか」


新しい。
故事なんですけど、新しい発想です。

会社で居眠りしていて起こされたときにこう言ったら、
「いいから起きろ」
と言われそうです。


いずれにしても、この逆転の発想。
それが、荘子の荘子たるゆえんです。

さらに進めるなら、

「今の人生そのものこそが、誰かの見ている一つの夢なのではないか」。

彼は、こんな発想を提案してくれているわけです。


◆ もし、これで終わりなら。

突然ですが。

人間は、死んだあとに、どうなるのでしょうか。

よく「天国や地獄」や「来世」という考え方があります。

とはいえ誰も、それらのことを証明できません。
もちろん「絶対にない」ことも証明できないわけですけど。


いずれにしても、死後の世界や来世など、ハッキリしないものを信じずに、

「人生は本当にこの一回だけだ。死んだら、本当に何もない。完全に終わってしまうんだ」

と思うこともできるでしょう。
この考えについては、以前に「デスノートの心理学」のときに触れました。

しかし。
その思考の重みに耐えられる人は、とても少なかったりします。

ケガひとつ、病気ひとつ、また周囲の人の評判ひとつで、
「自分の存在すべてが終わる」と思ってしまうこともあるでしょう。

僕自身も、「死んだら何もない」と考えていたんですが、確かにかなりのストレスがあることが分かりました。


◆ いい緊張、悪い緊張?

あなたは、「ヤーキンズ・ドットソンの法則」というものをご存じでしょうか。

心理学者であるヤーキンズらが、被験者に「難しいゲーム」や「不慣れなゲーム」をさせた場合、

「緊張やプレッシャーが強い方が、成績が悪くなる」

ことが分かったのです。

逆に、簡単だったり、慣れているゲームをさせた場合は、適度な緊張によって、成績が上がることが分かりました。


たとえば想像してみてください。
あなたが、生まれて初めてボーリングをやったとします。

このときに、1万人以上の観衆があなたのことを囲んで、さらにテレビ放映までされ、

「がんばってーー!」
「絶対にストライクしろー!」
「失敗したら、最低だぞー!」

なんて言われたらどうでしょう。
もう、プレッシャーでガクガクのはずです。

それこそ、一人だけでこっそりやらせてもらった方が、より落ち着いて、いい成績を出すことができるはずです。

逆に、あなたがプロのレベルにまで習熟したらどうでしょう。
色々な人の期待の視線にさらされることで、かえってやる気も湧き、成績が上がる可能性もあります。

これこそが、ヤーキンズ・ドットソンの法則。

繰り返しになりますが、人は、

「慣れているものは、期待や緊張が強い方がうまくいき、
 慣れていないものは、期待や緊張が弱い方がうまくいく」

ものなのです。

◆ はじめての、ライフ。

ここで、考えてみましょう。

今の人生は、誰にとっても、はじめての経験です。

万が一前世があるとしても、そのときの記憶が明確にあって、
「2度目のプレイだから余裕だよぉ」なんて言える人はいないでしょう。

全員にとって、慣れていない、最初のプレイなのです。

また人生なんて、そうそう先が読めるものではありません。
当然ですが、多くの人にとって、「難しいゲーム」になるはずです。


すなわち大半の人にとって、難しく不慣れなゲーム。

この場合に、

「一度しかない。やり直しは効かない。失敗は許されない」

と考えてしまうと、それは極度の緊張やプレッシャーになります。
その結果、失敗してしまったり、過度のストレスが襲うことになるでしょう。


よって、その緊張は、極力減らした方がいいのです。

それこそ「一度きりしかない人生」ではありますが、その考えを忘れた方が、リラックスできます。
その結果、成功を収めやすくなったり、ストレスが少なく生きることができるでしょう。



