精神科医ユウの日記モーニング女医。 【バリで落ちる女医。3】 | 九段下・渋谷・池袋・新宿・品川・上野・秋葉原★心療内科ゆうメンタルクリニック

精神科医ユウの日記モーニング女医。 【バリで落ちる女医。3】

バリで落ちる女医。3
これは、4人のドクターたちの日常を描いた愛と情熱の日記です。

<前回までのあらすじ>

「一緒にバリ島に行きましょう」
マヤのそんなセリフにだまされたユウ。
マヤ・エリ・リオ・ユウの4人の旅がついに始まる!

<本編>


リオ「エリちゃん、君は窓際と通路側、どっちがいい?」


あっという間に「ちゃん」です。
さすがです。


ここは空港のチェックインカウンター。
安いツアーのため、添乗員さんは存在しません。


渡されたのはチケットのみで、あとは自分たちで手続きをしなければいけません。


チェックインカウンターのお姉さんが作業をしているとき、リオ先生はエリさんに聞きました。

彼女は答えます。


エリ「やっぱり、窓際でしょうか…」

リオ「よし。じゃあ、彼女を窓際にしてくれ」


先生は係員さんに言います。


「かしこまりました」

エリ「あら、ありがとうございます」

リオ「マヤ、君は?」

すると先生は、言いました。


マヤ「私はファーストクラスがいいわ


先生、それ無理。

僕たち一同の気持ちが合わさりました。


リオ「うん。予想はしていた

マヤ「ありがとう」

リオ「それはそれとして、窓際がいいかい? それとも、通路?」


マヤ「そうね…。窓際だと、化粧室とかに立つごとに、いちいち通路側の人に、頭下げないといけないわよね…」


リオ「………」

エリ「………」

マヤ「だったら、頭を下げられる側の、通路側がいいわ

リオ「そうか」


その会話を聞きながら、エリさんは少し複雑な表情をし、つぶやくように言いました。


エリ「…あれは、私に通るときに頭を下げろって言ってるんですよね…」


僕は「その通りです」と心から思いながらも、


ユウ「い、いやいやっ! 考えすぎですよ!

と、明らかな嘘をつきました。


リオ「よし、じゃあ彼女を通路側にしてくれ」


「かしこまりました」


そして先生は、僕の方に向き直って言いました。


リオ「マド? ツーロ?


何その簡略化。


明らかな扱いの差に、僕は心から泣きたくなりました。

しかし、僕は考えました。


マヤ先生・リオ先生。

今まで何度も、この二人の問いかけには苦汁を飲まされてきました。
何気ない一言一言のほとんどに、すべてウラの意味があるんです。


そう。
すべてが、ワナなんです。

この問いかけだって、何かの意味があるに違いありません。


この場合、どう答えるのが一番なんだろう。


ユウ「………」

リオ「どっち?」


どっちだ。どっちだ。


窓側か。通路側か。
どっちが正解なんだ。

さあ、どっち?


ちなみに、あなたには分かりますでしょうか。
この答えが。








僕は色々と考えましたが、どうしても判断が出ません。
すると先生は言いました。

リオ「じゃあ、通路側でいいな?」

ユウ「えっ!」

リオ「じゃ、彼は通路側で…」

ユウ「ちょ、ちょっと待ってください! 僕は…ま、窓側がいいんです!


僕はつい反対を選んでしまいました。微生物としての直感です。
おそらく先生は、通路側にさせたいに違いありません。


リオ「分かった。窓側だな」

ユウ「は、はい」

リオ「よし。じゃあ、彼は窓側で、そして俺は…」

先生は係員の方に、何かを指示し始めました。




そして。
飛行機に乗ると。


窓から、エリさん・リオ先生・マヤ先生という並びに座っていました。
そして僕だけ、その後ろの列の、窓際の席になっていました。


図解すると、


エリ リオ マヤ
ユウ 他人 他人


という並びです。

何ですか。これは。

なぜ、僕だけ仲間はずれなんでしょうか。


実際にその飛行機のエコノミー席は、3 4 3という並びになっていました。

図解するなら、こんな形です。


○○○ ○○○○ ○○○


すなわち、一人が窓際を選んだ時点で、


●○○ ○○○○ ○○○


この左端(もしくは右端)しかなくなるわけです。
またもう一人が通路側を選んだ時点で、


●○■ ○○○○ ○○○


その左端から3番目の席になります。

そしてここで、リオ先生は、「窓側か? 通路側か?」と聞きました。

すなわち、ここで窓を選んだとしたら、


●○■ ○○○○ ○○★


この★の位置か、もしくは他の列にされるのは当然です。

また、通路側を選んだとしたら、


●○■ ★○○○ ○○○


この★に入るしかありません。

いずれにしても、離されます。

ここでリオ先生は、エリさんとマヤ先生の間に入ればいいわけです。


すなわち。
「窓側か? 通路側か?」の二択。



この答えは、「どちらでもない」だったのです。

もしくはあのとき、「いや、二人の間で」とか言えていれば。


もちろん僕の選択で、普通なら、
「離れてしまいますが、よろしいですか?」と聞かれるでしょうが、
そこからはリオ先生の口八丁で「大丈夫」と丸め込んだに違いありません。


全てが、ワナ

すべてが、ワナ。
そのことに気がついていながら、ここまでは考えが及びませんでした。





前の席では、3人が楽しそうに話をしています。


リオ「えっ! 本当に!? イギリスではみんなそうなの!?」

エリ「えぇ。特に私が中学生の時なんか…」

マヤ「エリってときどきすごいのよ。それがね…?」

エリ「ちょっ! ちょっと待ってマヤ!」

リオ「なに!? 聞きたい、聞きたいぞ!」

エリ「や、やだってばぁ!」


美女とリオ先生


………………。

楽しそう。



その上、自分の真下から、へんなニオイがします。

何でしょうか。この悪臭は。

そうです。
後ろに座った外国の方が、クツを脱いで、足を僕のイスの下に伸ばしていました。
素敵なニオイが、僕の鼻を突き抜けます。




天国と、地獄。


僕は一人寂しく、バリまでの飛行機の旅を楽しみました。


(つづく)


そして全員がバリ島で見たものとは!?
さらにリオを襲った突然の不幸とは!?

次回更新をお待ちください!


-----------------------------------


素敵イラストはソラさん

このシリーズを最初から読みたい方はこちら

モーニング女医全シリーズはこちら


新刊も発売です !

「モテモテ心理術」

モテモテ心理術