一念に億劫の辛労を尽くす人にこそ、必ず大果報は又来る!ー企業価値の増大は国民の幸福に繋がる | 蓮華 with にゃんこ達

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専ら、マーケットや国内外の政治経済ネタが多くなってしまいました。
母と愛しい我が子達を護りつつ日々闘う中で思う事をアップしていきます。

まず初めに、2年目の3.11を迎えるにあたり・・・、

現在も行方不明になっている約2700名の皆様の消息が1日も早く判明される事、
そして、いまだ仮設住宅で暮らしておられる方々を含め、避難先で生活されている約31万5000名の方々など、復興半ばで厳しい状況が続いている皆様に、1日も早く、少しでも希望の見える日々が戻る事、
また、何よりも、大震災で命を落とされた多数の方々の御冥福、
を心より御祈り申し上げます。

一番苦労した人が、必ず一番幸せになる、『福光の春』が絶対に訪れる事を信じ、直接間接に僅かでも貢献させて頂けるよう、私自身も尽力したいと改めて強く思いながら、御題目を送ります。

では、本題に入りましょう。

先週水曜日、東証で開催された『企業価値を考える2013』というシンポジウムに出席してきました。

期待していた以上に良い内容で、色々と思う所はありましたが、特に議論の中で『資本コスト』が非常に多く取り上げられていたのが、素晴らしかったですね。

タイムリーに(笑)、つい先日このブログでも

 『『拙なき者のならひは約束せし事を・まことの時はわするるなるべし』-資本コストは株主への約束-』 http://ameblo.jp/yukiyagi7/entry-11479620138.html

と言う記事を書いていて、その中でも

 『日本では企業側も株主側もキャピタルゲインに注目し過ぎていて、資本コストという議論が非常に薄いと思います。』

と書きましたが、登壇されていたのは企業価値向上表彰で選ばれた企業3社でしたので、その辺の意識、そしてキチンと経営と結び付けている点が流石でしたね。

特にHOYA(7741)のCFO江間氏の御話で、Division毎の事業価値に至るまで、リスクに見合ったハードルレート(資本コスト)を基準値(ハイリスク・ハイリターンが8%、ミドルリスクが4%、医療などは6.5%など)とし、事業計画の立案や評価、さらに人事までに結びつけ、常にそれを上回る、『資本コストを乗り越える利益』の為の作戦、という視点を、あまねく社員に徹底させている所が特筆です。

ステークホルダーへの配分という意識が重要で、自己資本という表現は自己都合になってしまう、純資産を決算で1回全て株主に返還する、そして、今後はコレだけのスプレッドを創造します、という約束がOKになった上で、もう1回出資して貰う、という考え方であるとも。

トヨタもようやく重い腰を上げたと報じられた社外取締役も2003年から5名いて、グローバル・ヘッドクオーター(GHQ)はシンガポール、基本CEOもそちらに常駐し、ファイナンシャルHQはオランダなので、江間氏も普段そちらにいらっしゃるとの事。

そしてもう一つ大事な御指摘、ROEについて、以前ここの記事↓

 『今こそ基本のキ No.1 ープロフェッショナル・ファンドマネージャーの流儀ー』 
   http://ameblo.jp/yukiyagi7/entry-11416574797.html

の中でも、資本効率を見る&資本政策をチェックする上では優れた指標だけれど、最終的な投資判断、企業価値算定には使わない、と書きましたが、正に江間氏も、総資産の有利子負債が大きければ(=自己資本比率が小さければ)、その分レバレッジが効いてROEは高まる、というような、ある意味恣意性の問題点を特に挙げておられ、単純にROE高いから良いでしょ、と提示するだけの企業とは一線を画していましたね。(ROEは『いかがわしい』(笑)のでヤメタ、との事w)

ただ、勿論レバレッジを効かせる事が悪い訳ではありませんよ。

収益性の高い企業、もしくは、将来キャッシュフロー=企業価値の変動が少ない、つまりは事業リスクの低い企業は、株式より資金調達の機動性が高く、且つ、節税効果も活用出来る負債比率を上げる事で、資本コストは低下しますから、それで株主のリスク=リターンを上げるべきなのは当然の事ですね。(実際は逆の場合が多いですよね。借金は悪、みたいな観念が強いからでしょう)

