前回はシカゴ・カブスに所属するクリス・ブライアントの現在に至るまでの成績紹介と、彼の打撃についての特徴をセイバーメトリクスを用いながら簡単に説明した。
今回もブライアントの守備と走力の特徴をそれぞれセイバーメトリクスを使いながら紹介していきたい。
まずは2015年から現在までの守備位置ごとのイニング数とDRS(守備防御点)を見ると
《2015年》
Inn DRS
1B : 6.0回 0
3B : 1209.1回 +3
LF : 39.0回 +1
CF : 18.0回 0
RF : 41.0回 0
OF : 98.0回 1
《2016年》(8/27 現在シーズン途中)
Inn DRS
1B : 35.1回 +1
3B : 664.0回 +2
SS : 1.0回 0
LF : 300.1回 +2
CF : 1.0回 +1
RF : 93.0回 +1
OF : 394.1回 +4
2015年は主に本職である三塁手をほぼ1年に渡って務め、DRSは+3を記録してまずまずの守備能力を披露した。三塁手についたイニング数は1209.1回、外野手では98.0回の守備を経験した。
そして今年の2016年では、その外野手の守備イニングが増えるようになる。三塁手は664.0回に減って、その分レフトの守備イニングが300.1回に増えた。
ブライアントの守備評価については、196cmという長身を持ち合わせている事から三塁手の動きはそこまで俊敏ではなく、またフットワークに欠けている。そのためグラブ捌きに硬さがあり、バックハンド側(三塁線)への対応に遅れが見える。
三塁手としての守備に改善点が多く見られる反面、肩においては魅力的な点を持っており、非常に強肩で送球距離が長い。送球が少しばかり不安定ではあるが、これさえ改善すれば多くのアウトを生む事ができるだろう。
カブスとしてはブライアントを強打者としての三塁手を育てていきたい気持ちはあるだろうが、三塁守備での改善点の多さや強肩という利点を持っている事から、いずれはレフトにコンバートするかもしれない。上記にも示したように守備イニングの変化がそれを物語っている。
3. 走力
打席から一塁までの到達時間は4.3秒と平均的であるものの、センスのある走力を持っており試合でも効果的な走りをする。そこで走力におけるセイバーメトリクスを紹介したい。
UBR・・・野球における平均的な走者と比較し、「走塁」によって何得点相当チームに貢献したか、あるいはチームに損失を与えたかを示す。
wSB・・・野球における平均的な走者と比較し、「盗塁」によって何得点相当チームに貢献したか、あるいはチームに損失を与えたかを示す。
BsR・・・UBRとwSBを足したもので、いわば走塁と盗塁を総合した「走力」を示す指標である。
《2015年》
UBR : +3.5(ナ・リーグ3位)
wSB : +0.7
BsR : +7.1(ナ・リーグ1位)
《2016年》(8/27 現在シーズン途中)
UBR : +2.5(ナ・リーグ12位)
wSB : -0.8
BsR : +5.4(ナ・リーグ5位)
上記がブライアントの走力に関する指標であるが、2015年を見てみるとUBRはナ・リーグ3位の+3.5でありBsRに至ってはなんとナ・リーグ1位を記録している。
今年に関しては数値が昨年と比較すると若干減っているものの、 平均的な足の速さでありながらこのような高い数値を叩き出しているからなお素晴らしい。盗塁も成功率こそ低いが、2桁の盗塁を決める事からそのセンスの高さが伺える。
走力は、元々足は速くないが投手の癖を見て盗塁を試みたり、状況に応じて効果的な走塁を発揮したりなど意識の高さが見える。これからも打撃だけでなく走力の面でもチームに役立つ事がいえよう。
これまでブライアントについて打撃・守備・走力について紹介してきたが、まだまだ荒削りな面は見られるが、練習次第ではどのツールでも突出した5ツールプレーヤーになる可能性が秘められている。
最後にブライアントにおける昨年の守備のハイライトをご覧いただいて終わりとする。
追記
ロサンゼルス・エンゼルスに所属するマイク・トラウトのWARについては過去に紹介しましたがこのトラウト、「Fangraphs」というセイバーメトリクスを算出しているサイトによれば、推定で通算WARがあのベーブ・ルースを超え、MLB史上最高の数値を残すそうです。
トラウトは6年という少ない実働年数ながら
fWAR : 45.4
rWAR : 46.2
という数字を稼いでいます。
引退する頃にはどれだけの数値を残しているか楽しみですね。