精神科医ユウの日記モーニング女医。 【バリで落ちる女医。2】
バリで落ちる女医。2 これは、4人のドクターたちの日常を描いた愛と情熱の日記です。 ![]() ![]() ![]() ![]() |
<前回までのあらすじ>
「一緒にバリ島に行きましょう」
マヤのそんなセリフにだまされたユウ。
そこにはリオが。
そして、突然後ろから、女性の声が響いた。
いったい誰なのか!?
<本編>
「…あの、失礼ですが…。あのときの方じゃ、ないですか?」
リオ「は?」
「ほら、確か、前のコンサートのときの…」
その声を、どこかで聞いたことがあります。
そうです。
バンドを組む女医。のときに一度あった、エリさんです。
リオ「き、君は!」
ユウ「あ、あなたは!」
エリさんは、その言葉に、あらためて僕たちの顔を見ます。

エリ「あー! やっぱりそうでした!」
ユウ「あ、はいっ!」
リオ「お、おおっ!」
エリ「………………………」
ユウ「………………………」
リオ「………………………」
エリ「………………………」
ユウ「………………………」
リオ「………………………」
エリ「ギターの方と、ドラムの方!」

楽器で覚えられてる。
ユウ「………ユウです………」
リオ「………リオだ………」
エリ「あ、いえ! 忘れてたわけじゃありませんよ?
ただ、そう、演奏がすごくインパクトあったので…。
覚えてますよ? ………えっと………ユ……オ………」
ユウ「………ユウです」
リオ「………リオだ」
エリ「覚えてますから!」
絶対に覚えてませんよね。
僕は心からそう思いました。
ユウ「で、どうしてここにいるんですか?」
リオ「そ、そうだよ! どうして君は?」
エリ「いえ、私は、今からバリに行くんです。みなさんは?」
ユウ「………」
リオ「………」
その瞬間、僕たちの心が一つになりました。
リオ「…俺も、だ…」
その言葉を聞くと、僕の顔がこわばりました。
ユウ「…僕もです…」
その言葉を聞くと、二人の顔もこわばりました。
エリ「うそっ! ひどいっ! そんなぁっ!」
ユウ「ど、どうしたんですか?」
リオ「何があった?」
エリ「だって、『いい男が来るから、一緒にバリ行きましょうよ』
って誘われたのに!」
ユウ「………」
リオ「………」
限りない沈黙が、僕たちを包みます。
エリ「これ、詐欺罪で訴えたら、勝てると思いませんか!?」
僕たちは、侮辱罪で訴えたら、勝てると思います。
エリ「ひどい…。私のこと、だましたんですね…」
リオ「俺だってだまされたんだ…。二人きりだと思っていたのに…」
ユウ「………」
ここは、マヤ先生被害者の会でしょうか。
リオ「いやまぁ、でも………」
リオ先生は、そう言いながら、エリさんの方をチラッと見つめました。
エリさん。
帰国子女で、現在はももんが医大で大学院生をしながら、カウンセリングのお手伝いをしています。
背は高くスリムで、マヤ先生とは違った魅力を放っていました。
リオ「これもまた、結果オーライなのかも、しれないなぁ…」
ユウ「…は?」
リオ「いやいや」
先生の気持ちが、痛いほど僕の心に響いてきました。
リオ「まぁ、モノは考えようだよ。みんなで言った方が、色々と楽しいかもしれないじゃないか!」
エリ「…まぁ、そうといえば、そうかもしれませんけど…」
リオ「俺とマヤと君の3人なら、きっと楽しいよ?」
うん。僕、まったくのアウトオブ眼中。
エリ「でも、マヤ、遅いですね…」
リオ「そういえば、そうだな…」
ユウ「………」
飛行機出発は、午後1時半。
普通は、11時半にはカウンターでチェックインをしなければいけません。
リオ「チケットとかは、誰が持ってるんだっけ?」
エリ「私じゃないですよ?」
ユウ「ぼ、僕でもありません」
リオ「………」
エリ「………」
ユウ「………」
一人しか、いない。
時間は刻々と過ぎていきます。
周りの人が片っ端からチェックインするのを、ただ横目で見る僕たち。
その途中、リオ先生が落ちていた携帯を発見して、カウンターに預けにいくという、本編とはまるで関係ないイベントまでありました。
リオ「あの持ち主が旅行から帰ってきたら、俺に感謝して、デートを…」
エリ「リオさんは、待ち受け画像が水戸黄門の携帯の持ち主とデートしたいんですね」
リオ「したくない…」
ユウ「………」
リオ「いや、冗談だよ!?」
エリ「………」
微妙なやりとりが続けられる中、僕たちはひたすら待ちます。
そして、時間が12時を過ぎたとき。
マヤ「何してるの! こっちよ! 早く! みんなそろってるわね!?」
声が響きました。
ほとんどだまし討ちみたいな旅を計画しつつも、そしてこんなに遅れつつも、まったく謝るということがない。
その声は。
もちろん、一人しかいません。
マヤ「ほら! 今回のツアー、4人そろってはじめて安くなるんだから!
一人でもキャンセルになったら困るのよ! 早く来て!」
リオ「………」
エリ「………」
ユウ「………」

それが、理由ですね。
僕たちの心が、一つになりました。
僕らは有無を言わず走ります。
そのとき、リオ先生がつぶやきました。
リオ「とはいえ、降って湧いた幸運か…」
さぁっ!
突然に始まった、女2男1犬1の危険な旅行!
今回、何かが起こる!?
待て、次回更新!
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<編集後記>
前回の、「この人物は誰か当てクイズ」、別に公募していたわけではありませんが、コメント書いてくださったみなさま本当にありがとうございました。
哉揆さん、レインさん、見事正解です。おめでとうございます。
それ以外にも素敵回答、本当にありがとうございました。
○美人リポーター(Ich liebe Deutschlandさん)
○ピラミッド頂上にいたのを見ていた青白い宇宙人(どう展開するんださん)
○オカマバーのママ(リオ先生に合掌さん)
○アテネで駆けずりまわったときに出逢った日本人の人(さるる23号さん)
モーニング女医を読み込んでいないと分からないこのマニアックな人々たち。
心から感謝です。自分も忘れていた人たちが。
宇宙人は出ていません。
○チェ・ホンマン(もはやバリ島関係なしさん)
はい。
それがあんな敬語で。
○院長(YOさん)
今まで出てきたことはなかったように記憶しています。
突然に。
○ソラ(みのさん)
これはすごい。なんか叙述トリックみたいな。
古典ミステリーみたいな。
挿絵を描いている方が犯人だった、みたいな。いや、犯人じゃないんですけど。
感動いたしました。
みなさま本当にありがとうございました。
というわけで、みなさま今後ともよろしくお願いいたします。
先の展開が読めた方は随時お書き込みください。
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●素敵イラストはソラさん
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「モテモテ心理術」