江間さんも仰る通り『嘘をつかない』のは(事業活動から生み出される)キャッシュフローである、そしてそれを拡大させる=企業価値を向上させる為に最適な資本構成というのは、それぞれの企業で全く異なります。

他にも『オフバランス項目が企業価値を作る面が大きい』とか、『株のボラティリティがリスクという考え方はおかしい』とか、ボソッと言われた言葉が、とても印象的&共感しきりでした。

業を企てる経営の世界と異なり、投資の世界ではリスク=不確実性、ボラティリティがリスクとされますね。それがプラスであれ、マイナスであれ、変動が大きい事がリスクの拡大とされる訳です。

ボラティリティの増大=変化する事がリスクという感覚は、基本的にオカシナ話で、マーケットの変動によって価値から価格が乖離して下落した場合などは、むしろリスクでは無くチャンスです。

ただ、短期の価格変動だけで投機的に動くような投資家(と言えるかどうか・・・)によって、価値と乖離した株価のブレが作られたり、それによって企業価値を毀損するような状況になる事はリスクというか、害悪でしかないですね。

今回大賞に選ばれたのは、ユナイテッドアローズ(7606)でしたが、ここも、それから、米クアルコム、SHOEI(7839)、など最近の記事で取り上げた3社全てに共通しているのは、一時は企業の存続も危ぶまれるような危機(SHOEIの場合は、実際に会社更生)に陥って、そこから必死に自らの存在価値を問い直し、復活の為、腹を決めて、如何に企業価値を向上させるかを全社一丸となって真剣に模索したという事です。

正に苦難があったからこそ大きく変革出来た、という証明ですね。

私が良く言っているのは、塵も積もれば山となる、なんて嘘っぱちで、塵はどれだけ積もっても埃の塊になる位ですよね。
激しい地殻変動があって隆起するから山は出来るのです。
その変革によって生み出される企業価値の変化をシッカリと評価してこその投資家の存在意義なのですよね。

常若(とこわか)と言う言葉もパネリストの伊藤邦雄一橋大学教授から出されましたが、常に変化し続ける事が常に成長して生き続ける事に繋がります。
ゲーテは『ファウスト』の最後で、『すべて移ろい行くものは、永遠なるものの比喩』と言っています。
機を知り、時を知って、変化を恐れず進まねばならないのですね。

さて、先々週末に出されたバークシャー・ハサウェーのアニュアルレポートにも少し触れておきます。バフェットも、

『今日、誰かが木陰で涼をとれるのは、ずっと昔、誰かが木を植えておいてくれたからである』

と言う言葉で恩師ベンジャミン・グレアムと、彼が生み出してくれたバリュー投資の基本概念を称えています。

ですが、『時代遅れの原則は、もう原則でも何でもない』とし、時代に則した、将来の『成長』=変数、もバリューとして換算する、ようなアプローチへと、積極的且つ柔軟に変わってきています。それはLBOを行うなど、80歳を超えた今も続けられている事が良く分かります。
特にそうした変化を見ていきたいと思います。

投資スタイルの変遷、という事では、事業買収に乗り出してから、90年代以降は投資対象の企業規模も大きくなり、政府公務員の保険会社、GEICOを完全子会社とするなど、マイノリティー投資ではなく、100%企業買収、良い経営陣による良い会社、の取得を進めていきます。
特に家族経営の優良企業、が多く、イスラエルの工具会社Iscarなどもありましたね。

以前はキャッシュを生み出す事業、というポイントを最重要視していたようですが、そこから、キャッシュを有効に再投資出来る、より多くのキャッシュを投じることが出来、そこから価値を創造できる事業という方向性に広がってきていると思われ、以前記事に書いたような発電事業↓

 『Facebook投稿記事より62ーバフェットによる太陽光発電プロジェクト買収について』 http://ameblo.jp/yukiyagi7/entry-11443865282.html

