初恋リセットAS(203) | 跡地~想い出のブログ

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2011年5月から2012年9月までの想い出です


恋愛小説『初恋リセット』




「みちあき、ここからだと、どこの救急病院に運ばれるんだろう?」

「うん、ちょっと待って」

俺は慌てて携帯電話で、周辺の救急病院を検索した

「神泉には救急病院はないな。該当の病院は3ヵ所あるけど、一番大きいのは、渋谷総合病院かな」

「ま、また、渋谷かよ」

「とにかく、急ごう」

「そうだな」

俺と及川は、またタクシーを捕まえた

「運転手さん、渋谷総合病院だ」

及川は、それだけ言うと、目を瞑ったまま黙っている

ドアノブについていた血

及川と俺の不安は、たぶん同じだった

(及川、相当、動揺してるな。ここは俺が、冷静にならないとな)

病院に着いて、タクシーを降りるなり、及川は駆け出していった

「午前中から、救急で運ばれた患者、全部教えてくれや」

「申し訳ございませんが、患者の方の個人情報は、お教えできない規則になっております」

受付で及川が、いきなり無茶苦茶なことを言っている

俺は少し遠くから、そんな及川をじっと見ていた

及川が狼狽すればするほど、冷静になっていく自分がいた

(俺が、しっかりしないと)

俺は、及川を無視して、外来へと足を運んだ

「すみません、昼頃、救急で運ばれた早川の親戚の者ですが」

「少々、お待ちください」

事務の女性が、軽く微笑んで、リストに目を通している

「早川様は、別館の710病棟、外科9号室に入院されています。ご面会ですか?」

「はい」

「では、ここに氏名、住所をご記入の上、このバッジをつけて、ご面会ください」

早川みちあき

面会表に、嘘の氏名を書いた

(やはり、ここに入院してるんだ。面会できるということは、謝絶にはなっていないということか。少なくとも、重症とか重体じゃなさそうだな)

この状態で冷静に思考する自分が、少し不思議だった

(及川、どうしよう?)

今、あいつの連れと思われるのは、面倒だな

ひとりで行くか

俺はエレベーターに乗り、7階のボタンを押した

病室で寝ているのは、あきねの母親なのか、それともあきね自身なのか

7階に着いて病室へ向かう風景

そして、病院独特のこの匂い

廊下の窓から、夏の暑い陽射しが射し込んでいた

710病棟、外科9号室

(ここか・・)

ドアの前で、大きく深呼吸をした



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[登場人物]