サクラの仕事を終えた後、俺はゆいさんの家にいた
とはいっても、もう前のように時間に余裕があるわけでもない
学校に通い、サクラの仕事をすると、俺に与えられた勉強時間はわずか4時間しかない
当然、俺はゆいさんの家でも、机を借りて受験勉強をしていた
そんな俺にゆいさんが甲斐甲斐しくお茶を入れたりしてくれる
ゆっくり言葉を交わす時間もないのに、それでもゆいさんは俺を迎え入れ支えてくれる
もう前のようにゆいさんとの関係を面倒くさいと思うこともなくなっていた
いやむしろ、献身的なゆいさんの愛情に触れ、俺は心のどこかでゆいさんとの未来を考えるようになっていた
深夜1時、俺が勉強を終えてリビングに戻ると、ゆいさんがこっちを見て笑っている
春が来てこたつは片づけられ、普通のテーブルが置かれている
「おつかれさま、みちあき」
「ゆいさん、まだ起きてたの?」
「当たり前じゃない。あたしはみちあきの力になりたいの。あたしだって高校生のみちあきを見たいよ」
「ありがと」
最近、ゆいさんのストレートな愛情に照れることが多くなった
「それで成績はどんな感じなの?」
ゆいさんが心配そうな顔で俺に尋ねる
「うん、4月になってやっと受験勉強始めた感じだからね。今はまだなんとも・・・」
「そっか、あせっちゃだめだよ。みちあきは頭いいんだから。集中していけば、必ずなんとかなるよ」
「うん。でも不安にならないでいられるのは、ゆいさんが居てくれるおかげだよ」
「みちあき・・・」
ゆいさんの顔が少し赤くなる
でも、俺の言葉に嘘はなかった
今は俺の素直な気持ちも、ゆいさんにストレートに届いているような気がした
サクラの仕事をしていることも、ゆいさんには正直に話していた
山田社長の仕事を受けていても勉強する時間は作れない
俺の苦しい状況をわかっているからか、ゆいさんはあまり反対しなかった
「ねぇ、今日はみちあきにお願いがあるの」
俺がテーブルに腰かけると、ゆいさんが真剣な顔をして俺に言った
思いつめるような表情で、ゆいさんが俺を見つめる
「なに?」
「これをみちあきに使ってほしいの」
ゆいさんが俺に分厚い封筒を渡した
「なに?これ」
「今日、降ろしてきたの」
「え?」
「200万入ってる・・」
「え、えーっ!」
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