などもそうですが、つい先日燃料をディーゼルから天然ガスに切り替えるいうニュースが話題になったアメリカ最大の鉄道運営会社、BNSFなどへの投資もあります。

アニュアルレターの中では、保険以外の5大事業を、『Powerhouse five』(BNSF、Iscar、Lbrizol、Marmon、MidEnergyの5社)としていて、昨年は101億ドル(前年度6億ドル)の収益をあげたそうです。

ちなみに、同社は米国海軍に次ぐディーゼルオイルの消費者という事で、1ガロン3.97ドルのディーゼルに対し、天然ガスはシェールガス革命の恩恵で、僅か48セントだそうです。

ただ切り替えには、かなりの初期投資が必要なので検討中との事で、他にも天然ガスで走る機関車をGEやキャタピラーが開発していて、初期テスト段階では、ディーゼルよりも燃費が良く航続距離も長いなどと報じられていました。

話を戻します。

さらに、傘下の企業も小規模の買収を積極的に行っているそうで、その数は1995年以来130件にも上り、昨年度も、26社、23億ドルのbolt-on買収を実施しており、バフェットとマンガーによれば、子会社による買収はリスクも手間も少なく素晴らしい、と書かれていました。

そうした投資スタイルの変化に沿った3Gとのハインツ買収については、大型買収がなかなか出来なかった一年の中で、満足のディールだったようですね。

上述の記事で触れたように、AB InBev同様の、コスト&負債を削減後、積極的な買収を行う見通しの中、キャンベルスープや医薬品シフトを進めるReckitt Benckiser社が売却を志向しそうなマスタード事業など、が候補になると見られています。

後継者とされているTed Weschlerなど二人の新しいPMはS&P500指数を2桁以上上回る実績をあげたので、アニュアルレターによれば、バフェットは置いてきぼりになった(笑)そう。

投資の中核をなすBig Four(Amex、Coca-Cola、IBM、Wells Fargo)もパフォーマンスは好調で、Wells FargoとIBMは買い増し、Coca-ColaとAmexは自社株買いを実施して持ち分が高まったとの事。

そして、多くの企業が設備投資を控える中で、バークシャー傘下の企業は昨年98億ドル、前年比19%増の設備投資を実行したそうです。もし、不透明な先行き懸念で実施出来ない大型投資案件があれば是非バークシャーに御電話を(笑)とのコメント。

昨年の5月に書いた記事でも取り上げた28社の新聞社買収については、発行部数、広告収入、利益は下落が予想されていて、それぞれも非常に小型の案件だが、記事にも書いた通り、地方紙の存在意義に鑑みて、慎重なインターネット戦略などによって、事業の継続が可能と考えているという内容でしたね。

そして大切な資本政策に関する提言の部分で、以下の通りです。

黒字企業の経営者は、資金の使い道として、まず自社の既存事業に対する投資を第一に考えるべきで、効率化、地域拡大、商品ラインナップの拡充・改善、他社に対する競争力強化などの観点に照らした投資をキチンと検討しなければならない。

その上で資金余力があれば、次は買収を検討すべき。その際には、買収によって、株主の1株当たりの価値を増やす事が出来るかどうかである(素晴らしい!)。

その次の使い道が自社株買い。自社株買いはその時点での株価が非常に重要で、保守的に計算されたIntrinsic Valueに対し、十分割安である時のみ行うべきである。

自社株買いは、賢明な資金活用として確実な方法ではあるが、Intrinsic Valueよりも高い値段では、当然企業価値を棄損させてしまう点に注意を要する。

最後の手段が配当である。彼の基準は、ROE12%、再投資利回り12%で株式を売却するという前提なので、配当よりも、定期的な株式売却の方が、投資家にとって優位になるとしています。
それこそが、配当を払わずに、保有株式の4.5%を毎年寄付している理由ですね。

今年の株主総会には、何とバークシャー株の空売りをしている投資家、シーブリーズパートナーというヘッジファンドのDoug Kass氏を招待して、パネルディスカッションするそうです。CNBCの電話インタビューによれば、Kass氏が同社を売る理由の一つが後継者問題だそうです。
相変わらずオープンで、やる事が新鮮ですねえ。