夏翔麗愛
「そろそろ時間なのですよ~?」

「……」


俺様はそんな妹の声に目を覚ます。
とりあえず体は動くな…痛みも殆ど無い。
呼吸は正常…精神も問題無いな。


「…やれやれ、連戦となると面倒なモンだな」

夏翔麗愛
「何言ってるのです!  2時間も休んだんなら十分でしょう?」


夏翔麗愛は軽々と言ってくれるが、こっちはこれでもギリギリなんだがな?
まぁ自業自得なのは理解してるが、後先考えてたらこの結果にはならなかった。
詰まる所、全部姉さんが悪い!
あの負けず嫌いな性格、いつからなんだか?

俺様は重たい頭を抱えながら大きく息を吐いた。
そして次の相手を想定して更に頭が痛くなる。
相手は瞳と土筆…か。



………………………



舞桜
「藍ちゃん、大丈夫?」

「…お前が心配する様な問題じゃない、それよりもお前は大丈夫なのか?」


俺様は軽く睨む様に言って確認する。
すると舞桜はため息を吐きながら呆れた様にこう答えた。


舞桜
「その言葉はそのまま返すわよ?」

「…ふん、なら良い」
「さっさと行くぞ、今度はお前の働き次第で勝敗は変わるからな?」


俺がウザそうにそう言うと、舞桜は顔を引き締める。
良い顔だ、こういう時すぐに頭を切り替えられるのは実戦向きだろう。
舞桜は想像以上に役に立ってくれてるからな…



………………………



「……」

土筆
「あ、来ましたよ!」


相手は既にスタンバイ済みであり、どうやら待たせていた様だ。
見ると瞳はダメージも回復してるみたいだし、服も新しくなってる。
似た様な服をいくつも持ってるんだろうな…
対する俺様の服は前の戦闘でボロボロ…つっても、肌が露出してイヤン!な訳でもないから気にもせんが。

土筆は当たり前だが無傷…まぁ相手がアレじゃあなぁ~


「待たせたな、ならすぐに始めるぞ?」


俺様はそう言ってすぐに指パッチンしてフィールドを変える。
今度はわざわざリクエスト聞かない、無駄な時間も浪費したくないしな…
場が切り替わると、そこは単純なリング。
約10m四方の真四角な奴だ…端にはちゃんとロープも4本設置してある。

現実のと比べたら結構広めだが、まぁ素人にとっちゃそんなに気にはならないだろ。


「…ボクシングのリングみたいな感じですか?」

土筆
「そうなの?  何かマットは妙な踏み心地だけど…」


土筆の違和感は正解だ。
このリングのマットにはプロレスと同様にバネが仕込んであるからな。
投げ技や飛び技の際には独特の反発力を生む…まっ、それが活かせるかは当人次第だが。


「なら準備は良いか?  試合開……」


カァン!!


夏翔麗愛
「さぁゴングが鳴ったのです!  同時に舞桜お姉ちゃんが早速ロープ際をホバー移動!」
「対する土筆お姉ちゃんも加速開始なのです!!  リングの上に法廷速度は無いのですよ!?」


何かいきなり夏翔麗愛が実況を始めていた…
見てみるとたまたま一緒に用意していた解説席に夏翔麗愛が座っており、隣には何故か姉さんも…
これじゃあ、まるでプロレスじゃねぇか!?


「…!!」


瞳は多少戸惑ったのか、動きが若干鈍い。
意を決して飛び出したは良いが、あまりにも無警戒すぎだ。
俺様は軽く息を吐き、前方に『念力』を放って壁を作る。
瞳はその壁に正面から遮られ、動きを止められていた。


夏翔麗愛
「藍お姉ちゃんの策略発動!  瞳お姉ちゃん、猪突猛進が裏目に出たのです!!」

「…けれど距離は詰まったわ、藍といえども接近戦で瞳には勝てない」


まさに解説の通りだ、俺様はそこまで瞳と相性は良くない。
遠距離で攻め立てられるならともかく、今のレベル差だと俺様の方が分が悪いしな。
とはいえ、だからこそ舞桜次第なんだが…


舞桜
(瞳ちゃんに『影縫い』は効かない!  ここは力技で止める!!)

