初恋リセットAS(178) | 跡地~想い出のブログ

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2011年5月から2012年9月までの想い出です

恋愛小説『初恋リセット』




俺は少し考え込んだ

及川はいつになく真剣だ

おそらく、俺に問うことで、今までの自分を本気で見つめ直そうとしてる

安易には答えられないと思った

「及川さん」

「ん?」

「俺、思うんですけどね。なんだかんだ言ったって、みんな金は好きじゃないですか」

「まぁ、そうだな」

「及川さんと一緒にいて、自分にも金が入ってくるなら、人は『結局、金のためじゃん』とは言わないと思うんですよ」

「そうなのか?」

「『結局、金のためじゃん』ってのは、いわゆる捨てゼリフかなって」

「捨てゼリフ?」

「本音は、俺も金ほしい、だと思うんですけどね」

「そういうもんなのか?」

確かにさっき、及川が言った通りかもしれない

俺は、及川があまりに人の心がわからないことに、驚き始めていた

「ちなみになんですけど。及川さんはそいつらに、ちゃんと金を渡すようにしていたんですか?」

「もちろんだ」

及川の自信たっぷりの返事が、逆に不安になった

「どんなふうに?」

「最初はな、ゼロから出会いサイト立ち上げたんだ。サクラやってた何人かで、金出し合ってさ」

「なるほど」

「あとは、普通にみんなでサクラやって、成績に応じて金分配してたんだけどな」

「おかしいな。それじゃ、なんの問題も起きないはずなんだけどな」

「そうだろ?」

「及川さんだけ、余分に金、受け取ったりしなかったんですか?」

「してねぇよ。あえて言うならシステム費くらいだ」

「システム費って?」

「出会いサイトのシステムは、俺がひとりで全部組み上げたんだ。だからその金はもらってたぜ」

「どのくらい?」

「店の売上の6割だ」

「は?」

「だから、6割だ」

「なんで?」

不安そうな顔をする俺を尻目に、及川はまた鞄から電卓を取り出した

「なんでってお前、そりゃ正当なんだぜ。まずそのシステム組むのにかかった俺の人件費がこうだろ?それとこのシステムの一般的な相場はこんくらい・・」

その後、長々と及川の説明が続いた

電卓を叩く及川の手つきに、妙な嫌悪感を感じている自分に気がついた



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