王子の誕生祭が終わり、城が元の生活を取り戻して半月ほど経った頃、男が一人、城の中の長い廊下を歩いていた。
軍人と思しき姿の男は、カツンカツンと靴を規則正しく鳴らしながら廊下を進む。
長い廊下の壁にはところどころ、王室付きの画家たちが描いた王族達の絵や、城の風景画が飾ってある。
男には見慣れた絵ばかりで、気に留める様子もなく通り過ぎていく。
目的の場所へ続く最後の角を曲がろうとしたとき、男の足がピタッと止まった。
視線は、壁の絵に向けられている。
「ふっ…誰が描いたのか…すぐわかるな」
男は組んだ腕の片方の手を口に添えて、笑い混じりに低く呟いた。
絵は、廊下に飾られた他の絵と同じく、王族を描いたものだ。
ユカタを身につけた、まだ若い王子だ。
美しい切れ長の瞳は細められ、口元は特徴的に緩やかに尖っていて、その表情は照れくさそうに見えた。少し上目になるような角度から描かれた瞳には、まるで生きているかのように、光が写し取られている。ユカタの襟は緩やかに合わせられ、隙間から見える肌は、思わず手を触れたくなるくらい滑らかそうだ。
「先日の発令で画家に戻ったのか……しかし…こんな色気がだだ漏れてるような絵…ここに飾っておいていいのかな?」
男は再びニヤリと笑うと、また歩き出した。
男は半月後、またこの場所で足を止め、その撫で肩を震わせて笑うことになる。
若い王子が襟の詰まったきらびやかな王族の衣装に身をつつみ、至極真面目な顔で凛々しくこちらを見ている絵に変わっているからだ。
「見せたくない……か」
男は何かを思い出したかのようにくっくっと笑いながら、王子の私室が並ぶ廊下の曲がり角の向こうへと消えていった。
「先日の発令で画家に戻ったのか……しかし…こんな色気がだだ漏れてるような絵…ここに飾っておいていいのかな?」
男は再びニヤリと笑うと、また歩き出した。
男は半月後、またこの場所で足を止め、その撫で肩を震わせて笑うことになる。
若い王子が襟の詰まったきらびやかな王族の衣装に身をつつみ、至極真面目な顔で凛々しくこちらを見ている絵に変わっているからだ。
「見せたくない……か」
男は何かを思い出したかのようにくっくっと笑いながら、王子の私室が並ぶ廊下の曲がり角の向こうへと消えていった。
-終-
終わりました~
長かったですね…
お付き合い頂き、ホントにありがとうございます!
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