「!?」


舞桜は瞬時に判断し、『遠隔』の特性で瞳の左腕を引っ張って自分の方に引き寄せる。
それを見た俺様はすぐに移動を開始してフリーの土筆を見た。


夏翔麗愛
「土筆お姉ちゃん、リング端を駆け抜けて一気に接近!!」
「藍お姉ちゃん、ピンチなのです!!」

「やれやれ、寝起きにはハードだな…」

土筆
「ぐっ!?」

「…ちゃんと予測して仕掛けたわね、土筆にエスパーは弱点よ」


俺様は軽く側面に放った『念力』で土筆の突進を止める。
いくらスピードがあっても軌道は単純だ、相対速度からタイミングはすぐに割り出せるしな。
さて、ならセオリー通り先に土筆を落とすとするか!? 

俺様は怯んで動きが一瞬止まった土筆に向かい、拳を振るう。
俺様の右腕からは炎が噴き出し、フック気味に土筆の側頭部を狙っていた。


夏翔麗愛
「藍お姉ちゃんのファイアーフック!!  当たればダウン必至なのです!!」

土筆
「くぅっ!?」

「…ほう?」


俺様のコンパクトなフックは見事に空を切った。
土筆はスタンスを大きく広げてダッキングし、俺様の攻撃をかわしたのだ。
そして今度は体の流れた俺様が隙を晒す事になるが…


土筆
「このっ!!」

「だからお前はまだ未熟なんだよ…」

夏翔麗愛
「藍お姉ちゃん、特性を活かしてアクロバティックに動き、マットスレスレを低空浮遊!!」
「土筆お姉ちゃんの突き上げる様な『メガホーン』は空しく空を切ったのです!!」


超低空から俺様は無防備の土筆を『サイコキネシス』で下から上に吹っ飛ばす。
効果抜群のダメージだ…まぁ耐えられんだろ。
さぁて、後はふたりがかりで瞳を……


舞桜
「ぐふっ!!」

夏翔麗愛
「気が付けば舞桜お姉ちゃんが轟沈!!  瞳お姉ちゃんの無情な拳が火を噴いたのです!!」

「…結果的に藍を救ったとはいえ、ある意味最悪の展開になったみたいね」


俺様はやるせなくなって頭を抱える。
いや、舞桜は十分やってくれたと思うべきだろう。
瞳はそもそもレシオが上なんだから…ましてやノーマルにゴーストは通用しない。
舞桜の強みが半分潰されてるんじゃこの結果もむべなるかな…


(しかし、舞桜にもノーマルや格闘は通用しない…どうやって圧倒したってんだ?)


俺様は舞桜のダメージに目をやる。
見るからに打撃だけの傷痕だが、ポケモンの技でやられたって感じじゃなさそうだな…
つまりは…そういう事か。


(神狩もやってたが、ポケモンの技じゃなきゃタイプで無効には出来ない)


つまり、無属性攻撃みたいなモンだな…こういうのに相性は関係無い。
ゴーストだろうが何だろうが、物理的な格闘技を無効化出来るわけじゃ無いってこったな…


「…藍様、お覚悟を!」


瞳はキッとこちらを睨み付けて構える。
距離にして約5m…瞳なら一足飛びで踏み込める距離だが、その様子は無い。
俺様はゆっくり体勢を立て直して両腕を組んだまま瞳と向き合う。
単純に戦力差は明らかだが、これはあくまで何でも有りのバトルだ。
やりようはいくらでもある…少なくとも、俺様はこの程度で狼狽えたりはしない。

対して瞳はどうだ?  明らかに敵意見え見えのガチガチな攻撃体勢…
舞桜がやられたのは単に接近戦での戦力差に過ぎなかったとと解るな…


夏翔麗愛
「藍お姉ちゃん不敵!  この状況でも勝つつもりなのですかぁ!?」

「…さて、どうかしらね?」


俺様は実況を聞きながらため息を吐く。
まぁ、レシオ的に見たら勝ち目が無いのは明白だ。
…が、この状況はあくまでも実質タイマン。
瞳はその状況にも慣れてるだろうが…俺様の事は良く解ってない。

そう…このバトルはいわば情報戦なんだよ。
そして既に瞳にはそのアドバンテージが無い。
俺様は瞳を良く見てきた…それこそ、全パターン予想出来る位にはな!


