「ごめんなさい・・」
俺の腕の中で、あきねの小さな声が聞こえた
「なんで、謝るの?」
「もう好きになってます・・・」
「・・・」
「ごめんなさい・・も、もう、好きになってますから・・・」
あきねの身体が悲しいくらい震え始めた
俺はなにも言わず、そっとあきねを包み込んだ
「はぁ・・・はぁ・・・」
自分の感情を言葉にしたせいだろうか、あきねが小さな溜息を何度も繰り返す
俺はあきねが泣き止むのを、ただ静かに待っていた
真夜中の街
人通りはほとんどない
時折、車が俺たちの横を、寂しそうに通り過ぎていくだけだ
上からあきねを見つめた
俺の胸に顔を押し当てて、まだあきねは泣いていた
あきねの肩にそっと手を当てて、少しだけあきねを引き離した
泣いている顔を見られたくないのか、あきねは強く目を瞑ったままだった
俺は少ししゃがんで、あきねに目線を合わせた
「こっち見てよ」
「だって・・だって・・・」
そっとあきねの唇に、自分の唇を被せた
あきねの腕が俺の首に絡まってきた
「・・ん・・・・ん・・・・・」
泣き声のような、少し高いあきねの声が漏れる
初めて触れ合った唇
そして、初めて通い合った心
俺がゆっくり唇を離すと、いっぱい泣いてしまったあきね
ありのままのあきねがそこにいた
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