BL妄想です
苦手な方はお気をつけくださいませ
今頃、届いてアワアワしてるかなあ…
俺は、休日でほとんど誰もいないオフィスの自席で、資料を作る手を止めて時計を見た。
「大野さん…にやにやしてるけどどしたの?」
部長席から、同じく休日出勤している翔くんがこっちを見て恐る恐る聞いてくる。
「やっ、今日実は誕生日で…」
「マジで?おめでとう!…したら会社なんか来てる場合じゃなかったよね…ごめん」
翔くんが申し訳なさそうな顔になったから俺は慌てて手を振った。
「いや、大丈夫…明日だもんね、経営会議」
「でもリーダー、ニノちゃん怒ってないの?」
同じチームの相葉ちゃんが面白そうに笑ってこっちを見た。相葉ちゃんが俺のことをリーダーと呼ぶのは、課長になる前、チームリーダーだった時期が長すぎて、「リーダー」が俺のあだ名みたいになってしまったからだ。
「結婚してはじめての誕生日でしょ?はりきっていろいろ計画してたんじゃないの?」
「や、どっちかってぇと…」
いろいろ計画してるのはおいらの方かも…
でも、よかったなあ…エプロン間に合って…
人気のピンクのエプロンは入荷待ちで、ギリギリ今日届くことになったのだ。
もう届いて、着てくれてるかなあ…
「あ!」
「へ?」
「ななななに…大野さん…」
俺は大変なことを思い出して思わず叫んで立ち上がる。2人が目をまん丸にしてこちらを見た。
「まずい…もう一個あんだった…」
俺はエプロンの他に今日もう一つ、夕方の指定にした届け物があることを思い出した。
やっべー…
カズ、エプロン着て待っててくれるよな、きっと…
宅配の人来たら、見られちまうな、カズの…
カズの 裸 エプロン姿を俺以外の誰かに、ましてや俺よりも先に見られるなんて絶対に避けなければいけなかった。
宅配の人より前に、俺が帰んなきゃ…
「大野さん?」
突っ立ったままの俺に翔くんが心配そうに声をかけてくる。俺は座ると、作りかけの資料を見て、声を上げた。
「待ってろよ、カズ!」
「結局惚気じゃん!」
くすくす笑う相葉ちゃんの声を聞きながら俺は、ロックしていたパソコン画面に大急ぎでパスワードを打ち込んだ。
Side N
うう…着てみたけど…
自分の身につけていたものを 脱 ぎ、下 着 も、かなり長い逡巡の後、えいっと脱ぎ、エプロンを身につけた俺は、自分の姿を見て恥ずかしさがこみ上げて来るのを感じた。さらさらと揺れるエプロンは 肌 に心地よい。だけど普段は 下 着 やシャツで隠れている場所に直接触れると、エプロン以外何も身につけていないと実感されて、ますます恥ずかしくなる。
すうすうすんだよな…
しかし、前はまだいい。全部隠れているから。問題は後ろだ。俺は自分の背中側を確認した。当たり前だけど、白い背中とエプロンの腰紐、むき出しの 尻 が見えた。
は、恥ずかしすぎる…
身につける前は姿見で自分の姿を確認しようと思っていたけれど、今そんなことをしたら恥ずかしくて死ぬ、と思ってあえて見ないことにする。
大野さん、こんなんでいいのかなあ…
ってか、絶対ヤラシイこと考えてるよね、あの人…
どんな風に触 ら れるんだろう、と考えると自然と体が熱くなって来る。
ダメだ、普段通り夕飯…
俺は夕飯の仕上げをしようとキッチンへ向かおうとした。その時、リビングの窓にかかったカーテンが開いているのに気づいて、俺は慌てて窓に駆け寄った。かなり離れているけれど、向かいにもマンションがあるのだ。
やばいやばい…
こんなカッコ大野さん以外に見られたら終わりだもんね…
素早くカーテンを閉めて俺はほうっとため息をついた。