「…ひとつ忠告しておいてやる」

「……?」

「もう勝った気でいるなら、お前は既に敗北しているぞ?」

「…!?」


俺様はそう言って笑ってやる。
すると瞳は明らかに戸惑った顔をしやがった。
良いねぇ…あまりに正直すぎて笑いが止まらねぇ♪
まだまだ、強くても瞳はヒヨッコみたいだな…


「…藍様、手加減は致しませんよ!?」


瞳は更にドッシリと重心を落として構え、露骨に必殺技を撃つ構えを取った。
俺様はそれを見て動じもしない…予想通りだからな。
いや、一応予想外の部分もある…例えば。


(Z技は…メガ進化と違ってリロードが速いのか!)


とか、そういう新しい情報に関してはな!
過去に紛い物のZクリスタルを作った事はあるが、こうして本物を拝むのは何気に良い機会だ。
あくまで情報でしか知り得なかったあの技を、今は直に見てその威力を計算出来てる。
瞳はあの技に絶対の自信を持っている様だが、俺様にとっては1度見た時点で穴だらけの技だと確信してる。
そう、あの技は確かに威力は凄い…そして回避も難しい。
だが、それはあくまで見た事も無く、知りもしなかった時の事だけだ…


「清山拳…奥義!!」

(確かに、撃つのを見てから回避するのは難しい…多少動いた程度で軸をズラすのも困難だろう)


だが、ポケモンってのは実に面白い生きモンだからな…
こんな技の対策は思ったよりも簡単に出来るモンなんだ。


夏翔麗愛
「瞳お姉ちゃん、必殺技の体勢!!」
「藍お姉ちゃんといえど食らえば一撃必殺!!  なのです!!」

「…ええ、食らえば…ね」

「神破!  孔山拳!!」


瞳の拳は真っ直ぐにこちらへ向かって放たれ、空間を抉り出す。
俺様はその場から動かないまま、ただ成すがままに技を食らった。
同時に空間ごと俺様の肉体は捻られ、そのまま激しく後方へ吹っ飛ぶ。
それはとてつもない勢いであり、並の耐久力なら死んでる威力だろう。


夏翔麗愛
「藍お姉ちゃん無惨!!  抵抗も出来ずに一撃K!O!  なのです!」

「………」

「……ふぅ」


瞳は既に構えを解いて勝ちを確信していた。
吹っ飛んだ『俺様』はそのまま地面に突っ伏し、文字通り糸の切れた操り『人形』の様に動きを止める…
瞳はそんな俺様の有り様に目を向けすらしない…
だから、忠告したんだがな…!


「!?」


その直後、バンッ!!と鈍い音がして瞳の頭部が弾かれる。
一体何が起こったのか?  それが誰も理解出来ずにただ呆気に取られていた。
俺様は込み上げる笑いを堪えてただ瞳を睨み付ける。
そう、今俺様がいるのは上空…
さっきやられたのは、俺様の…『身代わり』に過ぎないのだから!


夏翔麗愛
「あ、あーーー!?  まさかの藍お姉ちゃんが空中にーーー!?」
「一体いつの間にあんな所に!?  吹っ飛んだ藍お姉ちゃんは、何処にもいないーーー!?」

「…単純な手よ、身代わりなんてその気なればほぼ誰でも出来る技なのに」


露骨に驚く夏翔麗愛に対し、当たり前といった感じの姉さん。
そう、あくまで技を食らったのは身代わり…つまり俺様のHPの25%に過ぎない。
それであの必殺技を簡単にやり過ごせるんだ…こんなに楽な手はそうそう無い。


「言ったろ?  勝ちを確信してるならお前の負けだと…」


俺様は降りて無様に倒れてる瞳を見下ろす。
やや当たりは甘かったか、まだ瞳は意識を完全に断たれてはいなかった様だ。
だが、既に脳を揺らされて立ち上がる事も出来ないだろ…勝負は終わりだ。


「確かにZ技は強力無比だ…当たれば大抵の相手は倒せる」
「だが、所詮連発は出来ない準1発技に過ぎないのも事実だ…なら身代わりでも何でも張ってやり過ごせば良い」
「相手のHPを0に出来なきゃ、勝利にはならないんだぜ?  ポケモンバトルってのはな…!」

