経営者は、常に屍を越えてゆけ~い、って事ですな | 蓮華 with にゃんこ達

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専ら、マーケットや国内外の政治経済ネタが多くなってしまいました。
母と愛しい我が子達を護りつつ日々闘う中で思う事をアップしていきます。

格下げ以降Nokiaについて書かれているコメを何度か見かけます。最近のCNETの記事(@『Apple, Samsung put hammerlock on smartphone profits-CNET (2012/5/4)』)では、携帯市場の「Profit Pool」 =グローバルの業界利益、の各企業シェアの変遷がグラフで出されています。直近の2011年第4四半期は、アップルが73%、サムスン26%、台湾のHTCが1%です。

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Credit: Asymco; Through: CNET
※SE =Sony Ericsson、RIM =Research In Motion(ブラックベリー)、Sam =Samsung。

これで見ると確かに、2007年頃には、6割近い利益を確保してNo,1だったNokiaが、スマホ隆盛の流れの中で凋落していった事が明確に分かりますね。

思い起こせば(?笑)、私が初めてフィンランドのヘルシンキに出張し、まだ欧州以外では全く無名だったNokiaを訪問したのは20年以上前、80年代後半でした。
当時、欧州で自動車電話(懐かしいですね~)の売上シェアが8~9割と聞いて調査に行ったのですが、そもそも同国でちょっと郊外や田舎にドライブすると雪や氷で立ち往生というか身動きが取れなくなってしまう事が多いので、その際の連絡手段として画期的、と国内で爆発的に売れたという、如何にもローカルなニーズに応えた所がスタートだったんですよね。
日本でも当時バブリーな高級車に付いてましたなあ(^▽^;)

余談ですが、フィンランドはこじんまりと可愛い小国で、当時はまだドイツに対するアレルギーも根強くて(今はどうなんだろう?)、とても親日的でしたね。それこそVAT(消費税)が高い中で、ゲイシャチョコレートというのが日本人定番の御土産、酔っ払いの事をフィンランド語でヨッパラッキと言うんだよ、というのが、親しくなる際の『つかみ』でしたー(笑)

さて話戻りますが・・・Nokiaも、iPhoneの勢いが爆発的になる中で、独自のスマホ向けOS開発とか、Microsoftとの共同開発(これは結構最近まで期待されていた)とか、色々と模索して何とかトップラインの主軸をそちらにスライドさせようとしていたんですよね。でも、結局は独自OS戦略は成功せず、ヒット機種を出せずに終わってしまった。今回のシェアがハッキリと示した通り、要は『一人勝ち』ビジネスモデルの中でデファクトを取れないまま負け、但しそれまでの開発コストだけはシッカリかかってしまった訳で・・・。

ちなみに、Nokiaのシンプルな携帯は、新興国ではまだそれなりにシェア(売上、当然利益は薄い)を取っていますが、一方で、iPhoneの中国での伸びがいまだに勢い衰えず、クローン天国の同国でも iPhoneだけは本物でなければならない、とされている(=利益が厚い)のが、正にBrand Loyaltyが別格なAppleの強みなんでしょう。

特にAndroidデバイス(ここで言えば、HTC、LG、Sony Ericsson、Samsungがその陣営)については、Google Phoneも随分注目はされていましたが、結局フラグメンテーション(分断化、バージョンやカスタムUIの乱立)問題に常に悩まされて、Googleも枝分かれを制御できてない状況なので、結果的にAndroid 向けのアプリケーション開発のコストパフォーマンスの悪さとなり、開発投資への意欲を削いでいますよね。

要は、新バージョンが出たと思ったら次のバージョンが出て、複数のバージョンが市場に並行してくるので、イチイチ対応するアプリを開発してたらキリが無い。iOSだったら大体のユーザーが最新版にアップデートするって開発者もアテに出来るけれど、Androidのユーザーは分かれちゃうから、どこのニーズに合わせるべきか、そんな事考えてられっか!って感じになっちゃう...。

その一方でiOSデバイス側(iPhoneとiPad)は好調で売れ続けている訳ですから、開発者がAndroidを離れiOSに向かう動きが更に加速する=魅力的なアプリが集中する、のは至極当然の成り行きで悪循環ですね。

