子孫のために美田を買わず 

 

 父の日の店は、たいそう混んでいた。待って、譲ってもらって、どうにか五人でテーブルを囲むことができた。

 よく飲む、よく食べる。元気がいい。千鳥足の家路は、お嫁さんに導かれて事もなし。北から南から、酒も来る。酒も来た。父の日とは、まことに、よき日を設けてくれたものよ。

 

 さて、若君の御誕生まで、あと二か月だ。「頼むから、赤子の名前は、われら二人にまかせてくれ」という。「よし、それはまかせた」と。しかし、こちらもいう。「頼むから、いま流行の名前だけはやめてくれと。

 たとえば、「広報倉敷」に報じられている赤ちゃんのお名前というものは、まことに多彩。しかし、見て、ぱっと読める名前かといえば、そうではない。少々の学があっても読めないような名前と漢字を持ってきている。若君が成長して困ることのないような名前にしてくれと私。赤ちゃんが一生背負ってゆく名前だ。よくよく思案せよと、念を押した。