ただ自分自身、「来世」や「死後の世界」という考え方は、なんだかなじまない気がしました。

そんな僕から提案するのが、この「胡蝶の夢」のたとえです。


◆ あなたの本体は、別にある。


あなたが、ストレスに押しつぶされそうなら、こう考えてみてください。


今の人生は、別のあなたが見ている、夢。

それが終わっても、あなたの「本体」が目を覚まし、別の生活が始まります。


たとえば、今のあなたの人生は、本体である小学生が、どこか別の世界で、授業中にふと疲れて昼寝してしまったときに見た夢かもしれません。

もしくはもっと幸せに、どこかで、理想的な異性の膝枕で、耳かきをされながら見ている夢かもしれません。


………。
自分の理想がこんなレベルですみません。

でも、本当に「本体」があるとするなら、自分の本体は、どこかのミトコンドリアかクロレラか、そのあたりだと思います。

それが、人間になった夢を見ている、という。

だからこそ、人間であることに微妙に違和感を覚えて、今の立ち位置にいるんだと思います。

起きたあとはひたすら光合成かATPの産生です。がんばらないと。

妄想の世界でも極力小さくなる自分です。


◆ 夢の中なら。

いずれにしても、その「本体」は何でも構いません。

今の世界は、ちょっとだけ寝入ってしまった、夢の中。

そう思うと、すごく気が楽になるのではないでしょうか。


夢の中で何をしても、起きた世界には関係ありません。

夢の中で徳を積むことで、起きた世界がいいものになるわけでもありません。
夢の中での楽しさを犠牲にしてまで、修行や努力なんてする必要もないのです。

もちろん、夢の中でお金をいくら払っても、起きた世界には、なんら関係ありません。


ただ、あなた自身が、夢の中で精一杯、楽しむこと。

それができたのなら、目覚めの爽快感が違います。
それだけです。

でも、だからこそ、思い切り色々とやれるのではないでしょうか。


◆ 惜しくても、やったことが。

たとえば何か、夢の中でおいしそうなものを前にしたとします。

その際に手を伸ばしても、届かなかった。
届く前に、目が覚めてしまった。

そんな夢を見たことのある人は多いはず。

それによって起きた後、「あーあ、惜しかった!」と思うかもしれません。

しかし、夢の中で、「手を伸ばすこと自体をガマンしてしまった」よりは、ずっとずっと目覚めがいいのではないでしょうか。
行動した分、ネガティブな目覚めにはなりにくいはずです。


夢だからこそ、やりたいことを精一杯する。

ただ目指すべきは、自分自身の、起きた後の爽快感。

そう思うことが、何より大事なのです。


◆ 夢幻のごとくなり。

織田信長は、こんな歌をよく好みました。

「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻のごとくなり。」

下天というのは、住人の寿命が500歳くらいの世界のこと。
それに比べたら、今の世界なんて、夢のようの短いものだよ、という考え方です。

「下天」は神話的な考えですが、それでも「人生は夢のようなものだ」というのは共通します。

だからこそ、好きに生きないと、意味がない。
夢だからこそ、精一杯楽しまないと、もったいない。


この考え方を好んだからこそ、彼自身リラックスして、あそこまで天下統一に近づけたのではないでしょうか。

もしここで、

「一度しかない。死んだら終わりだ。ブルブルブル…」

と思っていたら、奇襲ひとつかけることはできず、結果的にあそこまでの成功は得られなかったかもしれません。


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◆ 今回のまとめ。
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○ 人生を、あなたが別の世界で見ている、夢だと思うこと。




◆ さいごに。


寝ている人は、いつか必ず起きます。
夢の世界から、覚めなければいけない時間が来ます。


夢の中のものは、何一つとして、起きたあとの世界に持っていくことはできません。


ただ一つだけ持って行けるものがあるとするなら、それは「思い出」だけです。


つらい思い出だって、もちろんあるでしょう。

しかし起きてしまえば、どんな悪夢も「過去のできごと」です。
かえって「あぁ、夢で良かった…」と、幸せに浸ることだってできるでしょう。

楽しかった夢なら、もちろん、起きた後もあたたかな気持ちになれるはずです。



だから、何も心配しなくていいんです。


あなたの気持ちに忠実に、たくさんの思い出を作ってください。

今しかできないこと。
大切な人との時間。
伝えたい言葉。


そのひとつひとつが、何よりも大切なことなんですよ。


(完)