「みちあき、く、苦しいよ」
あきねにそう言われて、俺は思わず手を緩めた
なにをしているのかわからない、そんな状態になっていた
「これも仲良しの証拠なの?」
「そ、そうだ」
「さっきカラボで抱きしめられたのは、あたしも泣いてたからまぁいいとして」
「・・・」
「100歩譲って、手を繋ぐのもいいとして」
「・・・」
「でも今のはなに?」
「ご、ごめん」
あきねが俺を少しばかにしたような顔で笑った
「なんか、みちあき。ちゃんと答えられなくなってるね」
「・・・」
「いつもと違って、おかしいね」
そう言われて、俺は返す言葉もなかった
「あきね、なんか性格変わってないか?」
俺がそう言うと、あきねが急に視線を外して伏目がちになった
「こっちがホント」
「え?」
「こっちがホントのあたし・・・」
「・・・」
「ホントのあたしはすっごい嫌な性格してんの。ホントは自分で自分が嫌で嫌でたまらないんだ」
「・・・」
「意地悪で、根に持って、暗くて、じめじめしてて・・・最悪なんだよ、あたし・・・」
「・・・」
「だからさ、そうじゃないように、そうじゃないようにって、色んな性格作ってたら、もうどれが自分かわからなくなっちゃって・・・」
あきねは下を向いていた
きっと俺に顔を見られるのが嫌だったんだろう
涙がぽたぽたとアスファルトの上に落ちていく
俺はしばらくただそれをじっと見ていた
頭の中で考えることは、なにもなくなっていた
強い衝動だけが、勝手に言葉になった
「好きって言うのはさ」
「え?」
「全部好きだから、好きなんだよ」
「・・・」
「性格がどうだこうだとか、ここがいいとか悪いとか、そんなの関係ねぇんだよ!」
「・・・」
「俺が好きって言ったら、絶対に好きなんだよ!」
俺はうつむいたままのあきねの身体をそっと引き寄せた
「いいから、黙って俺を好きになれよ」
あきねの耳元で、そう囁いた
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