齢十六で当地の黒滝城の若さま 小野寺圭之介の許に嫁ぐ為に輿に乗って皆瀬川を渡っていた時にそれまでの雲一つなく晴れ渡っていた空が 突然黒雲に覆われ川は荒れ狂い家来の誰もが一寸先も見えない大嵐に見舞われ漸くもとの晴天に戻った時には能恵姫の姿はどこにも無かった。
後に城の下を流れる皆瀬川の栄が淵という深い淵の底で淵に落としたマサカリを取りに潜った能恵姫の乳母だったサワの夫の智学法印が淵の底の岩窟の中で能恵姫を見つけ連れ戻そうとしたが姫の傍には真っ白な大蛇がとぐろを巻いて眠っていた。
姫は龍との因縁の為に戻ることは出来ないと言うと櫛とかんざし そして切った黒髪を智学法印にこれを形見に圭之介さまに届ける様に頼んだ。
智学法印がそれでも姫を連れ帰ろうとして着物の袖を引っ張った。
しかし気がつくと淵の上の斜面にいて手には姫から渡された櫛カンザシと姫の遺髪と片袖が残っていた。
智学法印は直ぐにお城に駆け上り父親である城主 小野寺道高に事の次第を伝え姫から渡された形見の品々を渡した。
道高はそれらの姫の遺品を川連の黒滝城の圭之介に届けると姫を憐れんだ圭之介が能恵姫の菩提を弔う為の一寺を建立した。
竜泉寺 というその寺は我が家の菩提寺でもあり 住職から遺品で寺の寺宝としていた櫛カンザシはその後の度重なる火災によって焼失してしまったが 先年 何時の頃か檀家に預けていた姫の遺髪が古い家から出て来て寺に届けられ寺宝として祀っていると教えて貰った。
能恵姫の姿が描かれた掛け軸があり それをもとに16才の能恵姫の姿をAIで今風に描いてもらった。