夏翔麗愛
「瞳お姉ちゃん立てません!  よって勝者は藍お姉ちゃん!!」
「つまり、藍お姉ちゃんと舞桜お姉ちゃんが決勝進出なのです!!」

「…まっ、運が良かったって所かしらね?」
「…瞳の甘さが招いた結果とも言えるけれど」


まさに姉さんの言う通りだな…ひとえに瞳が甘い。
自分の必殺技に自信を持つのは結構だが、凌がれた時の事を考えてなかったのは大問題だ。
もしあそこで気を抜かずに身代わりを見抜いていたら、勝負は解らなかったのにな…

何なら華澄辺りだったら即反応されて迎撃されてたろう…そこだよ、お前達とアイツ等の差はな。


「…はぁ、とはいえ疲れたぜ」
「やっぱ連戦は休み入れてても堪えるな…」


俺様は軽く首を鳴らして項垂れる。
その後ダウンしてる奴等を夏翔麗愛に任せて俺様は控え室に戻る事にした…
後の進行ももう夏翔麗愛に任せる!



………………………



夏翔麗愛
「…ってな訳で、藍お姉ちゃんがボイコットしたのでそのままのフィールドでお送りするのです!!」

「…まぁ良いけどね」
「…で、次は唖々帝、喜久乃タッグ対…神狩、祭花タッグね?」


既に4人はリングで待機済み。
割と余裕そうな神狩お姉ちゃん達に対し、やや緊張感のある唖々帝お姉ちゃん達…
そもそも、このリングじゃ隠れる所も無いし真向勝負しか無さそうなんですけど?


唖々帝
「…祭花が相手か、下手な連携は裏目に出かねんな」

喜久乃
「戦力としてはどうなんです?  サポート特化なのは解ってますけど…」

唖々帝
「直接戦闘は大した事無い、が空間把握力と情報処理能力だけで大将に認められた戦士だ…相応の戦力だとは思え」


ほう…?  同僚の唖々帝お姉ちゃんからしたらかなりの評価みたいなのです!
対して喜久乃お姉ちゃんはイマイチ理解出来てないのか、やや曖昧な顔してますね~

対して祭花お姉ちゃんはじっくりと相手を観察してるのです!
神狩お姉ちゃんはかなり祭花お姉ちゃんを信頼してるのか、相変わらずの無言で準備運動してますよ…


夏翔麗愛
「さぁ、とにかく互いに準備は万端!  いよいよゴングなのです!!」


私はそう言ってハンマーを構え、勢い良くゴングを鳴らす。
カーン!!と甲高い音が鳴ったと同時、まずは唖々帝お姉ちゃんがいきなり『放電』を開始した。
リング上全てを覆い尽くす電流がいきなり全員を襲ったのです!


夏翔麗愛
「唖々帝お姉ちゃん開幕から放電!!  しかし喜久乃お姉ちゃんは地面タイプなのでひとり無効ーーー!!」

「…コンビ的にはセオリー攻撃ね、神狩もこれには突っ込めないでしょうし」

神狩
「……っ!」

祭花
「うきゃあ!?  もう唖々帝ったら見境無く!!」


祭花お姉ちゃんは相手の行動を予測していたのか、神狩さんを盾にして凌いでいた。
多少は食らったものの、祭花お姉ちゃんにはあまりダメージは与えられなかった様だ…
そして、ダメージに耐えた神狩お姉ちゃんの目がギラリと光る。


夏翔麗愛
「神狩お姉ちゃん、十八番の神速!!」
「しかし、そこに立ったのは何と喜久乃お姉ちゃん!?」

「…役割を変えてきたわね、耐久の高い喜久乃が盾になるなんて」


喜久乃お姉ちゃんは、神狩お姉ちゃんの動くタイミングを完璧に予測して唖々帝お姉ちゃんを守っていました。
流石の神狩お姉ちゃんはそれに驚くも、すぐに腕を振るって喜久乃お姉ちゃんの体を掴もうとする。
しかし喜久乃お姉ちゃんは既にトラップを敷き、触れた神狩お姉ちゃんをビリリ!と痺れさせたのです!!


神狩
「!?」

喜久乃
「接触ばかり狙ってたら痛い目見ますよ!?  こちとら、全部対策済みですからね!!」


そう言って笑う喜久乃お姉ちゃんは苦無を手に祭花お姉ちゃんを狙う。
祭花お姉ちゃんは咄嗟に『守る』で防ぐも、これじゃあ神狩お姉ちゃんをサポートも出来ない。
そして次には唖々帝お姉ちゃんがまた動く!


