さっきというのは海の中で大野さんとツーショットを撮った時のこと。
あんな風に抱きしめられたら…
俺の体 を引き寄せる力強い腕にドキドキしたのもつかの間、大野さんが喋ると耳に息がかかって、肌 がぞわりと波だった。なのに、熱い体を押し付けられて…。俺だって、ぎゅっとしたいのに…ずるい…
あれから俺たちはビーチに戻って、別のメンバーのペアでツーショットやスリーショットを撮影し、夕方に撮影終了となった。明日は夕方の便で帰国するが、午前中ギリギリまで撮影するらしい。夕飯の時間を確認しあってから、大野さんと桟橋を渡ってヴィラに向かった。陽は落ちかけていて、もう少ししたら、きれいな夕焼けになりそうだ。そうなってほしい、と心の底から思った。明日はもうここにはいないから。顔にふわりと吹いてくる生温かい風に、珍しく感傷がこみ上げて、隣を歩く大野さんにそっと肩を寄せた。
「どした?」
大野さんは優しい笑顔を俺に向けた。
「ん…この島にいるのも…終わっちゃいますね」
「そだな…」
大野さんは海に視線をやり、「マジきれいだったな」と呟いた。
「ニノは海…好きになった?」
「へ⁈ 」
唐突な質問に面食らう。
「や、ニノあんま海好きそうじゃなかったから」
「そうですね…」
キラキラと青く輝く海。2人で遊んで、陽に焼けた。黄色に輝くサメを見て、海ガメだって見た。でも、大野さんを連れて行ってしまいそうになった海。でも、ちゃんと返してくれたんだよね…
「前よりは、好きですよ」
「ふふ、そっか」
大野さんは機嫌よく笑うと、俺たちのヴィラの扉を開けた。
俺が、海を少しでも好きになったとしたら、この人の笑顔がたくさん見られたから、かな…
俺は大野さんに続いてヴィラに入っていった。
シャワーを浴びて、湯をため、泡を立てておいた風呂に浸かった。円形のバスタブの前は一面のガラス張りだから、ヴィラのプライベートプールの向こうに広がる海、遠くの島、真っ赤に染まる広大な空がよく見えた。風呂につかっていると、シャワールームから大野さんの鼻歌が聞こえてきて、俺はくすりと笑った。なぜなら、それは嵐の曲だったから。あの人も、嵐さんのこと、好きだよね…
夕焼けをぼうっと見ていたら、いつのまにかバスタブのそばに大野さんが立っていた。
「い…っしょに入ってい?」
「ふ…いいですよ…新婚さんですからね」
初日の風景が蘇ってそう言うと、大野さんは照れくさそうに笑って、バスタブに入ってきた。
「あんときは…ニノとこういうことになるなんて…思ってなかったな…」
「あ…」
俺は湯につかった大野さんの腕にあっという間に抱き寄せられた。
「大野さん…」
大野さんはバスタブの縁にもたれかかって俺を脚 の上に抱き上げた。さっきと同じ力強い腕が俺を背中からぎゅっと抱 きしめる。違うのは、さっきは水着で、今はふたりとも何も着ていなくて…。湯の中で肌が密 着すると気持ちよくてドキドキした。そういえば、初日も…
「前一緒に風呂入ったときさ」
背中から大野さんの声が聞こえる。
「こけそうになったときお前が助けてくれて…」
大野さんも同じことを思い出してるんだ、と思うと嬉しくなった。
「あんとき、ニノの体が…変な話、めっちゃ気持ちよかったんだよな…」
「俺も……あっ…」
湯の中の大野さんの腕が動いて、指が俺の上半身の敏 感 な尖りに触れた。
「あっ…ああっ…」
身をよじると、大野さんは全身で俺を包み込むように抱きしめた。ばしゃばしゃとバスタブの湯が波だって、湯と泡が床にこぼれ落ちる。