「一番悲しかったのはさ」
「うん」
「バレンタインなんだ。小学生のとき・・」
「・・・」
「みんながクラスの好きな男子の話しているとき、りなは誰が好きなのって聞かれてさ・・」
「うん」
「そのままひとりでトイレに駆け込んで泣いた」
「・・・」
「そのとき初めて自分がみんなと違うって気づいたんだ」
「うん」
「あたしにはあいつがいるから、育ててもらってるから・・他の人好きになっちゃダメだってわかってた・・でも・・」
「でも?」
「悲しかった・・」
「うん」
「そのときの気持ち、無理やり心の中に押し込めたの。でも、ホントはいっぱいいっぱい悲しかった」
りなはそう言って俺の方を向いて笑った
遠くに見える景色とりなの笑顔が重なって、愛しい気持ちが溢れだした
俺はそっとりなを抱きしめた
「りな、泣いていいよ」
「でも、もうゆきとの前で泣いてばっかりだから」
「いいから」
こうやって、りなの心をひとつずつ開いていくこと
今の俺にできることは、それだけだと思った
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<登場人物>