唖々帝
「さぁ、何処まで耐えられる!?  こっちは端から全開だ!!」


何と唖々帝お姉ちゃんは体を輝かせ、いきなり必殺技の体勢に入る。
開幕から痺れた神狩お姉ちゃん、守るで固められた祭花お姉ちゃんにはそれをかわす術は無い!
しかも唖々帝お姉ちゃんの必殺技は一撃必殺級!
当たれば守るの上からでも祭花お姉ちゃんは倒れかねない!!


夏翔麗愛
「こんな速いタイミングで唖々帝お姉ちゃんの必殺技がさぁくれつぅぅ!!」
「当たればまさに必殺!!  どう対処するのかぁ!?」

「…ある意味賭けね、当たれば金星…外れれば敗北必至」


唖々帝お姉ちゃんは口元の角に電気を集中させ、極限まで圧縮した電磁砲を放つ体勢に入る。
その反動は相当大きい物であり、撃った本人も吹っ飛びかねない威力…
それだけに命中も不安な感じなのですが、果たして大丈夫なのでしょうか?


神狩
「!?」

喜久乃
「させませんよ!!」


無理矢理動こうとした神狩お姉ちゃんに喜久乃お姉ちゃんが体ごとぶつかって止める。
つまり、狙うのは祭花お姉ちゃん!?
守るの上から、即死狙いなのです!?


「…無理よ、このタイミングなら祭花が先に動くわ」
「…今から射出しても間に合わない」


棗お姉ちゃんの言う通り、唖々帝お姉ちゃんの射出より速く祭花お姉ちゃんは動きが自由になる。
つまり、この後祭花お姉ちゃんがやる行動は…!?


祭花
(唖々帝は確実にこちらを狙ってる!  今から守っても貫かれるし、かわせるとは限らない!)


祭花お姉ちゃんは苦い顔をし、唖々帝お姉ちゃんを睨む。
唖々帝お姉ちゃんは長めのチャージを終えて遂に発射体勢!
そしてその銃口は真っ直ぐ祭花お姉ちゃんに……


喜久乃
(当たれば勝つ!  既に麻痺してる神狩さんなら、もうどうにでも…)

唖々帝
「食らえ!!  『ライトニング・ショック・レールガン』!!」


そんな叫びと共に唖々帝お姉ちゃんの角から大出力の電磁砲が発射される。
対して祭花お姉ちゃんが取った行動は…?


ドゥゥゥゥゥン!!  バチバチバチィ!!


夏翔麗愛
「必殺技炸裂!!  祭花お姉ちゃん、回避すら出来ずに直撃してダウン確定なのです!!」
「あ…え?  でも、リングを包み込むこの綺麗な緑の輝きは一体…?」

「…これは、『アロマセラピー』よ!!」

神狩
「!!」

喜久乃
「え?」


突然、神狩お姉ちゃんの動きが神速の速度で動いて喜久乃お姉ちゃんの背後を取る。
麻痺してるから楽勝~とタカ括ってた喜久乃お姉ちゃんは一瞬の元に首を絞められてオトされましたとさ…
って、相変わらずの早業ですね!?
神狩お姉ちゃんのCQCはホントにプロ顔負けなのです!!


夏翔麗愛
「ここでまさかのアロマセラピー!  祭花お姉ちゃん、死して尚神狩お姉ちゃんをサポートしたのです!!」
「まさにサポートの鑑!!  どっかの間抜けタッグに見せてやりたい!!」

「…それ、どのタッグに向けて言ってるの?」

夏翔麗愛
「答えは皆の心の中に!!」


つまりあえては言わないのです!!
まぁ、どのタッグが1番ダメだったかは読者にも予想は出来ると思いますが?


神狩
「……」

唖々帝
「くっ…!?  まさかこんな結果になるなんて…!!」


神狩お姉ちゃんはすっかり痺れを治して構える。
対して必殺技を使った反動で唖々帝お姉ちゃんは動きが鈍かった。
喜久乃お姉ちゃんと祭花お姉ちゃんも完全にダウン判定…つまりコレはタイマンの勝負なのです!!


