25日(木)夜8時

 

細川さん、こんばんは~。

 

「はい、今晩は。まぁ お上がり下さい」

今日も寒いですねぇ。

「暖房もっと上げましょうか」

いえ結構です、外から来たので、ここはとても暖かいです。

(どうも友好的過ぎる、何かある)

「ユキオさん、私は父の代理人としてお話申し上げたいのですが、父の意思でもあります」

はい、どうもありがとう御座います。

「ユキオさんは、今までの不動産屋さんと違い、家を建て替えてくれるとお聞きしましたが、詳しい条件を聞かせて下さい」

ええ、私どもが一番欲しいのは、細川さんの正面から向かって左側の敷地を2m譲って頂きたいのです。奥行き11mありますから6,65坪です。

そうすると、細川さんのご自宅の駐車場が無くなります。

そこで、1階部分をピロティにして車庫を作り、木造3階建ての新築を私どもで建て替えさせて頂きたいと思っているのです。

その結果、私どもが保有する敷地は現在の間口2mが4mになり奥行き11mで、裏の敷地100坪が活きてくるのです。

「そうすると、裏には何が建つののでしょうか?」

これがラフ図面です。8坪のワンルームが4階建で24個入ります。

「やはり、そうですか。ファミリーならともかく、ワンルームを建てられのでは、騒音と若い世代の方々の出入りが激しくなりますね」

ええ、そういう部分は否定できません。

「裏の借地権の問題は片付いたのですか?」

まだ、弁護士と協議中です。

「申し訳ありませんが、裏にワンルームが建つなら、この件はお断り致します」

分かります、では何かご提案はないでしょうか?

「この家も40年以上経過して、私の名義で住宅ローンを組み、建て直そうとは思っていました。建て替えてもローンの支払いは月々10万くらいですから、この静寂な立地を犠牲にする事はできませんなぁ、申し訳ない」

いえ、勝手な私どものご提案を聞いて下さっただけでもありがたいと思っています。例えば、この近くに代替え地を探してその土地と新築の住宅をご提供するなどでは、いかがでしょうか?

「うん、その場合、私どもが払う税金があるでしょう、いくら想定なさっていますか?」

まだそこまでは、計算していなかったので敷地が約40坪、建物が同じく40坪の新築だと、土地代金7~8千万、プラス建物代金3千5百万で約1億以上で購入しなければなりません。すると、居住用資産控除と原価取得費を差し引いて、推定ですが課税対象金額は5千万前後ですから、その21,3%の1千1百万くらいが、課税額になります。

「だいたい分かります、そうするとこのお話を前向きに検討するとして、まず代替え地候補があるかないか、売買代金は1億2千万以上でないと、この話は成立しない事になります。ただ父がまだ元気ですからこの町内から出ていく気は全くありません。難しいんじゃないですか」

確かに、難しいですね。このエリアでちゃんとした道路に面した40坪前後の「宅地」を探すのは、我々プロでも至難の業です。

「せっかくのご提案ですが、また10年後の話ならユキオさんが相手でしたら、お会いしても良いですよ。父ももう年ですから」

うわぁーその頃は私も、棺桶に片足突っ込んでいますよ、脅かさないで下さい。

「はっはは、まぁ私達はそのようにしか考えておりません、お断りだとやんわり申し上げているのです。これでよろしいですか?せっかくお会いしたのだから、もう誰も不動産屋さんは来ないようにして下さい。母も一時精神的に参っていました、お話はこれで終わりです」

(礼儀正しく、理路整然としていて、逆に余裕がある。相当知能も高いし交渉慣れしている、おそらくサラリーマンでもかなり高い地位にある人だ)

今晩は、お忙しいところ私の為にお時間を作ってくださり、本当にありがとう御座いました。「江東区」の一部払い下げもありますから1年は掛かります。

その期間内に、「代替え地」を見つけ出しましたら、再度ご連絡申し上げます。

ご自宅ではなくご勤務先かケイタイにご連絡したいのですが、どちらか教えてもらえませんでしょうか。代替え地以外では、絶対ご連絡致しません。

「いや、本当に代替え地が見つかったのなら自宅で結構です、私にもまったく悪い話ではありませんから」

ありがとう御座います、一生懸命探しますからもう一度お会いできる日を楽しみにしております。

 

: これは完全に予算オーバーだ。しかし細川さんが本体を移動してくれれば、我々の土地は2倍の価値になる。1億2千万だろうが、1億5千万だろうが、一応この現場で利益は出せる。しかし、このエリアで代替え地はまず無理だろう。。。困った

ところが、三波さんから赤坂の現場で大チャンスの案件が出てきたのだ。

それこそ、「砂町の現場」は、誰かに任せて全勢力をぶつける価値がある。

仕込総金額は45億前後。これが1,5倍に化ける。

ついに三波さんのしつこさが、花を咲かせた。数年に一度の案件だ。

ヤルゾー!