初恋リセットAS後編(238) | 恋愛小説『初恋リセットAS』

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「この業界で生き残ってるやつなんて、誰も人を信用しない。人を疑うことしか知らず、たまに優しい顔を見せりゃ、金だの権利だの、かすめ取ろうとする奴らばっかだ」

「マジで、白井さんって人は最悪ですね」

「いや、みちあき、俺も同じだよ」

「え?」

「俺だってそうさ。この世で信用できるものは『金』だけだって思ってる。だから俺も生き伸びてこれてんだ。ここじゃ、先に情を見せたほうが負けるんだよ」

「確かに・・・俺も最近、身に染みてるな」

「なぜだかわかるか?」

「え?」

「なぜ、この世界の奴らは、人を信用できないかわかるか?」

俺は及川の質問に、反応できず、小さく首を横に振った

「小心者だからだよ。俺もそう、白井さんもそう・・・。ここで生きてる奴らはみんなそうだ。気が小さいから、人を疑う。そして、自分を強く見せたがる・・」

「俺は、及川さんは違うと思うけどな」

そう答えると、「わかっちゃいないなぁ」と、今度は及川が首を振り、「気が小さくて用心深いから、白井さんも俺も、生き残ってんだよ・・」と続けた

確かに、及川にそういう一面があるのは、わかってる

初めて出会った頃の及川なんて、猜疑心が服を着て歩いているようだった

でも、あきねの母親の命を救った及川も知っている

俺のことを友だちだと、言ってくれた及川も知っている


「なぁ、みちあき」

「はい?」

「俺は、お前が今日、なにをいいにきたか、だいたいわかってるつもりだ」

「・・・はい」

きっと、ゆうきさんが、それなりに伝えてくれたんだろう

「だからな。今日が最後になるかもしれないからな・・」

珍しく及川が、言葉を止めて、小さく息を吸い込んだ

そして、しっかり俺の目を見て言った

「だから、今日は、俺がどういう人間か、ちゃんとお前に伝えようと思ってな」

「え? 俺は及川さんのこと、結構わかったつもりになってたんですけど・・・」

「いや、まだお前は、全然、わかっちゃいねぇよ」

「・・・・・」

「だから、今から俺が、それを教えてやる。お前が片足突っ込んだこの世界がどんなところで、そして俺がどんな人間か教えてやるよ」

そう言った及川は、今まで見たことのない顔をしていた

それは、俺が初めて見た、及川の「素」だったのかもしれない

「ゆうきは、俺の女だ・・」

「え?」

「ゆうきは、最初から俺の女なんだよ・・」

「最初からって、いつから?」

「お前や瀧がゆうきと出会う、ずっと前からだ」


[はじめから]

[登場人物]