神狩
「…投降するなら今の内」

唖々帝
「既に勝った気か!?  まだ私は負けちゃいないぞ!!」


そう言って激しく電撃を放つ唖々帝お姉ちゃん。
神狩お姉ちゃんはそれを守るで防ぎ、冷静に対処した。
この間に神狩お姉ちゃんは息を整え、いつでも踏み込める体勢になる。
対して無駄に技を放った唖々帝お姉ちゃんは技の硬直で動きをとめていた…


神狩
「……ふっ!」

唖々帝
「くそっ!  ここまで差があるのか!?」


神狩お姉ちゃんはまた神速で踏み込んで唖々帝さんの懐に入る。
相変わらずですけど、この緩急差は本当に怖いですよね~
神狩お姉ちゃん自身は普段おっとり気味ですから、余計にこういう所は目立つし…
唖々帝お姉ちゃんも決して弱くはないはずなのに、神狩お姉ちゃんとはやはり差が大きいのです!


夏翔麗愛
「神狩お姉ちゃん、難なく密着!  さぁ接近戦なのです!!」

「…まぁ、結果は見えてるけどね?」


棗お姉ちゃんのツッコミを受けながらも生暖かく見守る私…
唖々帝お姉ちゃんは必至に抵抗するも、流石に接近戦では神狩お姉ちゃんに勝てるはずもなく、すぐに絞めオトされたのです…
炎使えば楽勝なのに、相手を傷付け過ぎるのをあまり良しとしない神狩お姉ちゃんの優しさなのですかね?
…まぁヤル時はヤルのも神狩お姉ちゃんの怖さなんですけど!


夏翔麗愛
「結局唖々帝お姉ちゃんも憤死!!  やはり神狩お姉ちゃんは強いのです!!」
「伝説ポケモンは伊達じゃない!!  伝説のポケモンに立ち向かうのもまた伝説なのです!!」

「…中々面白くなりそうね、藍達がどう戦うか見物だわ」

夏翔麗愛
「ちなみに棗お姉ちゃんの予想は?」

「…そうね、6:4で不利って所かしら?」

夏翔麗愛
「それってどっちが不利なのです?」

「…勿論、藍達よ」


そう言って棗お姉ちゃんは欠伸しながら去っていきました…
私はうーんと唸りつつも予想は出来ずにいる。
確かにイマイチコンビネーションが乏しそうな藍お姉ちゃん達と、コンビネーション抜群の神狩お姉ちゃん達とは差がある?

でも舞桜お姉ちゃんはかなり強い方だし、神狩お姉ちゃんの性格も戦法も知ってるだろうから…


夏翔麗愛
「あー!  解らないのです!!  やっぱり藍お姉ちゃんの姑息さが何処まで通用するかですね!!」


私はそう結論付けて切り上げた。
とりあえず後は決勝を残すだけ…もう後は藍お姉ちゃんに任せるのです!
ってか、わざわざ実況にして文字数稼ぐのは地味に姑息なのですよ!!
(やがましい!!)



………………………



「…そうか、解った」

「…なら、1時間後で良いのね?」

「ああ、それ位ありゃ回復すんだろ?」


俺様は控え室のベッドで横になりながら報告に来た姉さんにそう答えた。
結果はまぁ…予想出来てたしな。
何となく、あのふたりが上がって来る予想はしてたし。
実力的にも、まぁ妥当だろ。
正直、祭花の活躍までは予想してなかったんだがな…
まさか、そこまで覚悟決めてやってるとは思ってなかった。
あの唖々帝の必殺技をマトモに食らってまで、神狩をサポートするとはな…俺様に出来るか?


(出来るかじゃねぇな、やる必要が無い)


俺様はあくまで俺様の出来る事をやるだけだ。
だからこそ、舞桜にも出来る事しかさせるつもりはない。
別に悲観的な考えじゃあない、ただそれで十分だと思ってるからそうするだけだ。
あくまで、俺様達はそれで挑む…

相手がどんな自己犠牲でやろうが、俺様は動じないし驚かない。
あくまでそれは俺様の予想してる範囲の行動だからだ。
だからこそ、あえて俺様は心の中でこう言ってやる事にした…


(俺様達に勝ちたきゃ、精々予想を超えるこった…)










とポ女外伝  城内地下タッグトーナメント



第5話 『準決勝、開始』


…to be continued