「実は昨日営業会議をやったんだが・・」
「それで?」
「これ以上、営業を続けるのは効率が悪いという結果が出てな・・」
「それで?」
「なにか他のサービスを売るとき、ついでにクライアントに見せるくらいしか、これからはできない」
山田社長は少しバツが悪そうにそう言った
「ありがとうございました」
「・・・」
「社長からは最初から目標販売本数は10本だって伺ってました。今9本ですから、ほぼ予定通りですよね」
「まぁ、そうなんだが・・」
「僕が文句を言える筋合いじゃないです」
俺がそう言うと、しばらく時間をおいて山田社長が言った
「川田君、大人になったな」
「社長のおかげですよ」
これは本音だった
「ただ、悪い話ばかりでもない」
「え?」
「川田君の実力はこれでよくわかった。君に別に頼みたい仕事がある。受けてくれるか?」
「まぁ、話の内容によりますけど」
「そ、それはそうだな」
俺がもっと喜ぶと思ったんだろう
山田社長は少しがっかりしたように返事をした
「システム開発の細かい内容は水崎さんに伝えてある。それを聞いてから返事をしてくれ」
「わかりました」
俺はそう言って、あっさりと電話を切った
(仕事で今、ゆいさんに会いたくないなぁ・・まぁ、贅沢も言ってらんないけど)
そんなことをぼんやり考えているとき、携帯の着信音が鳴った
及川だ
そのとき、俺の顔は笑っていた
本心がこう言っている
俺が仕事がしたい相手は山田社長じゃない
こいつだ!
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