バリで落ちる女医。10
バリで落ちる女医。10 これは、4人のドクターたちの日常を描いた愛と情熱の日記です。 |
<前回のあらすじ>
バリに来たマヤ・ユウ・リオ・エリ。
ユウたちは、マヤの提案でバンジージャンプをすることになる。
すでにリオは飛び込み、今度はユウの番。
どうなるユウ!?
<本編>
僕の足が震えます。
そんなとき、後ろから、声が響きました。
「ユウキャンドゥイット!」
え。
それは、エリさんの声でした。
エリ「できます! ユウさんなら、できますよ!」
エリさんは、熱いまなざしで、僕のことを見つめています。

その瞬間です。
リオ先生の言葉が思い出されました。
リオ「落とすためには、落ちるしかないんだ」
………。
まさか。
確かにここで、ためらっている姿は、あまりカッコいいものではありません。
おそらく僕の印象は、さらに悪化することでしょう。
しかし。
逆にカッコよく飛び込めば、もしかしてずっといい印象を抱くこともあるのではないでしょうか。
そう。
リオ先生はそこまで考えて、バンジーをしたのではないか。
そう考えると、先生が飛び込んだ姿は、確かにカッコ良かったです。
脇目もふらず階段を登り、真っ先に準備をし、
「下には裸の美女が100人」とつぶやきながら飛び込んだ、という
………。
あれ、カッコ良かった?
思い切り自問自答しながら、そのことを思い出しました。
これが、理想と現実の乖離でしょうか。
しかし、そう言えば、思い当たる理論は他にもあります。
心理学では「吊り橋の実験」というものがあります。
吊り橋の上で被験者にアンケートを採ると、地上でアンケートを採った場合に比べて、
被験者が実験者に好意を抱くことが多かったのです。
これは、「吊り橋の上でのドキドキを、好意と勘違いした」と説明されます。
そう考えると、吊り橋の数十倍、いえ数百倍ドキドキする、このバンジージャンプ。
それによって起こる好意も、天井知らずのはずです。
そう。
これらの2つの理由によって、このバンジージャンプ、恋愛にかなりオススメなんです。
みなさんも、デートの際には、ぜひバンジージャンプを!
………。
なんか、「吊り橋の実験があるから、好きな女の子とジェットコースターに乗れ」という心理学テクニックを思い出しました。
そもそも一緒に遊園地に行ける仲になれないから苦労してるんだよ、みたいな。
そもそもバンジージャンプできないから、苦労してるんだよ、という。
うん。
短期間のあいだにそこまで無意識にツッコミつつ、僕は現実に戻ってきました。
これが、ウワサの走馬燈なんでしょうか。
なんで走馬燈に心理学理論とかツッコミとか入ってくるんでしょうか。
そういうものなんでしょうか。
僕はそこまで思いつつ、あらためて、エリさんの顔を見ました。
彼女は訴えかけるような目で、僕のことを見ています。
………。
そうだ。
僕が飛ばないと、ダメなんだ。
もちろん、いいところを見せたいのは、当然です。
しかしここで僕がためらっていたら、最後に飛ぶ彼女に与えるプレッシャーは相当なものになります。
そう。
僕は、彼女のために、飛ぶんだ。
人間が何かをする場合、「内的動機付け」と「外的動機付け」の2種類があります。
「楽しいから」
「怖いから」
「自分のために」
というのは、「内的動機付け」。
これは継続的なエネルギーを持ちますが、瞬発力はありません。
逆に、
「あの人のために」
「みんなのために」
というのは、「外的動機付け」。
長続きはしませんが、一瞬の爆発力はあります。
そう。
エリさんのために、僕はあえて、勇気をもって飛ぼう。
ただ、前に倒れればいい。
ただ、前に。
ただ。
ただ………。
「イエーーーーーーーーーーーーーース!」
係員の声が響きます。
僕の体は、地上に向かって、吸い込まれていきました。

さぁっ!
ついに飛んだユウ!
果たして彼がその直後に体験した、恐るべき感覚とは!?
さらに佳境です!
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●素敵イラストはソラさん
(女神)
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