さて、その開発体制も含めて不評なGoogleでは少し前に幹部だったジェームズ・ウィテカー氏が書いた「Why I left Google」が話題になりましたよね。

それによれば、ラリー・ペイジ氏がCEOに就任してから社風が変わって、有名な『20%の自由時間(勤務時間の2割を好きな開発に使える)』もないがしろになる中で、FacebookなどのSNS台頭に焦って必死にGoogle+を全社挙げて取り組ませたけれど全く食い込めず決定的な敗北を喫してしまった為、飯のタネである、ページ内容にマッチした広告を表示する「クローラー型広告ビジネス」で補填しようとしたものの、結局こちらも、SNSの内部のコンテキスト情報によって、より読者のニーズにマッチした広告を表示する「ソシアル広告ビジネス」に取って代わられてきている訳で・・・。

NokiaもGoogleも、一時のエクセレントカンパニーの凋落、栄枯盛衰、諸行無常・・・

以前の記事(@『Loyaltyを生み出すモノヅクリ・・・と、『愛情も戦略も不在の敗戦』』)に書いたように、業界内で勝つ為のモデルが変わってくる事は多いですね(まあ日本の電機については、それ以前の問題のような気もしますけど)。勝ち組だった企業が、自社のモデルに固執、或いは転換に上手く対応出来ずに負け組となってしまう事は頻繁に起きます。
Nokiaにしても、1Gの王者Motorolaから、2G・3Gに移行する過程でその地位を奪ってきた訳ですしね。

さて、日本ではビックカメラがコジマを買収。一時は家電量販店売上1位だった同社がヤマダ電機に敗れて久しいですが、同社のキャッチフレーズを揶揄したツイートが(笑)。

「おい!コジマ!どうして諦めるんだ!そこで!お前言ったよな!?安値日本一に挑戦するって!自分をお買い得にしてどうするんだ!?もっと熱くなれよ!」(@shuzo_matsuokaさん)

でも、その圧倒的トップのヤマダ電機も、2012年3月期の業績予想下方修正。
まあ理由として挙げられているエコポイント終了と地上デジタル放送特需剥落によるテレビ販売不振などは同業他社共通で、どこも軒並み下方修正なので驚くには当たりませんが・・・。

ヤマダの戦略について特徴的なのは、やはり粗利率改善にかなり注力して来た点でしょうね。
モチロン基本のキですが、粗利率改善方法には、在庫の圧縮(適正化)、仕入条件の改善、仕入先の再評価と適正化、仕入方法の検討、等がありますね。
同社も、3年ほど前からキャッシュフロー改善向上策と銘打って、(1)店頭や商品別の在庫圧縮、(2)商品の選択と集中による粗利益の改善、という施策を掲げて進めてきました。

そもそも家電量販店は、期末に商品を大量に発注して、メーカーからまとまったリベートを獲得する事が慣習で、一括して仕入れた商品が売れ筋商品で無かった場合、恒常的に不良在庫を抱える事が頻繁にあったんですね。

それに対し、同社はメーカーとの取引関係も含め、ここにメスを入れて期末仕入れを削減させるなど、大量商品発注でリベートを獲得する(=数字を作る)よりも在庫圧縮、商品の選択と集中による収益力の向上を優先し、これまで営業キャッシュフローの増加や粗利率改善に繋げてきた訳です。

特にこの間(3年)、出店ペースは落としていない中で在庫を減らしてきているので、かなり積極的に行ってきた事が分かります。

日本が「少子高齢化」「人口減少」の流れにある事、つまり長期的な需要総量が減少するということは自明の理で、「人口増加」「高度成長」下でひたすら追求してきたサイズの大きさは、もう企業価値には結び付かない訳です。

簡単に言えば、今後「市場規模が小さくなる」中では、①IC(投下資本)を小型化し②WACC(加重平均資本コスト)を低下させ、③ROIC(投下資本利益率)を上昇させる、という企業価値を創造する方向にシフトしなければならないという事です。
ちなみに、増収増益でも価値破壊を起こしている企業は、結構ありますよね。

ヤマダはスマートハウス事業強化の為にエスバイエルを去年買収してます。今後「家電量販」というメインビジネスの需要が落ちていく中で収益力の向上という質の面のテコ入れをしつつ、こちらは省エネや震災復興というテーマも相俟ってシナジーは出易い気がしますね。

それこそ、自社のモデルを上手く転換し、トップラインの主軸をスライド、或いはシナジーを生み出す別軸を確立していけるか(或いは・・・)、経営手腕が問われる所なのかもしれません。

諸行無常の響あり・・・にちなんで、昨日も見ました、NHK『平清盛』。
視聴率悪いらしいけど、面白いですよ。少なくとも学芸会並みの前作よりは何倍も。清盛は経済人には人気ですね。私も源氏より平家派でございます。

今日はギリシャに敢えて触れず・・・。まあね、皆さん色々書いてるし(笑)

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