Villa No.14 #36 | 妄想を文字に変えて〜嵐 大宮小説〜

妄想を文字に変えて〜嵐 大宮小説〜

嵐のニノちゃん、大野さんをイケナイ目で愛でる妄想小説ブログです。

残念ながら、ちょっと腐な感じです。

あくまでも妄想なので、生温かく見守ってくださいませ。



BL妄想です
苦手な方はお気をつけくださいませ



第1話→★★★

一覧→◇◇◇



















Side N








大野さんは釣りの説明を聞く、と言ってホテルロビーに寄ったので、先にヴィラに帰ってきて、日課になってしまった主(ぬし)へのエサやりをひとりでやった。海面は波立っていて、魚達はあまり寄ってこなかった。風も強い。こんな日に船に乗ったら、自分ならすぐ酔って、使い物にならなくなるだろう。風が強くて、時折ヴィラがみしみし音を立てた。



大野さん、本当に行くのかな…



心配になったとき、テラスの方から「ニノー」と声がした。慌ててテラスへ出る。シュノーケルに行ったときに乗ったボートがヴィラの前に停泊しており、ボートのデッキに大野さんがいた。


「俺、釣り行ってくる」


「大丈夫なの…めちゃくちゃ揺れてるけど…」


さほど大きくないボートは、波にあおられてゆらゆら揺れている。白い美しい船体は海の上で頼りなく見えた。


「うん…まあ…いけるっしょ」


大野さんはボートを見ながらもごもご言った。何か後ろめたいとき、大野さんは途端に口数が少なくなる。だから余計に心配になった。


「何もこんな日に行かなくてもいいんじゃない?」


「いや、まあ…な…」


目をそらす大野さんを見て、俺の心配は募って行く。


「でも…気分っ…転換っ…っていうか、まあ、行ってくるわ」


「無理せず早めに帰ってきてくださいよ」


これ以上止めてもダメだと思って俺は行く前提の話に切り替えた。こういう時の大野さんは、外野が何を言ってもダメなのだ。


「うん…あ、もしかしてニノも行きたかった?」


大野さんは突然、心配そうな顔になって聞いた。


「そんな揺れてんのに乗ってけるわけないでしょ…1分でグロッキーだよ」


「そうだよな…じゃ、行ってくるわ」


大野さんがボートに同乗していたリゾートスタッフに合図すると、ボートは動き出し、やがて小さくなって行った。













大野さんの乗ったボートが、所定の時刻を1時間超えても戻らず連絡もつかない、と聞いたのは、ヴィラでひとりゲームをしていた時だった。部屋の電話が鳴り、俺は「はい」と電話に出た。相葉さんは焦った口調でそのことを告げると、「ニノ、こっち来る?今みんな集まってる」と言った。俺は受話器を持ったまま耳をすませた。昼過ぎから降り出した雨が、ヴィラの屋根にあたる音がする。風も強くて時折ヴィラが揺れるみたいに感じた。ソファに大野さんが脱ぎ捨てたシャツが目に入った。蒸し暑いこの島なのに、足元が冷たく、鉛のように重くなっていくように感じた。「行く」と素早く答えて受話器を置く。俺は身の回りのものをカバンに放り込んで、ヴィラを出た。








桟橋を歩くのは怖かった。波が高かったからだ。大野さんが乗って行ったボートを思い出して頭の中で波の上に置いてみると、ボートは波に翻弄されてくるくる回った。俺はそこで、想像をやめた。想像に苦しめられるのは馬鹿馬鹿しい。俺は事実にしか心を動かされない。




レストランの一角に、皆が集まっているテーブルがあった。ここまで来るのに緊張していたせいか、皆の顔を見て一瞬ほっとしたけれど、重苦しい雰囲気に、まだ連絡がつかないのだとわかった。相葉さんが俺をみて驚いた表情を見せた。


「ニノ、びしょ濡れじゃん…傘は?」


そう言われて、自分が傘も持たずに飛び出してきたのだと気づいた。


「あ…忘れてた…はは…」


潤くんが慌ててリゾートのスタッフにタオルを持ってきてもらうのが見えた。潤くんの手によって、ふわり、とタオルに包まれた瞬間、泣きそうになった。なんてこった。動揺しすぎでしょ…


「大野さんが乗って行ったボート、マリさんのダンナさんが操縦してるんだって」


相葉さんに言われて、そばに青ざめたマリさんが立っているのに気づいた。


「ごめんなさい…大野さんに何かあったら…」


「何言ってんの…マリさんの旦那さんだって乗ってるんでしょ…」


マリさんの蒼白な顔を見て、俺はこの人に嫉妬していた自分を恥じた。


「今日は天気悪くなる予報だったから…他のスタッフさんは止めたみたいなんだけどね…」


相葉さんがぽつぽつと話し出す。


「リーダーが、今日行きたいって、言ったらしい…珍しいよね…」


「…っ…のバカ」


『釣りに行ってくる』とにこにこ笑う大野さんの姿が頭に蘇ってくる。俺だって、止めたのに。俺が、止めたってのに…。あの人は笑って行ってしまった。



釣りなんて、いつでも…は無理かもしんないけど、別の日だって行けたじゃん…



なんで、こんな日に限って…



…って言ってもきかなかったんだよな…



テーブルの周りには重苦しい沈黙が落ちた。


「とにかく、連絡を待ちましょう…」


マネージャーが言うと、皆神妙な顔つきで頷いた。